【ほんのさわり】太田昌秀『決定版写真記録 沖縄線』

−太田昌秀『決定版写真記録 沖縄線』(2014/5、高文研)−
 https://www.koubunken.co.jp/book/b202015.html

【ポイント】
 沖縄戦では、動員された学徒を含む多くの子どもたちが命を落としました。その惨劇の記憶が、現在も子どもを「宝」として大切にする想いにつながっているような気がしてなりません。

去る2024年6月23日(火)は、79年目の「沖縄 慰霊の日」でした。
 太平洋戦争末期の沖縄戦では、子どもを含む住民を巻き込んだ激しい地上戦で20万人を超える人(県民の4人に1人)が命を落としたとされています。

この日、改めて手に取ったのがこの写真集でした。
 琉球大学名誉教授、沖縄県知事(2期)、参議院議員を務めた著者は、1945年3月、沖縄師範学校2年(19歳)の時に学徒から構成される「鉄血勤皇隊」に動員されます。沖縄戦最後の激戦地となった摩文仁沖の海中で意識を失いましたが、九死に一生を得て捕虜となり、生還します。
 このような苛烈な体験、多くの学友を失った無念さが、著者が生涯をかけて「戦争の悲惨さ、平和の尊さ」を訴え続ける原動力となったのです(2017年没)。

本書は、著者が述べ20年間をかけてアメリカの国立公文書館に通い続けて収集した写真を中心に構成されています。
 「戦場に出た学徒隊」と題する章では、12の男子中等学校と10の女学校の生徒たち(14歳から17歳)が、法的根拠もないまま戦闘に駆り出され、1100名以上が犠牲となったというデータも紹介されています。
 捕虜となって米兵の尋問を受ける学徒たちのあどけない表情、サンゴ礁の海岸を歩く女子学徒などの写真が、胸を打ちます。

沖縄戦では、学徒を含む多くの子ども達が命を落としました。その惨劇の記憶が、子どもを「宝」として大切にするという、現在の沖縄の人たちの心情と行動につながっているような気がしてなりません。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.295、2024年7月6日(土)[和暦 水無月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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