【ほんのさわり】大江正章『有機農業のチカラ』

−大江正章『有機農業のチカラ−コロナ時代を生きる知恵』(2020.10、コモンズ)−
 http://www.commonsonline.co.jp/new_books/2020/09/04/yukinogyopower/

著者は1957年神奈川県生まれ。
 学生時代から市民運動に積極的に関わり、いったん中堅出版社に就職したものの退職して自ら出版社「コモンズ」を立ち上げ、編集者として、あるいは自らライターとして、多くの良質かつ問題提起的な本を出版されてきました。
 その大江さんは、肺がんとの10か月に及ぶ闘病生活の末、昨年(2020)12月15日に逝去されました。享年63歳、早過ぎました。… 続きを読む

【ほんのさわり】2020年まとめ 

今年も食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる多くの本と出合えることができました。
 地球と人類の将来ビジョンを考えるのに参考になった本は西川 潤『2030年 未来への選択』(No.186)、宮台真司、飯田哲也『原発社会からの離脱』(No.190)、古沢広祐『食・農・環境とSDGs』(No.196)、中野佳裕「いまこそ〈健全な社会〉へ」(No.198)、ハラリ『サピエンス全史』(No.200)、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(No.207)です。

農村や自然との関わりでは、鷲田清一/山極寿一『都市と野生の思考』(No.191)、宇根 … 続きを読む

【ほんのさわり】斎藤幸平『人新世の「資本論」』

−斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020/9)−
 https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1035-a/

改めて小稿で紹介する必要もないベストセラー。
 著者は1987年生まれの大阪市立大学大学院経済学研究科准教授で、ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程を修了された「マルキスト」です。

今さらマルクス主義? … 続きを読む

【ほんのさわり】宮内泰介、上田昌文『実践 自分で調べる技術』

−宮内泰介、上田昌文『実践 自分で調べる技術』(岩波新書、2020.10)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b530022.html

ベストセラーの前著『自分で調べる技術』(2004)が、全体に新たに書き下ろされました。
 宮内さんは北海道大学大学院文学研究院教授。専門は環境社会学で、環境保全やコミュニティの分野を中心に実践的な調査研究を続けておられる方。… 続きを読む

【ほんのさわり】とびやあい『田んぼ、はじめました。』

−とびやあい『田んぼ、はじめました。』(イースト・プレス、2017.3)−
 https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781614991

 著者は福島出身の栄養士で、本書で漫画家デピューされたという女性。初めての米作りの1年間の奮闘記です。
 「自分で作ったものを食べ、自然の中で生きる」暮らしに漠然とあこがれていた著者は、今はなき危険な池袋のバーのマスター(余談ですが、ご本人はハンサムに描いてくれたと喜んでおられました。)との出会いをきっかけに、米作りを始めることに。仕事をしながらの「半農半X」です。

 全くの素人だった著者が、最初からうまくいくわけはありません。都会の生活で忘れていた肉体労働や自然の厳しさも実感します。それでも地域の人たちや米作り仲間と出会い、助けられ、家族(両親)との関係も見つめ直されます。… 続きを読む

【ほんのさわり】滝沢秀一『やっぱり、このゴミは収集できません 』

−マシンガンズ滝沢秀一『やっぱり、このゴミは収集できません 〜ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと〜』(白夜書房、2020.9)−
 http://www.byakuya-shobo.co.jp/page.php?id=6413

著者は1976年東京生まれ。お笑い芸人として活躍しつつ、定収入を得るためにゴミ収集会社に就職したという「半ゴミ収集人・半芸人」。本書は2018年の前著の続編です。

 芸人らしく軽妙でぶっ飛んだ文体とイラストで著されているのは、ゴミ収集現場の過酷な現実です。時には得体の知れないゴミに身の危険さえ感じ、住民には「ゴミ屋」と差別されながらも、淡々とゴミを収集して回る日々が描かれています。… 続きを読む

【ほんのさわり】末吉里花『はじめてのエシカル』

−末吉里花『はじめてのエシカル』(山川出版社、2016.11)−
 https://www.yamakawa.co.jp/product/15107

著者は1976年ニューヨーク生まれ。
 TBS系テレビ『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅するうち、地球環境が危機的状況にあることを痛感し、2015年に(一社)エシカル協会設立されたという方。

 本書では、ともすれば「堅く」捉えられがちなエシカル消費を、分かりやすく、身近で、誰でも取り組むことができるものとして紹介されています。… 続きを読む

【ほんのさわり】コロンバニ『三つ編み』

−レティシア・コロンバニ『三つ編み』(早川書房、2019/4/18)−
 https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014188/

