【オーシャン・カレント No.224】IPCC(第I作業部会)第6次評価報告書

環境省「政策決定者向け要約(SPM)の概要」より(http://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

去る8月9日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書のうち第1作業部会の報告(自然科学的根拠)が公表されました。
 8年ぶりとなった今回の報告書の内容は、これまでの方向性と大きく変わらないものの、その方向性がより確実なものとなったと分析しています。… 続きを読む

【ブログ】正義の食、真っ当な食

代替肉、昆虫食、ヴィーガンなどが流行りですが、「畜産は地球環境を破壊しているから肉食は正しくない」といった主張には大いに違和感があります。

 一口に畜産(物)といっても生産や流通のスタイルによって環境負荷の大きさも様々で、一律に「肉を食べない」のではなく、環境負荷の低い肉(放牧や自給飼料など)を選ぶことが大事だと思っています。
 そもそも「食べる」という極めて人間的な個人的な営みについて特定の正義感、価値観を押し付けようとすること自体、多様性を軽視するという意味からも正しくないと私は思うのですが、いかがでしょうか。

オンラインのイベントが連続。… 続きを読む

【豆知識】2021年8月の豪雨について

今回の豪雨については、追って専門家により総合的な評価と要因分析等が行われると思いますが、ここでは8月20日までに気象庁が公表しているデータにより、その特徴を探ってみました。

リンク先の図224は、今回、特に被害が大きかった佐賀市及び広島市について、2000年代に入って以降の年間降水量(計)と1日当たりの最大降水量の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/08/224_gouu.pdf

これによると、両地点とも、降水量が傾向的に増加しているという状況は必ずしも明らかではありません。
 しかし、2021年に入ってからの降水量については、8月(20日まで)の降水量が佐賀市では55%、広島市では36%を占めており、雨が20日間に集中して降ったことが分かります。… 続きを読む

【ブログ】小田 実さんと原爆、市民運動

2021年も8月15日がめぐってきました。鎮魂と慰霊、そして平和を祈念する日です。
 それにしてもここ数日の「記録的な」豪雨続きは、先日の第6次IPCC報告書にもある気候変動が、まさに身近なものとなりつつあることを実感します。

全国的なコロナ感染拡大に伴って職場の勤務体制もシフト変更があり、先週11日(水)がテレワークとなり12日(木)は出勤。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.223】700万トンを割り込む米生産量

図の出典:農林水産省「米をめぐる関係資料」(2020.7) p.5
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-480.pdf

農林水産省によると、本年の全国の主食用米の作付面積は、前年に比べて約6.2〜6.5万haの減少が見込まれているとのこと。
 これは前年の作付面積の5%程度に当たり、仮に今年の米生産が平年並みの作柄となれば、主食用米の生産量は700万トンを下回るものと見通されています。… 続きを読む

【豆知識】人口、農業生産における東京都のシェア

この国の最大の問題は、バランスを欠いていること−すなわち、東京一極集中ではないでしょうか。
 わずか0.6%の面積しかない東京都に、人口の11%、経済活動(GDP)の20%が集中しており、遠隔地から輸送されてきた大量の食料、工業製品、エネルギー等が消費されています。

 リンク先の図223は、人口と農業生産について、全国に占める東京都のシェアの推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/08/223_Tokyo.pdf

全人口に占める東京都のシェアは、1970年代から90年代にかけて10%を下回るまで緩やかに低下しました。経済が高度成長を続ける中で、人口の地方分散が進みかけていたのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.222】故・杉本苑子さんの1964東京五輪開会式

作家の故・杉本苑子さんは、1964年の東京五輪開会式に参加して次のような文を残しておられます(抄録)。

「二十年前のやはり十月、同じ競技場に私はいた。女子学生のひとりであった。出征してゆく学徒兵たちを秋雨のグラウンドに立って見送ったのである。
 私たちは泣きながら、征く人々の行進に添って走った。髪もからだもぬれていたが、寒さは感じなかった。おさない、純な感動に燃えきっていたのである」

「オリンピックの開会式の興奮に埋まりながら、出陣学徒壮行会の日の記憶が、いやおうなくよみがえってくるのを、私は押えることができなかった。
 同じ若人の祭典、同じ君が代、同じ日の丸でいながら、何という意味の違いであろうか。」… 続きを読む

【ほんのさわり No.222】上間陽子『海をあげる』

−上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2020.10)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815583/

著者は1972年沖縄生まれ。米海兵隊・普天間基地の近くに住みながら、幼い頃から性虐待を受けたり、若年出産をした女性等の調査を続けておられる琉球大学教授です。
 その著者が「目の前の日々」を書き記したエッセイ集は、なかなかに重たい内容を含んでいます。

前夫との離婚話が進む失意の中、友人が持たせてくれた粕汁を泣きながら食べたこと(「美味しいごはん」)。小学生の頃から父親から性暴力を受け、今は風俗で働く17歳の母親とのこと(「何も書かない」)、子どもの頃は大嫌いだった祖母との別れ(「空を駆ける」)など。… 続きを読む