【豆知識258】国民経済における農林水産業の地位

経済発展に伴い、国民経済における第一次産業(農林水産業)のシェアが低下し、第二次産業(製造業)、さらには第三次産業(サービス業)のシェアが上昇することは、世界的・歴史的にも明らかな現象です(「ペティ・クラークの法則」)。
 リンク先の青い折れ線グラフは、日本の国内総生産(GDP)に占める農林水産業の割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/258_GDP2.pdf

これによると、1970年代前半において5〜6%のシェアを有していた農林水産業は、経済発展(サービス化の進行等)に伴って大きく低下し、90年代前半には2%を割り込み、近年はほぼ1%の水準で横ばいとなっています。
 このことをもって、かつては1.5%の一次産業のために日本経済全体を犠牲としてはならないと発言した外務大臣(当時)さえいました。

右端の棒グラフは、2020年のGDPに占める農林水産業のシェアについて、他の先進国と比較したものです。
 これによると、比較的高いフランス(1.6%)、豪州(2.3%)、韓国(1.8%)でも1〜2%の水準であり、アメリカ(0.8%)、イギリス(0.6%)、ドイツ(0.7%)では日本より低くなっています。
 しかし、これらの国においてGDPに占めるシェアが低いことを理由に農林水産業を軽視する議論は聞いたことはありません。農林水産業は、貨幣価値では評価できない多面的な役割(国土、環境、地域社会の保全など)を担っていることが、国民全体の共通認識となっているものと思われます。果たして日本ではどうでしょうか。

 なお、余談ながら(日本に限った話ではありませんが)、防衛予算の対GDP比2%という数字は相当の額であることを実感せざるを得ません。

[データの出典]
 内閣府「国民経済計算」 
 https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/files_kakuhou.html
 農林水産省「令和4年度農林水産業ひと口メモ(p.2)」から作成。
 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/hitokuchi_memo/index.html

出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.258、2023年1月6日(金)[和暦 師走十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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