【ほんのさわり】井上ひさし『コメの話』

-井上ひさし『コメの話』(1992.2、新潮文庫)-
https://www.shinchosha.co.jp/book/865202/

【ポイント】
 30年以上前の論調がまったく古びていないことに驚きます。むしろ状況はさらに深刻化しているのかも知れません。

著者は1934年山形・川西町生まれの劇作家(2010年没)。1987年に故郷に蔵書を寄贈して「遅筆堂文庫」(図書館)を開設し、翌年、「自らの暮らしを生活者の視点で見つめ直す」ことを目的として、自ら校長となって「生活者大学校」をスタートさせました。… 続きを読む

【ほんのさわり】柏木智帆『知れば知るほどおもしろい お米のはなし』

-柏木智帆『知れば知るほどおもしろい お米のはなし』(2025年6月、知的生きかた文庫)-
 https://www.mikasashobo.co.jp/c/books/?id=100892300

【ポイント】
 「お米ライター」の著者による、お米への愛がてんこ盛の力作。稲作の現場を知る著者ならではの貴重な情報も。… 続きを読む

【ほんのさわり】中野幸次『清貧の思想』

-中野幸次『清貧の思想』(1996年11月、文春文庫)-
 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167523039

【ポイント】
 著者は、「消費者」とは「人間侮蔑的な言葉」であるとし、「何が必要であって何が必要でないかを検討し社会の仕組み全体を変えねばならぬ時に来ている」としています。

著者は1925年千葉県生まれの作家、ドイツ文学評論家。バブルが崩壊しつつある1992年に最初に世に問われた本書はベストセラーになり、「清貧」という言葉は流行語にもなりました。… 続きを読む

【ほんのさわり】青山文平『下垣内教授の江戸』

-青山文平『下垣内教授の江戸』(2024.12、講談社)-
 https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000403193

【ポイント】
 幕末から明治にかけての動乱期に、豪農の当主から日本美術の大家に転じた元教授。日本が急速に近代化・資本主義化するなかでの世直し一揆の状況も描かれています。

明治初期、創立されたばかりの東京美術学校で教授を務めた「当代きっての日本美術の目利き」下垣内邦雄は、78歳の時、取材に訪れた新聞記者に「俺は人を斬ろうとしたことがあるんだよ」と告白するところから物語は始まります。… 続きを読む

【ほんのさわり】井出留美『私たちは何を捨てているのか』

-井出留美『私たちは何を捨てているのか-食品ロス、コロナ、気候変動』(2025年3月、ちくま新書)-
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076779/

【ポイント】
 著者は食べものを捨てることは自分のたましいを捨てることであり、目の前の食べものとどう向き合うかは自分自身の生き方そのものあるとしています。

著者は外資系食品工業の広報やフードバンク活動に携わった食品ロス問題ジャーナリスト。… 続きを読む

【ほんのさわり】古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?』

-古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?-知っておくべき地球史とヒトの大転換点』(2024.3、WAVE出版)-
 https://www.wave-publishers.co.jp/books/9784866214306/

【ポイント】
 著者は、人間自らが引き起こした自滅の危機を免れるためには、世界全体の地球市民的な連帯と、グローバル資本主義の変革が不可欠としています。

著者は1950年東京生まれの國學院大學客員教授、農学博士。… 続きを読む

【ほんのさわり】赤坂憲雄『東北学/忘れられた東北』

-赤坂憲雄『東北学/忘れられた東北』(2023年6月、岩波現代文庫)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b626374.html

【ポイント】
 著者は濃密な東北の「野辺歩き」を通じて、「単一の瑞穂の国」ではない「いくつもの日本」を発見しました。

著者は1953年東京生まれの民俗学者で、東日本大震災と東電福島第一原発の事故が起こった当時は福島県立博物館長を務められていました。… 続きを読む

【ほんのさわり】田中優子『一揆を通して社会運動を考える』

-田中優子『一揆を通して社会運動を考える』(田中編『そろそろ「社会運動」の話をしよう』(2019年4月、明石書店)所収)
 https://www.akashi.co.jp/book/b450429.html

