【ほんのさわり】影山知明『続・ゆっくり、いそげ』

−影山知明『続・ゆっくり、いそげ』(2018.11、クルミド出版)
 https://www.kurumed-publishing.jp/books/10

著者は1973年東京・国分寺生まれ。外資系の大手コンサルティング会社を経てベンチャー投資ファンドを創業、独立。いわばグローバル資本主義のど真ん中で活躍されていた著者は、2008年、西国分寺駅に近い生家の地にシェアハウスとカフェ(クルミドコーヒー)をオープンし、地元をフィールドに様々な社会的な活動・実践に取り組むようになりました。

本書は、前著『ゆっくり、いそげ 〜カフェからはじめる人を手段化しない経済〜』(2015、大和書房)で提示した「仮説」について、その後の実践・経験を踏まえて自ら証明を試みようとしたものです。… 続きを読む

【ほんのさわり】勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』

−勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』(2016/8、小学館新書)
 https://www.shogakukan.co.jp/books/09825278

1972年東京生まれの水産学者(東京海洋大学准教授)である著者は、このままでは日本の水産業は衰退の一途をたどり、漁食文化の存続さえ危ぶまれると強い警鐘を鳴らしています。
 資源量が減る一方で消費者の「魚離れ」もあり、「獲れない+売れない→儲からない」という悪循環から漁村の限界集落化が進んでいるというのです。

その背景には、著者は水産政策の不備もあるとします。… 続きを読む

【ほんのさわり】指出一正『ぼくらは地方で幸せを見つける』

−指出一正『ぼくらは地方で幸せを見つける−ソトコト流ローカル再生論』(2016/12、ポプラ新書)
 https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8201111.html

著者は1969年群馬県生まれの月刊『ソトコト』編集長。
 島根県「しまコトアカデミー」のメイン講師を務められるなど、多くの地域づくりプロジェクトに関わり、「関係人口」という言葉の提唱者の一人とされています(注)。

著者は、これまでの社会は幸せや豊かな社会の尺度を東京や東京的なものに置いてきたのに対して、現在、これら既成の価値観にとらわれることなく、それぞれのやり方で自分が手ごたえを感じながら、地域で本当に豊かな暮らしを送っている若い人たちが各地で活躍しているとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】宇沢弘文『人間の経済』

−宇沢弘文『人間の経済』(2017.4、新潮新書) −
 https://www.shinchosha.co.jp/book/610713/

著者は1928年鳥取生、2014没。
 本書は、著者晩年のインタビューや講演録をもとに編集部が取りまとめ刊行したもので、宇沢本人による詳細な校正作業は行われていないとのこと。「語り」だけに、宇沢の思いがより率直に表現されているように思われます。… 続きを読む

【ほんのさわり】上間陽子『海をあげる』

−上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2020.10)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815583/

著者は1972年沖縄生まれ。米海兵隊・普天間基地の近くに住みながら、幼い頃から性虐待を受けたり、若年出産をした女性等の調査を続けておられる琉球大学教授です。
 その著者が「目の前の日々」を書き記したエッセイ集は、なかなかに重たい内容を含んでいます。

前夫との離婚話が進む失意の中、友人が持たせてくれた粕汁を泣きながら食べたこと(「美味しいごはん」)。小学生の頃から父親から性暴力を受け、今は風俗で働く17歳の母親とのこと(「何も書かない」)、子どもの頃は大嫌いだった祖母との別れ(「空を駆ける」)など。… 続きを読む

【ほんのさわり】いとうせいこう『福島モノローグ』

−いとうせいこう『福島モノローグ』(2021.2、河出書房新社)-
 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029498/

 著者は1961年東京生まれ。編集者を経て、作家、映像、音楽、舞台など様々な分野で活躍している方。
 本書は、東日本大震災で被災し、その後も被災地で暮らし活動されている女性たちにインタビューしたノンフィクションです。「あとがき」によると、小説『想像ラジオ』(2013年、野間文芸新人賞)で震災の死者に成り代わって「語り過ぎた」ため、本書はインタビュワーの質問や意見などは全てカットした「モノローグ」となったとのこと。

