【ほんのさわり259】後藤静彦『ヒヨコに賭ける熱き思い』

−後藤静彦『ヒヨコに賭ける熱き思い』(1996年1月、日本教文社)−
 https://www.kyobunsha.co.jp/product/9784531062799/book.html

著者は1930年岐阜市生。(株)後藤孵卵場社長、日本養鶏農業協同組合連合会(日鶏連)会長等を務められたのち、1999年に没。
 本書は、著者の父親である後藤靜一(しずいち)氏を主人公とする、日本における養鶏業の黎明期からの「半世紀にわたるドラマ」です。

静一氏は1902年、岐阜県の山間部にある旧根尾村(現本巣市)の裕福とは言えない家に生まれ、高等小学校を中退して大阪の薬問屋に奉公に出ました。その時に肺結核を病みましたが、鶏卵の食事療法で快復した経験から、郷里に戻って養鶏を始めることを決意します。… 続きを読む

【豆知識259】「物価の優等生」と規模拡大

飼料価格の高騰等を背景に、「物価の優等生」とされる鶏卵の価格が上昇しています。リンク先の折れ線グラフは、消費者物価指数(1970年=100)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/259_keiran.pdf

消費者物価指数(総合)は長期的に上昇基調で推移しましたが、2000年代に入ってからはほぼ横ばいとなっています(1970年比3.2倍)。食料全体もほぼ同様の動きとなっていますが、近年は総合を上回って推移しています(同3.5倍)。
 一方、鶏卵価格は長期的にほとんど上昇しておらず、まさに「物価の優等生」であったことが見て取れます。

棒グラフは、農家(経営体)1戸当たりの飼養羽数の推移を示したものです。1970年においては70羽程度(300羽未満の生産者を含む。)だったのが、2021年には約7万5千羽(1000羽以上の生産者のみ)と、実に1000倍以上の規模拡大が実現しています。… 続きを読む

【ブログ】311子ども甲状腺がん裁判 第4回口頭弁論

2023年1月もあっという間に後半へ。
 自宅近くに一画を借りている市民農園。見た目は寂しい冬も、瑞々しい恵みをもたらしてくれています。
 ここ10年間で最悪とされた24~25日にかけての大寒波襲来の折には、寒冷紗をかけてみました。

1月17日(火)の夕方は勉強会「今夜はご機嫌@銀座で農業続きを読む

【ご案内】ヨコハマライブラリースクールで話題提供させて頂きます(3月4日)。

2023年3月4日(土)14時から、横浜市中央図書館・ヨコハマライブラリースクールで、「いま、フード・マイレージから考える私たちの食のこと」と題して話題提供させて頂きます。
 パンデミックやウクライナ危機により世界的に食料危機が叫ばれているなか、例えば地産地消など、私たちに何ができるかについて、皆さんとともに考えてみたいと思います。

日時:令和5(2023)年3月4日(土曜日)… 続きを読む

【ほんのさわり258】菅野芳秀『七転八倒百姓記』

−菅野芳秀『七転八倒百姓記』(2021年10月、現代書館)−
 https://gendaishokanshop.stores.jp/items/616423afc120961806736463

著者は1949年、山形・長井市生まれの、身長191cm、体重100kgという偉丈夫です。
 三里塚、沖縄という「国家への謀反の現場を転戦」(大野和興氏の解説)したのち、26歳の時に帰郷して「逃げたいと思っていた」家業の農業を継ぎました。

就農早々に直面したのが米の生産調整の問題。… 続きを読む

【豆知識258】国民経済における農林水産業の地位

経済発展に伴い、国民経済における第一次産業(農林水産業)のシェアが低下し、第二次産業(製造業)、さらには第三次産業(サービス業)のシェアが上昇することは、世界的・歴史的にも明らかな現象です(「ペティ・クラークの法則」)。
 リンク先の青い折れ線グラフは、日本の国内総生産(GDP)に占める農林水産業の割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/258_GDP2.pdf

これによると、1970年代前半において5〜6%のシェアを有していた農林水産業は、経済発展(サービス化の進行等)に伴って大きく低下し、90年代前半には2%を割り込み、近年はほぼ1%の水準で横ばいとなっています。
 このことをもって、かつては1.5%の一次産業のために日本経済全体を犠牲としてはならないと発言した外務大臣(当時)さえいました。… 続きを読む