【ほんのさわり】長野路代、佐藤 弘『ながのばあちゃんの食育指南』

−長野路代、佐藤 弘『ながのばあちゃんの食育指南』(2015年8月、西日本新聞社)−
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/199107/

長野路代さんは1930年、福岡・飯塚市の農家に生まれました。
 終戦後まもなく母親が急逝し、一家の料理作りを十代で担うことに。ところが当時は農家であっても供出等により一握りの米もなく、一日の重労働(農業)を終えて帰ってきた父親が、ドロドロに炊いたサツマイモ等を黙って食べる姿が、涙で見えなかったとのこと。… 続きを読む

【ほんのさわり】山本謙治『エシカルフード』

−山本謙治『エシカルフード』(2022年3月、角川新書)−
 https://www.kadokawa.co.jp/product/321805000137/

著者は1971年愛媛県生まれ埼玉県育ち。「やまけん」さんの愛称で、全国の「おいしいもの」情報を広く発信されています(ブログは私も長年愛読しています)。

 著者は、日本では食の分野を含めてエシカル(倫理的)消費が拡がらないことを残念に思っています。
 例えばトレーサビリティや有機農業についても、日本では利己的な目的(個人の安全や健康)のためのものとして捉えられているのに対して、ヨーロッパでは利他的で普遍的な価値(環境や人権など)を守るために取り組まれているのです。… 続きを読む

【ほんのさわり】黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』

黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(2002年8月、中公新書)
 https://www.chuko.co.jp/shinsho/2002/08/101655.html

外務省で駐ウクライナ大使等を歴任した著者が2002年に発表した本書が、ロシアのウクライナ侵攻を受けて改めて注目されて版を重ねています(手元にあるのは14版(2022年4月))。

10世紀のキエフ・ルーシ公国以来の歴史がありながら、ロシア・ソ連、ドイツ、ポーランドなど周辺の強国の圧迫と思惑により、ウクライナは1991年まで実質的な独立はできませんでした。ウクライナの歴史は「国のない」民族の歴史だったのです。… 続きを読む

【ほんのさわり】中村光博『「駅の子」の闘い』

−中村光博『「駅の子」の闘い−戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史』(2020年1月、幻冬舎新書)−
 https://www.gentosha.co.jp/book/b12871.html

終戦直後の日本の都市は、戦地や空襲で父母を失うなどして行き場をなくした孤児たちで溢れていました。
 全国の戦争孤児の数は、終戦から2年半後に行った厚生省の調査でも全国で12万3千人にのぼったそうです(終戦直後はさらに多かったと思われます)。
 雨風をしのぐために焼け残った駅舎で寝起きする子どもたちは、「駅の子」とも呼ばれました。… 続きを読む

【ほんのさわり】塩見直紀ほか『半農半X』

−塩見直紀、藤山 浩、宇根 豊、榊田みどり編『半農半X−これまで・これから』(2021年11月、創森社)−
 http://soshinsha.sakura.ne.jp/bookdetail.php?id=420

「半農半X」(はんのう・はんエックス)とは、農ある小さな暮らしをベースに、その人ごとの天与の才(天職、生きがい)を世に活かすという生き方。言い換えれば、農業を営みながら、自分の好きなやりがいのある仕事に携わるというライフスタイルのことです。… 続きを読む

【ほんのさわり】下川 哲『食べる経済学』

−下川 哲『食べる経済学』(2021年12月、大和書房)−
 https://www.daiwashobo.co.jp/book/b590669.html

著者は北海道大学農学部農業経済学科卒業、アメリカ・コーネル大学で博士号を取得され、現職は早稲田大学政治経済学術院准教授。
 ごく日常的な私たちの「食べる」という行為は、実は地球全体の資源や環境に予想を超えるほどの大きな影響を及ぼしています。そのことに気づくことで、「健康的で持続的な食生活」への変革を促そうというのが、本書のテーマです。… 続きを読む

【ほんのさわり】火野葦平『麦と兵隊』

−火野葦平『麦と兵隊』(1960/8、角川文庫)−
 https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000418/

1938年5月、芥川賞を受賞したばかりの火野葦平は、日本陸軍支那派遣軍の報道部員として徐州作戦に従軍します(大量の宣伝ビラを撒くのも任務の一つでした)。
 一時は火野自身も行方不明になったと報じられるほどの激戦の中、手帳に記した記録をもとに書かれたのが本書です。同年8月、「銃後」の日本で発表されるとたちまちベストセラーとなり、関連して作成された歌謡曲や映画も大ヒットしました。

本書で印象的に描かれているのが、一面に続く麦畑の光景です。… 続きを読む

【ほんのさわり】萬田正治、山下惣一監修『新しい小農』

−萬田正治、山下惣一監修 小農学会編著『新しい小農〜その歩み・営み・強み』(2019/11、創森社)−
 http://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=404

萬田正治先生(鹿児島大学名誉教授)、山下惣一さん(農民作家、佐賀)達の呼びかけにより、2015年7月、福岡市で開催された小農学会設立総会には、全国から農家、研究者、ジャーナリストなど90人ほどが参加しました。
 農的暮らし、田舎暮らし、菜園家族、定年帰農、市民農園、半農半Xなどに取り組む都市生活者も含む「小農」学会では、学会誌の発行、定期セミナーの開催(オーシャン・カレント欄参照)など様々な活動を行っています。… 続きを読む

