【オーシャン・カレント】食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案

【ポイント】
 「農政の憲法」とも呼ばれる食料・農業・農村基本法の改正案が、現在、国会において審議されています。

1999年、それまでの農業基本法に代わって食料・農業・農村基本法(以下、「基本法」と呼びます。)が制定されました。食料自給率の目標を含む食料・農業・農村基本計画を5年ごとに策定することを規定しているなど、「農政の憲法」と呼ばれることもあります。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】東京・東村山市の市民農園

【ポイント】
 私自身、東京・東村山市にある自宅近くの市民農園の一画を利用させて頂くことで、農作業の辛さと喜び、自然の恵みの有難さ等を実感しています。

利用させて頂いている市民農園の一画。左は2023年10月3日の様子、中央は初チャレンジ・菌ちゃん農法の畝(よ9/19)、右は福島・いわき由来のコットンの花(8/14)

私が住んでいる東村山市(東京・北多摩地方)には、市が開設した市民農園が3か所(合計で211区画、8,849平米)あります。1区画当たりの面積は約30平米、利用料は年間18,000円で2年毎に更新、抽選倍率は1.5〜2.3倍となっています。
 なお、このほかに農業者自らが開設している市民農園が3か所、園主の指導の下に利用者が農作業を行う農業体験農園が7か所あります。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】「能登はやさしや土までも」

【ポイント】
 やさしいはずの能登の大地が、今回は牙をむきました。被災地では、厳しい現実を前に被災者同士が助け合っている様子も報じられています。

国立国会図書館デジタルコレクションより。

「能登はやさしや土までも」という美しい言葉があります。
 能登では人だけではなく風土までも優しいという意味ですが、現実には深い雪に閉ざされるなどの厳しい自然環境の下で、互いに支えあいながら暮らしてきた能登の人びとの強さと温かさを表している言葉です。… 続きを読む

【オーシャン・カレント281】「神の見えざる手」

【ポイント】
 アダム・スミスは、このよく知られた言葉を一度も使ってはいません。

『国富論』とアダム・スミス像(英・エジンバラ市)

「豆知識」欄では、価格と量は市場メカニズムによって決定され、その均衡点において社会的余剰は最大となることを説明しました。
 しかし、実は生産者も消費者も、社会的余剰が最大になることを目指して行動している訳ではありません。企業も消費者も、自分自身の「利益」を最大にするという「利己心」に基づいて自由に行動するだけで、「見えざる手」によって社会全体の利益が最大になるのです。 … 続きを読む

【オーシャン・カレント280】仁井田本家「おだやか・雄町」

【ポイント】
 仁井田本家の「おだやか・雄町」は、南相馬市小高区の酒米を使うことで、福島と日本の田んぼを守っています。

左は仁井田本家HPより。右の写真は根本有機農園(2023.11/12)

福島・郡山市で300年以上続く酒蔵・仁井田本家(にいだほんけ)は、自らの使命を「日本の田んぼを守る酒蔵になる」としています。
 酒米の全量は自社田及び契約栽培農場で生産した自然栽培米で、水も100%が天然水とのこと。農業生産法人も設立し有機JASの認定も取得しています。蔵には直売所やギャラリーが併設されており、感謝祭や「田んぼのがっこう」など様々なイベントも開催しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント279】2023年産の米について

【ポイント】
 本年産の米は作況指数(量)は平年並みながら、一等比率(質)は大きく低下。地域による差も大。

先日、農林水産省が公表した10月25日現在の米の作況指数(平年の単収に対する比率)は、全国では101と「平年並み」となりました。しかしながら地域別にみると、北海道(104)、宮城(105)など「やや良」となっている都道府県がある一方、秋田(97)、新潟(95)、愛知(96)、鳥取(95)など7県は「やや不良」となっています。

一方、9月30日現在の米の検査結果によると、一等の比率は、昨年産は75.8%であったのが本年産は59.6%と16ポイント以上の大きな低下を示しています。これは地域別の差がさらに大きく、特に新潟県では13.5%と、昨年産の74.4%から61ポイント低下しています(秋田県、山形県、神奈川県でも30ポイント以上の低下)。これは、梅雨明け以降、記録的な高温で推移するとともに降水量が乏しかったことから、大量の白未熟粒等が発生したためです。
 白未熟粒とは、米粒にでんぷんが十分に詰まらず隙間ができたため、光を乱反射して白く見えるもので、水加減を少なめにして炊くなど工夫すれば味は変わらないものの、農家の収入は大きく減少することとなります。… 続きを読む

【オーシャンカレント278】JEI エシカル基準

JEIホームページより(一部)

