「点と線」から

先週の6月19日(土)は、北九州市主催「食育月間講演会-私たちの食について考えよう-」に呼んで頂き参加して来ました。前半は私から「食と農の現状と課題」について説明し(「関係資料」5に掲載)、フード・マイレージに関しては、市のU係長から、自ら食材を調達し作った献立に即し、二酸化炭素排出量等を計算されたものを発表して頂きました。参加者の皆様にもフード・マイレージを身近に感じて頂けたと思います。ありがとうございました。[イメージキャラクター:食育スマッキー]

後半は、北九州市食育推進ネットワークに登録されている方々からの報告会でした。保育士会、歯科医師会(小倉、若松)、食生活改善推進員協議会、消費者団体連絡会の皆様から、日頃の活動内容について豊富な写真等を使って発表がなされ、会場と意見交換が行われました。特色ある様々な取組の報告を拝聴していて、この地における食育が着実に広がりつつあることを実感しました。 … 続きを読む

食の砂漠

今日は、農林水産政策研究所で開催された「フードデザート」に関するセミナーを聴講してきました。近年、郊外型の大規模ショッピングモール等が各地にでき、昔ながらの中心商店街の空洞化が進んだ結果、車を持てない(運転できない)高齢者や所得の低い人々が近所で食品を買えないような地域が増えています。このような地域が「フードデザート(食の砂漠)」で、日本ではまだ耳新しい言葉ですが、イギリスではかねてより政府主導の下で研究や対策が進められているとのことです。セミナーでは、茨城キリスト教大学の岩間信之先生から、イギリスの事例とともに日本国内でのご自身の研究成果について興味深いご報告がありました。水戸市の事例では、商店の郊外化に伴いフードデザートが広がっていることが地図上で如実に表されていました。これら研究成果等は先生のホームページで詳しく紹介されています。

http://www.hpmix.com/home/inob1012/T1.htm

フードデザート研究は、社会的弱者の健康面や地域コミュニティの活性化など社会学的な視点が中心のようですが、考えてみると、今まで徒歩や自転車で買い物に行っていたのが郊外に自家用車で行くようになると、環境負荷も相当大きくなるのではないでしょうか。コンパクトシティづくりとも関連して、今後、環境負荷の低減という視点から勉強していきたいテーマです。… 続きを読む

中村医師の情熱

大田区蒲田で中村哲さんの講演を聞いてきました。

ペシャワール会現地代表の中村医師といえば、アフガニスタンにおいて本業の医療のみならず、井戸掘りや用水路建設等に文字通り身命を賭している方として、多くのマスコミにも取り上げられています。単身、戦火の地で復興事業の先頭に立たれるとは、どんなにバイタリティ溢れる方かと思っていると、ステージに出てこられた中村医師は、小柄で、話し方も訥々としておられることに少々驚きました。アフガンの風景を映写しつつ始まった講演は、そのあまりにも偉大な功績に似合わず、もちろんそれを誇るようなそぶりは一切見せられず、また、部下の日本人ワーカーを亡くすという惨劇を経験されたにも関わらず、淡々と進み、感情的に大きく盛り上がるということもなく、終了しました。

講演後の質疑応答で、会場の若い男性から「先生の活動の原動力は何ですか」と聞かれた中村医師、「古い言葉だけど、ここで引いたら男がすたる、と思った。現実に困っている人がいて、自分にできることがあるにも関わらず、それをしないのでは気持ちが悪かった」と、誠実な人柄そのままに答えられていたのが印象的でした。そうなのです。声高に叫ぶことが世の中を変えるわけではないのです。他にも多くの有名ではない(マスコミ等では取り上げられない)方たちが、世界中で、日本の中でも、献身的に活動されているのです。

澤地久枝さん(当日も講演前に挨拶されました。)が聞き手になった「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」(2010.2、岩波書店)は、中村医師の秘めた熱い思いを澤地さんの筆が迫力をもって引き出しており、さらに、それを引き出そうと生い立ちから体重まで聞き洩らさない澤地さんの気迫も感じられる、素晴らしい一冊です。… 続きを読む

観客

映画「ミツバチの羽音と地球の回転」を観ました。山口県祝島の人たちの「反原発」の闘いと先進国・スウェーデンの様子がコントラスト鮮やかに描かれているドキュメンタリーです。

特に印象的だったのは、埋立てを阻止しようとデモを繰り広げる島民たちに、電力会社の社員が船の上から拡声器で「対話」を試みるシーン。「一次産業だけで食べていけるはずがない」。これに対し、ひじきやビワ、食品残さで放し飼いの養豚等で食べているオバチャンやオジチャン、Uターンの若いお父さん・孝君たちは体を張って抵抗します。別の場面では、上京して経済産業省の若い課長補佐を吊るし上げにもします。これらの殺伐としたシーンと対照的に描かれる、島の自然の恵みの豊かさと、その中で漁業や農業に携わる人たちの姿の美しさ、たくましさが、心に沁み入ります。上映後の鎌仲ひとみ監督の舞台挨拶には、観客から大きな拍手が送られました。面白く、ぜひ多くの方に観てもらいたい映画です。

でも正直、観ている間、ある種の違和感というか、居心地の悪さがずっと消えませんでした。つまり、孝君やオバチャンたちの命をかけたドキュメンタリー・ドラマを、私は観客として、エアコンの効いた新宿のホールで観ているのです。都会に住む私たちが便利で快適な生活を求め続ける限り、原発は「必要悪」として存続していかざるを得ない面があるのではないでしょうか。ひとつの地方でのドラマは、実は日本人全体の現在のライフスタイルを反映したものなのです。

ホールを出ると22時近く、祝島のオバチャン達の多くは眠りについているであろうこの時刻、煌々とした光に彩られた不夜城・新宿の街に、ぽつりぽつりと雨が降り始めました。… 続きを読む