作者はフランス・ボルドー生まれ。映画監督、女優、脚本家でもあるという多才な女性だそうです。

主人公は3人の女性。1人目はインドの不可触民であるスミタ。女性(妻)は男性(夫)の所有物とされ、人権どころか生命までも脅かされる状況のなか、夫と家を捨てて、幼い娘の手を引いて困難で長い旅に出ます。
 2人目はイタリアのジュリア。毛髪加工工場を営んでいた父が事故で急逝、工場が多額の負債を抱えていたことも判明し、工場と従業員、自宅を守るために立ち上がります。… 続きを読む

【ほんのさわり】ハラリ『サピエンス全史』

−ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史−文明の構造と人類の幸福−』(上下、河出書房新社、2016.9) −
 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309226712/

農業革命は、人類史上最大の詐欺であった。
 それ以前の狩猟採集民は、より刺激的で多様な時間を送り、バランスの取れた食生活を謳歌し、飢えや感染症のリスクも小さかった。ところが人類(ホモ・サピエンス)は農耕を始めたこと(農業革命)で、確かに食糧の生産量は増加したものの、人口爆発とエリート層の形成(身分格差の生成)につながったたけで、平均的な農耕民は、それまでの平均的な狩猟採集民よりも苦労して長時間働くようになったにもかかわらず、見返りに得られる食べ物は劣ってしまったのだ。… 続きを読む

【ほんのさわり】中野佳裕「いまこそ〈健全な社会〉へ」

−中野佳裕「いまこそ〈健全な社会〉へ」(岩波書店『世界』、2020年8月号所収)
  https://www.iwanami.co.jp/book/b521302.html

今回は書籍ではなく雑誌の記事を紹介させて頂きます。
 著者は1977年山口県生まれ。国際基督教大学社会科学研究所勤務等を経て、現在は早稲田大学地域・地域間研究機構(ORIS)次席研究員/研究院講師。
 持続可能な未来社会を構想するコミュニティ・デザイン理論の研究がご専門です。… 続きを読む

【ほんのさわり】日本ペンクラブ編『うなぎ』

−浅田次郎選、日本ペンクラブ編『うなぎ:人情小説集』 (2016/1、ちくま文庫)
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480433336/

内海隆一郎、岡本綺堂、井伏鱒二、林芙美子、吉村昭など9人による短編小説と、斎藤茂吉の短歌選が収められています。それにしても主題であれ脇役であれ、ウナギが登場すると、かくも濃厚に人間模様(家族のぬくもり、男女の愛憎、犯罪、戦争など)が描かれるのかと驚きます。

 亡き父の単身赴任先だった松江で常連だった料理店を訪ね、好物だった「ウナギのたたき」を頂く娘、新婚旅行の時に夫が失踪した川沿いの温泉宿に毎年逗留する女性、行きずりの男と一夜を過ごした安ホテルの路地の先にはウナギを割く人の姿が。… 続きを読む

【ほんのさわり】古沢 広祐『食・農・環境とSDGs』

−古沢 広祐『食・農・環境とSDGs−持続可能な社会のトータルビジョン』(2020.2、農山漁村文化協会)−
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54019209/

著者は1950年東京生まれ。京都大学大学院農学研究科で博士課程(農林経済)を習得、現在は國學院大學経済学部教授(本書「おわりに」によると、3月末で定年退職とのこと)。

 環境社会経済学や持続可能社会論を専門とする研究者であると同時に、NGO等で地球市民的な活動にも積極的に取り組んで来られた方で、様々な国際的な会合(1992年地球サミット、2015年COP15会合、国連総会等)にも参加されています。… 続きを読む

【ほんのさわり】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

−前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(2017.5、光文社新書)−
 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039899

世界がコロナ禍に苦しんでいる現在、アフリカや南アジアではバッタが大量発生し農作物に大きな被害を与えています。

 1980年秋田県生まれ、小学生の頃に読んだ『ファーブル昆虫記』に感銘を受けた著者は、昆虫学者になる(バッタに食べられたい(?))という夢の実現のため、単身、アフリカに長期滞在しサバクトビバッタの研究に従事。本書は、無収入のポスドク(当時)による「バッタと大人の事情を相手に繰り広げた死闘の日々」を綴ったものです。
 なお、「ウルド」とはモーリタニアで最も名誉あるミドルネームで、現地の研究所長から授かったものとのこと。… 続きを読む