【ポイント】
沖縄の出生率が高い要因には様々なものがあるとされていますが、太平洋戦争で子どもも含めて多くの犠牲者を出したという歴史的事実も背景にあるのではないでしょうか。
2023年の全国の合計特殊出生率が1.20と過去最低を更新する中、沖縄県は1.60と都道府県の中で最も高い数値となっています(ちなみに最低は東京都の0.99)。
沖縄県の高い出生率については、様々な要因があるとされています。
まず、沖縄には多くの子どもを持つことが望ましいとする価値観が根付いていることです。地域に地縁・血縁的な共同社会が残っていることが、子育てしやすい環境につながっているとの指摘もあります。また、男子が家を継承するという家族観が強く、男子が生まれるまで産児を制限しないという事情もあるそうです。
さらには、若年で妊娠・出産する女性が多く、また、結婚前に子どもを授かることへの社会の寛容さがあるとも言われています。しかしこのことは、一方で子ども(母子)の貧困問題を深刻化させ、若年出産した母親がDVの犠牲となっている等の問題を引き起こしていることは、例えば教育学者・作家の上間陽子さんの『海をあげる』等でも描かれている通りです。
なお、今後、価値観や社会経済状況が変化することにより、沖縄の出生率が他の都道府県の水準に近づいていく可能性があるとの見方もあります。
もう一つ、沖縄の高い出生率の背景には、太平洋戦争で子どもも含めて多くの犠牲者を出したという歴史的事実があるのではないでしょうか。この惨劇の体験が、命を授かることへの畏敬の念を育んでいるのではないかと思われるのです。
[参考]
厚生労働省「令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf
山内昌和ほか「沖縄県の合計出生率はなぜ本土よりも高いのか」(2020)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj/93/2/93_930202/_pdf/-char/ja
上間陽子さん『海をあげる』(ほんのさわり)
https://food-mileage.jp/2021/08/01/hon-222/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.295、2024年7月6日(土)[和暦 水無月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
(↑ 配信登録(無料)はこちらから)
(↓ 「オーシャン・カレント」のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/pr/
(↓ メルマガ全体のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/mm/