【ほんのさわり】蔦谷栄一『生産消費者が農をひらく』

−蔦谷栄一『生産消費者が農をひらく』(2024.1、創森社)−
 https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=436

【ポイント】
 著者は、「生産消費者」がキーとなって「農的社会」を広めていくことが、日本の世界的・歴史的な役割であり責務であるとしています。

著者は宮城県出身。農林中央金庫熊本支店長、農中総研特別理事等を歴任し、現在は農的社会デザイン研究所を主宰し、様々な活動に取り組んでおられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】平賀 緑『食べものから学ぶ現代社会』

−平賀 緑『食べものから学ぶ現代社会−私たちを動かす資本主義のカラクリ』(2024.1、岩波ジュニア新書)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b638607.html

【ポイント】
 まずは資本主義のカラクリを知り、その逆を、自分から主体的に行くことで、人も自然も壊さない経済を草の根的に広げていけると著者は訴えています。… 続きを読む

【ほんのさわり】吉井たくみ『鷹のつらきびしく老いて 評伝・村上鬼城』

−吉井たくみ『鷹のつらきびしく老いて 評伝・村上鬼城』(2023.9、朔出版)−
 https://saku-pub.com/books/taka.html

【ポイント】
 著者は「『真情の俳句』を詠んだ村上鬼城の世界観は、これからの持続可能で新しい世のなかを導く一つの力になるのではないか」としています。… 続きを読む

【ほんのさわり】吉田俊道『図解でよくわかる 菌ちゃん農法』

−吉田俊道『図解でよくわかる 菌ちゃん農法−微生物の力だけで奇跡の野菜づくり』(2014.1、家の光協会)−
 https://www.ienohikari.net/book/9784259567828 

【ポイント】
 菌ちゃん(微生物)の力を借りた元気野菜づくりについての、初心者にも分かりやすいガイドブック。市民農園や家庭菜園での野菜作りにも、大いに重宝しそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】山脇史子『芝浦屠場千夜一夜』

−山脇史子『芝浦屠場千夜一夜』(2013、青月社)−
 https://seigetsusha.co.jp/booklist/CWc5Ckok

【ポイント】
 最初は1週間だけのつもりだった体験取材が7年間も続いたのは、芝浦には類いまれな、抜け出せないほどの魅力があったから。ただ、本書は出版までに四半世紀という長い年月が必要でした。

東京出身のフリーランスのライターが、1991〜98年の間、東京・芝浦の食肉市場・と場に通って現場の方から仕事を習い、働いた時の体験記です。… 続きを読む

【ほんのさわり】写真集『いつもののと』

−写真集『いつもののと』(2013.6、ゆるり能登GIAHS写真部)−
 https://notostyle.shop-pro.jp/?pid=87686937

【ポイント】
 人が自然と調和し、ともに生きる能登の暮らしを映しとった美しい写真集の頁をめくるに、ざわついていた心も次第に静まってきました。

被災地からの映像に重苦しくなった心を抱えて図書館を訪ねたところ、偶然、見つけて手に取ったのが、この小ぶり(A5版)の写真集でした。… 続きを読む

【ほんのさわり281】高島善哉『アダム・スミス』

【ポイント】
 市場メカニズムが発揮されるためには、その前提として道徳、共感が必要。

−高島善哉『アダム・スミス』(岩波新書、1968.8)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b267091.html

アダム・スミス研究の第一人者とされた著者(1904〜1990)が、1960年代に著した入門書です。記述の時代背景等に古さは感じるものの、いま読んでも多くの示唆に富んでおり、現に増刷が続けられているようです。… 続きを読む

【ほんのさわり279】向田邦子『父の詫び状』

【ポイント】
 著者の思い出に残っている「ごはん」は、東京大空襲の翌日に食べたサツマイモの天ぷらなど、苦くてしょっぱいものばかりとのこと。

−向田邦子『父の詫び状』(2006.2、文春文庫)−
 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167277215

1924年東京に生まれ、放送作家として大活躍中の1956年に台湾での航空機事故で急逝した著者の、最初のエッセイ集です。 … 続きを読む

【ほんのさわり278】自然栽培協会 監修『農業と食の選択が未来を変える』

−(一社)自然栽培協会 監修『農業と食の選択が未来を変える』(2023.7、玄文社)−
 https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_90593799/

本書は、医療、食、農業、環境等の幅広い分野の専門家の共著により、自然栽培に関連して、社会の現状や目指すべき目標について整理したものです。
 自然栽培とは、自然の循環を模範とし、持続可能な社会を実現するための多様性を尊重する農法ことで、食生活など様々な問題についても、自らが自然と共にあるという本来の姿を意識し、できることから実践するだけで、シンプルで明るい解決策につながると主張しています。… 続きを読む

【ほんのさわり277】井出留美『あるものでまかなう生活』

−井出留美『あるものでまかなう生活』(2020.10、日経BP)−
 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052600050/

著者は食品ロス問題ジャーナリスト。青年海外協力隊(フィリピン食品加工)、外資系食品会社の広報室長等を経て、東日本大震災時の支援活動をきっかけに、世界の食品ロス削減を目指す(株)0ffice3.11を設立。
 「食品ロス削減推進法」成立にも協力し、2018年には第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)、2020年度には食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞されています。

著者のいう「あるもの」とは、これまでは捨てていた食べものや眠らせていたモノだけではなく、私たち一人ひとりの資質や自分の回りにある自然環境も含むとのこと。そして「あるものでまかなう」暮らしは、楽しく、心が健康でいられるそうです。捨てるくらいなら最初から作らなければ、働く時間も資源もコストも無駄にならず、働き方改革につながるとも。… 続きを読む

【ほんのさわり275】山下惣一『百姓の遺言』

−山下惣一『百姓の遺言』(2023.7、家の光協会)−
 https://www.ienohikari.net/book/9784259547837

何度か書いてきましたが、昨年7月に逝去された山下惣一さん(佐賀・唐津の農民作家)の一連の作品は、私にとって人生の羅針盤ともいえる存在でした。
 本書は、「生涯一百姓」を貫かれた山下さんがエッセイ等のかたちで遺された警鐘や提言をまとめたもので、1979年に地上文学賞を受賞し直木賞候補ともなった小説『減反神社』も収録されています。

山下さんは、時代の流れに翻弄されつつも、減反や自由化、規模拡大を推進する農政に強烈に異議を唱え続けてこられました。そして、少なくとも前半生においては、同時に「消費者」とも闘っていたことが分かるエピソードが収録されています。… 続きを読む