−蔦谷栄一『生産消費者が農をひらく』(2024.1、創森社)−
https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=436
【ポイント】
著者は、「生産消費者」がキーとなって「農的社会」を広めていくことが、日本の世界的・歴史的な役割であり責務であるとしています。
著者は宮城県出身。農林中央金庫熊本支店長、農中総研特別理事等を歴任し、現在は農的社会デザイン研究所を主宰し、様々な活動に取り組んでおられます。
著者は、日本農業の存続自体が危ぶまれるようになっているなかで、単に消費するだけではなく農業生産にも参画する「生産消費者」が増加していることに希望を見出しています。市民農園や体剣農園、生協運動や労働者協同組合運動の広がりが紹介されており、さらには著者がかかわって各地において開催されている「農あるまちづくり講座」の事例も紹介されています。
また、日本は都市の内部にも農地が存在するなど都市と農村の距離が短く、生産消費者を広げていく条件に恵まれていともしています。
さらに、著者はEUにおける環境支払いや有機農業推進の施策を高く評価する一方で、「風土産業」であるはずの農業のモデルを海外に求めることは間違いであり、日本の歴史を再評価すべきともしています。
すなわち、1万年に及ぶ縄文時代を過ごした日本人には、戦争はせず、分配を公平に行う等のモラルや規範を重視する「穏やかな共同体」の思想が根付いているというのです。これは一神教の世界にはないものとのこと。
著者は、生産消費者がキーとなり、循環・自給・皆農による農的社会を広めていくことが、日本の世界的・歴史的役割であり、同時に責務でもあるとしています。
なお、著者は今回の基本法改正案については、基本法のあり方自体についての議論が欠落しており、将来ビジョンも明確となっていない等としており、直接支払いの本格的拡充など、さらなる抜本的な見直しが必須としています。
[参考]
農的社会デザイン研究所
http://www.nouteki-design.com/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.287、2024年3月10日(日)[和暦 如月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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