避難先から帰ってきたお母さんたち、災害FMを立ち上げた社協職員、地域の復興に取り組む村会議員や農業者の方達から、著者は「忘れたいこと」「忘れられないこと」を聴き出していきます。… 続きを読む

【ほんのさわり】濱田武士『魚と日本人−食と職の経済学』

−濱田武士『魚と日本人−食と職の経済学』(2016/10、岩波新書)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b266373.html

著者は1969年大阪府生まれ。北海道大学大学院(漁業経済学)を修了し、東京海洋大学准教授を経て現在は北海学園大学経済学部教授。
 本書は、近所にあった鮮魚店が閉店したことに「まちの暮らしの楽しみが一つ消えた」と著者が嘆く場面から始まります。顕著な「魚離れ」(消費量の減)という「食べる人たち」の現実。日本独自の文化である「魚食」が廃れつつあるのです。

著者の視点は、消費の現場から順番に上流(生産の現場)に向かっていきます。… 続きを読む

【ほんのさわり】原田マハ『生きるぼくら』

−原田マハ『生きるぼくら』(2015.9、徳間文庫)−
 https://www.tokuma.jp/book/b496237.html

高校時代にいじめにあって引きこもりとなった主人公は、24歳になった今も、昼夜パートで働く母親(父親とは離婚)に寄食中。毎日の食事はカップ麺とコンビニおにぎりばかり。食事とは、死ななければいいだけの「日常業務」にしか過ぎませんでした。
 ある日、突然、母が蒸発して途方に暮れた彼は、母が遺した年賀状を頼りに、長野・蓼科の祖母を十数年ぶりに訪ねます。
 ところが祖母は認知症を患い、彼の顔も名前も分かりません。それでも食べさせてくれたおにぎりやみそ汁の美味しさが、閉ざされていた彼の心を徐々に開いていきます。… 続きを読む

【ほんのさわり】野中郁次郎ほか『知識創造企業』

−野中郁次郎、竹内弘高『知識創造企業』(新装版、2020.12、東洋経済新報社)−
 https://str.toyokeizai.net/books/9784492522325/

1995年に英語で発表され、世界10カ国語以上に翻訳された経営学の記念碑的な名著が、四半世紀ぶりに新装版として再刊されました。
 本書が画期的とされ、今なお影響力を失っていないのは、イノベーションのメカニズムを知識創造という面から解明した点にあります。

知識には「形式知」と「暗黙知」があります。… 続きを読む

【ほんのさわり】平賀 緑『植物油の政治経済学』

 −平賀 緑『植物油の政治経済学』−
 http://www.showado-kyoto.jp/book/b432689.html

著者は1971年、広島県出身。
 香港留学、新聞社や金融機関勤務を経て、京都・丹波で「田舎暮らし」を実践しながら市民運動を企画・運営。その後に大学院に入り、ロンドン市立大学修士(食料栄養政策)、京都大学博士(経済学)を取得され、現在は京都橘大学准教授を務められているというユニークな経歴をお持ちの方。… 続きを読む

【ほんのさわり】ドキュメンタリ映画『いただきます2 −ここは、発酵の楽園』

公式ホームページより(https://itadakimasu2.jp/)

−ドキュメンタリ映画『いただきます2 −ここは、発酵の楽園』-
 https://itadakimasu2.jp/

この映画の製作(プロデューサー、監督、撮影、編集、デザインなど)を全て一人で担っているのが、オオタヴィンさん(愛知出身、東京・高尾在住の日本人の方です)。… 続きを読む

【ほんのさわり】國分功一郎『原子力時代における哲学』

−國分功一郎『原子力時代における哲学』(晶文社、2019/9)−
 https://www.shobunsha.co.jp/?p=5494

東電福島第一原発の事故を受けて「原発をなくしたいと心の底から思っている」著者が、2013年に行った連続講座「原子力時代の哲学」の記録です。ともすれば難しい哲学の用語なども、一般市民向けに分かりやすく解説してくれています。

科学技術に酔っていた1950年代、核兵器ではなく原子力という技術(「核の平和利用」)自体の危険性を正面から指摘した唯一の哲学者が、ハイデッガーでした。

人類は、地上の生態系を超越した原子力技術を開発・獲得したことにより、まるで神になったかのような錯覚(全能感)に浸りました。… 続きを読む