これは、先日のご講演(霞が関ばたけ)のなかで、山本謙治さん(農畜産物流通コンサルタント)が紹介されていたものです。
 「エシカル」(倫理、良心)をキーワードに地球の環境と社会との調和を目指して、2017年に設立された日本エシカル推進協議会(JIE)は、2年間の各分野の専門家による検討やパブリックコメントを経て、2021年、日本初のエシカル基準を策定し公表しました。
 この基準は、商品やサービス、あるいはブランドや企業のエシカル度を客観的に示すためのモノサシで、8つの分野(大項目)についてそれぞれ4〜7つの課題(中項目)が設けられており、全体で43の項目から構成されています。

8つの大項目(かっこ内は中項目の数)は、自然環境の保護(7)、人権の尊重(5)、消費者の尊重(4)、動物の福祉・権利の保護(6)、情報開示(5)、地域社会への配慮・貢献(5)、適正な経営(7)、サプライヤーやステークホルダーと積極的な協働(4)となっています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント277】食品ロス削減月間

(消費者庁HPより)

1989年10月1日施行された食品ロス削減推進法において、毎年10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」と定められています。これを受けて、消費者庁、農林水産省、環境省は連携して、食品ロスの削減に向けた集中的な普及・啓発に取り組んでいます。

具体的には、アンバサダーを起用した啓発ポスターの作成と配布、食品ロス削減全国大会の開催(10月30日(月)、金沢市)、コンビニエンスストアでの「てまえどり」の呼びかけ、食品ロス削減推進表彰受賞者の表彰、商慣習の見直しやフードバンク等への食品提供に取り組む食品事業者や、消費者啓発に取り組む事業者・地方自治体の募集等に取り組んでいます。
 また、「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテストの募集も行われています。ちなみに昨年の受賞作は「日本から世界に広がれ『もったいない』」。(私も応募しました!)

このように行政は様々な普及・啓発に取り組んでいますが、実際に食品ロスが削減できるかどうかは、一人ひとりの意識と行動にかかっていることは言うまでもありません。… 続きを読む

【オーシャン・カレント275】車座座談会

2023.9/14(木), 東京・京橋にて

車座座談会とは、全国の一次産業の現場を歩かれている高橋博之さん((株)雨風太陽)を囲み、参加者が車座(つまり全員が主役)になって、現代社会の様々な課題やビジョンについて語り合う会です。組織的に開催されているものではなく、高橋さんの理念に賛同するボランティアの方たちによる自主的な取組みで、これまで全国で1300回近く開催されています。
 『食べる通信』や『ポケマル』で、食の分野で生産者と消費者をつなぐ活動に尽力されてきた高橋さんの話は、消費者にとって、遠くなってしまった一次産業の現場をいかに身近に感じることができるかが柱の一つとなっています。

先日(9月7日(木))には、東京・京橋で、約20名の参加者が集い、第1280回目の車座座談会が開催されました。… 続きを読む

【オーシャン・カレント274】家庭備蓄ポータル(農水省HP)

各地で大規模な災害が頻発するなか、食品の家庭備蓄の一層の普及を図ることを目的として様々な情報を集約したポータルサイトです。
 掲載されている「災害時に備えた食品ストックガイド」には、最低3日〜1週間分の備蓄が望ましいとしており、例えば1週間分・大人2人の場合、米は2kg×2袋、カップめん類6個、缶詰18缶等のほか、たまねぎ・じゃがいも等の日持ちする野菜類、煮干し・のり・乾燥わかめ等が例示されています。
 また、要配慮者(乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方)向け、単身者向けのガイドも公開されています。

本ガイドでは、ローリングストック(好みの食品を普段から多めに買い置きし、賞味期限の近いものから順次消費すること)等により、日常の一部として無理なく楽しみながら備蓄していくことの重要性が強調されていますが、1週間分の備蓄食料を日頃から備えることは簡単ではないことが分かります。
 しかし、東京圏への人口等の一極集中が進むなかで首都直下地震が想定される現在、少なくとも東京圏の居住者にとっては、家庭での食料備蓄は欠かせないものと思われます。… 続きを読む

【オーシャン・カレント273】スプーン(平和祈念展示資料館)

去る8月13日(日)、東京・新宿にある平和祈念展示資料館を初めて訪ねてみました。
 企画展「43人が描く空想未来漫画『2100年8月15日』」と、漫画を描くワークショップが開催中(10月1日まで)で、小さな子どもを連れた家族連れ等が多数来場していました。
 シベリアの収容所で乏しい黒パンを切り分けている場面を描いたジオラマは、抑留者たち全員の目がその手元を見つめています。来場者の男の子も、真剣な表情で眺めていました。

特に印象に残ったのが、数多くのスプーンなど食器の展示でした。
 抑留者たちは、いつの日か故郷に帰り、腹いっぱい食べることを信じて食器を手作りすることで、明日への生きる望みをつないでいたそうです。… 続きを読む