【ポイント】
 江戸時代の百姓一揆と現代の社会運動とは様々な面で異なるものの、多様な人々がこの社会に生きるために何が必要かについて学ぶところは多いとしています。

著者は1952年横浜市生まれの法政大学名誉教授(江戸文学、江戸文化論)。… 続きを読む

【ほんのさわり】菅野芳秀『生きるための農業 地域をつくるための農業』

-菅野芳秀『生きるための農業 地域をつくるための農業』(2024年11月、大正大学出版会)
 https://www.tais.ac.jp/guide/research/publishing/chiikijin_list/002/

【ポイント】
 「令和の百姓一揆」実行委員会代表による、悪戦苦闘する農業の現場からの「ホンネ」の報告であり、消費者・生活者に連携を呼び掛けています。… 続きを読む

【ほんのさわり308】吉田太郎『シン・オーガニック』

-吉田太郎『シン・オーガニック-土壌・微生物・タネのつながりを取り戻す』(2024年7月、農山漁村文化協会)
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231674/

【ポイント】
 著者はいわゆる「スマート農業」的な有機農法ではなく、「自然への畏敬」を基底とする「ローカル、風土立脚型」の有機こそが重要と主張しています。

著者は1961年東京都生まれ。筑波大学大学院で地質学を専攻した後、埼玉県、東京都、長野県に農業関係の行政職員として勤務。この間、業務とは別に自ら有機農家で研修を受けたり、キューバの事例を調査・紹介したりするなど、有機農業の啓発普及に熱心に取り組んで来られた方です。定年退職後は晴耕雨読の生活を送りつつ、「フリーランサーとして好き勝手なことを言える人間にしか書けない」ものとして発表されたのが、この力作です。… 続きを読む

【ほんのさわり】2024年の振り返り

年初の号[No.283]では写真集『いつもののと』を紹介。
 原発関連では、青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』[No.288]、吉田千亜『孤塁』[No.304]、小原浩靖監督の映画『原発をとめた裁判長』[No.305]を、戦争関連では寮 美千子(文)『ぼくが子どものころ戦争があった』[No.297]、太田昌秀『決定版・写真記録 沖縄線』[No.295]を紹介しました。

 農業・農政全般については、小倉武一『誰がための食料生産か』[No.300]、蔦谷栄一『生産消費者が農をひらく』[No.287]、末松広行『日本の食料安全保障』[No.298]、 … 続きを読む

【ほんのさわり】吉田恵美子『想いはこうして紡がれる』

-吉田恵美子『想いはこうして紡がれる-「古着を燃やさないまち」を実現した33年の市民活動を通して伝えたいこと』(2024年12月、英治出版)-
 https://eijipress.co.jp/products/2360

【ポイント】
 一人の人間としてもがき苦しみながら、市民運動に取り組み、実績を積み上げられてきた著者からの、後進たちへのメッセージです。

12月14日(土)に発売されたばかりの本書は、吉田さんご自身が執筆された最初のまとまった本であり、同時に、残念ながら最後の本となってしまいました。年内に計画されていた出版記念祝賀会への参加も楽しみにしていたのですが、これも叶わなくなりました。… 続きを読む

【ほんのさわり】吉田千亜『孤塁』

-吉田千亜『孤塁-双葉郡消防士たちの3・11』(2023年1月、岩波現代文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b618320.html

【ポイント】
 原発事故のために他県消防の応援も得られないなか、生まれ育った地域を守り続けた福島県双葉消防本部の125名の消防士の活躍と葛藤の様子が描かれています。

著者は1977年生まれのフリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材とサポートを続けられている方。本書は2020年に本田靖春ノンフィクション賞を受賞、2023年には文庫化されています… 続きを読む