【ほんのさわり】西川芳昭『種子から食卓を繋ぐ』

−西川芳昭『種子から食卓を繋ぐ−環世界をめぐって』(2021/02、東信堂)−
 https://www.toshindo-pub.com/book/91638/

1960年、奈良県の採種農家に生まれた著者は、大学で作物遺伝学を専攻し、現在は龍谷大学において、重要な遺伝資源である種子の持続可能な保全と利用方法等について社会経済的な観点から研究されています。

近年、SNS等において不安を煽るような誤った断片的な情報が氾濫しています(在来種の自己増殖が禁止される、多国籍企業による遺伝子組み換え種子に席巻される、かびないパン、食べてはいない・・・等々)。そして、これらに騙され信じる人が増えていることを著者は強く憂慮しているとのこと。
 例えば、主要農作物種子法の廃止や種苗法改正に反対する主張には、科学リテラシーや法律知識が不足しているものが多く、なかには明らかに非科学的なデマ(問えばF1が少子化につながる等)もあると著者は指摘します。… 続きを読む

【ほんのさわり】アキノ隊員『ぼくたち、ここにいるよ』

−アキノ隊員(写真・文)『ぼくたち、ここにいるよ−高江の森の小さないのち』(2017.8、影書房)−
 http://www.kageshobo.com/main/books/bokutachikokoniiruyo.html

作者の宮城秋乃さんは、沖縄・うるま市の浜比嘉島出身のチョウ研究家(日本鱗翅学会・日本蝶類学会会員)。
 本書では、県北部・やんばる地方(2021年、世界自然遺産に登録)の森にくらす生きものたちの姿が、美しい写真と分かりやすく楽しい文章で紹介されています(子どもでも読みやすいように、ルビも振られています)。

日本最小クラスのチョウであるリュウキュウウラボシシジミの交尾、産卵、ふ化、羽化などの連続写真は、息をのむような繊細な美しさがあります。オキナワカブトムシ、オオシマゼミ、ナミエガエル、オキナワハイ(色鮮やかな毒蛇(怖い!))など、次々と珍しい生きもののたちが現れ、ページをめくるのが楽しみになります。… 続きを読む

【ほんのさわり】ウクライナ民話『てぶくろ』

−エウゲーニー・M・ラチョフ絵、うちだりさこ訳 ウクライナ民話『てぶくろ』(1965.11、福音館書店)−
 https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=41

1965年に発行された本書ですが、手元にある本の奥付には172刷(2022年4月)とあります。長期間にわたって人気のあるロングセラーです。
 しんしんと雪の降る森の中で、おじいさんが手袋の片方を落としてしまいました。その暖かそうな手袋を最初に見つけたネズミが、さっそく入り込んで住み着きます。… 続きを読む

【ほんのさわり】保阪正康『五・一五事件』

−保阪正康『五・一五事件-橘孝三郎と愛郷塾の軌跡』(2019.4、ちくま文庫)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480435873/

本書は、1939年北海道生まれで昭和史の実証的ルポルタージュの第一人者が、五・一五事件の首謀者とされた橘孝三郎に対する長時間のインタビューをもとに著したものです。1973年(当時、著者33歳、橘孝三郎80歳)の刊行から46年後に文庫化されました。

代表的な農本主義者の一人とされる橘は、水戸の出身。
 第一高等学校に進むも中退して郷里に帰り、自ら山野を開墾して家族的小農を基礎とする協同農業を実践しつつ、農村青年教育のための愛郷塾を主宰しました。… 続きを読む

【ほんのさわり】足達太郎ほか『農学と戦争』

−足達太郎、小塩海平、藤原辰史『農学と戦争−知られざる満州報国農場』(2019.4、岩波書店)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b450153.html

ロシアのウクライナへの武力侵攻により、食料安全保障の重要性に対する認識が高まっていますが、食料や農業は、ある意味、戦争と強い「親和性」があります。戦争遂行に当たって、食料の確保は不可欠の条件であるためです。

第二次世界大戦中の日本も、食料確保のための国策を強力に推進しました。
 国内では少年たちを食糧増産隊として動員して全国に報国農場を設けると同時に、植民地であった満洲(中国東北部)には「満洲報国農場」という制度をつくり、府県や農業団体に政府公認の農場(むろん、本来の所有者の現地の人たち)を割り当て、入植・移民させたのです。… 続きを読む

【ほんのさわり】アレクシエーヴィチほか『アレクシエーヴィチとの対話』

−スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、鎌倉英也、徐京植、沼野恭子『アレクシエーヴィチとの対話−「小さき人々」の声を求めて』(2021.6、岩波書店)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b583375.html

アレクシエーヴィチは1948年、ウクライナ人の母、ベラルーシ人の父のもとで西ウクライナで生まれ、幼い頃は祖母に育てられたそうです。両親とともにベラルーシに移住して大学を卒業後、ジャーナリストとして活躍。
 『戦争は女の顔をしていない』『アフガン帰還兵の証言』『チェルノブイリの祈り』など、対ドイツ戦の従軍女性兵士、アフガニスタンからの帰還兵と家族、放射能汚染地で暮らす人々などの声(凄絶な内容です。)を綿密にすくい上げた作品を公表してきました。
 かつての共産主義体制、あるいは現在のプーチンやルカシェンコ政権には一貫して批判的で、著作が発禁扱いとされたり、政治的な裁判の被告とされたこともありました。現在はドイツに亡命中です。… 続きを読む