【豆知識】「高騰」する米価格

【ポイント】
 米価格「高騰」等の報道が目立っていますが、過去の推移をみると現在の水準が安定的に継続するとは思えず、何より、生産コストを賄えていない状況が続いています。

7月16日に農林水産省が発表した6月の米の相対取引価格(2023年産米、全銘柄平均、速報)は、玄米60kg当たり1万5,865円となり、約11年ぶりの高値となりました。22年産米の通年平均価格と比べると約2000円(15%)上昇しています。某全国経済紙には「令和の米騒動か」などという不穏な見出しまで現れました。
 価格「高騰」の背景には、高温被害により23年産米の供給量が少ないことに加え、インバウンド(訪日外国人)による外食需要の拡大があるとされています。

それでは、現在の米の価格水準はどの程度高いのでしょうか。… 続きを読む

【豆知識】出生率が高い市区町村の特徴

【ポイント】
 出生率上位20位の市区町村は、人口が過度に集中していない、単独世帯が少ない、農林漁業のウェイトが大きい等の特徴があります。

本年6月の厚生労働省の公表によると、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、2023年で1.20と過去最低を更新しました。これと市街化との関連を都道府県別にみたのが前号の分析でした。
 https://food-mileage.jp/2024/07/03/mame-294/

今号では、本年4月に公表されている2022年の市町村別の出生率を用いて、上位20市区町村の特徴を様々な指標から明らかにすることを試みました。リンク先の図295は、各種指標について、出生率の上位20市区町村と、全国平均、下位20市区町村を比較したものです(上位/下位の具体的な市区町村名等は図の脚注をご覧ください)。… 続きを読む

【豆知識】出生率と都市化との関連

【ポイント】
 全国平均で過去最低を更新した合計特殊出生率は、東京都をはじめとする大都市部では特に低くなっています。

本年(2024)6月5日(水)、厚生労働省は「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を公表しました。
 それによると、出生数は過去最低で17年連続で死亡数を下回るなど人口減少のペースが加速していることが明らかになり、また、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」(以下、「出生率」)は1.20となり、過去最低を更新しました。
 出生率低下の原因には様々なものあると考えられますが、リンク先の図294は、出生率と、市街化区域内にある世帯の割合を都道府県別に示したものです。… 続きを読む

【豆知識】消費者の「食の志向」、有機食品のイメージ

【ポイント】
 近年における日本の消費者はますます節約志向を強めており、有機食品については健康、安全といった「利己的な」動機で購入している状況が伺えます。

(株)日本政策金融公庫は、2010年以降、年2回(1月、7月)、消費者の「食の志向」についてアンケート調査を実施しています(リンク先の左側の図293-1)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/06/293_shouhi.pdf

直近(2024年1月)においては、健康に配慮したいとする「健康志向」が45.7%と最も高く、次いで「経済性志向」(食費を節約したい、40.8%)、「簡便化志向」(料理や後片付けの手間・時間を省きたい、38.2%)となっています(複数回答、上位2つ)。… 続きを読む

【豆知識】小規模層で重視されている「管理」労働

【ポイント】
 小規模層では「田んぼの見回り」等の管理作業に多くの時間が費やされており、丁寧な稲作が行われていることが伺えます。

日本農業の平均規模は約3haと、アメリカ180ha、イギリス80ha、EU(27か国)17ha等と比べて狭小であることから、規模拡大等による労働生産性の向上が課題とされています。
 米の生産コスト(10a当たり全算入生産費)をみると、作付規模15ha以上層では平均を23%下回っており、特に労働費(コスト全体の21%)は平均を41%下回っているなど、規模拡大の効果が見られます。
 リンク先の棒グラフは、米の作業別の労働時間を作付規模別にみたものです。… 続きを読む

【豆知識】消滅集落跡地で放置される森林、農地

【ポイント】
 過疎地域等における消滅集落跡地では、森林や農地の半分以上が「放置」されている現状にあります。

総務省が全国の過疎地域等1,045市町村を対象に実施した調査(2020年3月)によると、2015年以降に全国の96市町村で164集落が消滅しています。リンク先の図290は、この消滅した集落の跡地における主な地域資源の管理状況を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/04/290_kanri.pdf

これによると、集落が消滅した後でも道路は86%、用排水路は70%が管理され続けており、管理主体は主に行政となっています… 続きを読む

【豆知識】農村地域の持つ役割に対する意識

【ポイント】
 大都市の居住者は、食料供給や良好な景観形成等の農村の役割は高く評価しているものの、積極的に過疎地域に行って協力しようとする意識は低いものとなっています。

内閣府では、テーマを変えつつ「農山漁村に関する世論調査」を定期的に実施しています。2021年6月には、農村地域の持つ役割や、都市地域と農山漁村地域の交流についての意識についての調査が行われました。
 調査対象は全国18歳以上の者3,000人で、有効回収数は1,655人(55.2%)です。
 リンク先の図289は、農村地域の持つ役割等に対する回答を都市階級別に示したものです。… 続きを読む

【豆知識】ふくしま心のケアセンターへの相談件数等の推移

【ポイント】
 原発被災者等からの相談件数は、近年もほぼ横ばいないし増加傾向で推移しており、相談内容は多様化、複雑化するとともに深刻化しているとのことです。

「ふくしま心のケアセンター」は、福島県から事業委託を受けた(一社)福島県精神保健福祉協会が設置・運営する機関で、看護師、保健師、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士、作業療法士等が相談を受けること等により、原発被災者等の総合的な心のケア対策を行っています。

リンク先の図288は、2013年以降の相談件数等の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/03/288_sodan.pdf続きを読む

【豆知識】横ばいで推移している自給率の意味

【ポイント】
 近年、カロリーベースの食料自給率はほぼ横ばいで推移しているのは、人口の高齢化や減少によって供給熱量が減少しているためであり、国内農業生産の縮小は続いています。

食料・農業・農村基本法の眼目の一つは、基本計画の中で食料自給率の目標を定めることです。2020年に閣議決定された現行の基本計画の中では、2030年度の食料自給率の目標としてカロリーベースで45%、生産額ベースで75%とされています。カロリーベース自給率(以下、単に「自給率」と呼びます。)は1960年度には79%ありましたが、食生活の大きな変化等を反映して2000年度には40%へと大きく低下し。その後はほぼ横ばいで推移しています。
 リンク先の図287は、2000年代に入ってからの自給率と、供給熱量(合計と国産・輸入の内訳)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/03/287_jikyu.pdf続きを読む

【豆知識】増加する加工・調理食品への支出額

【ポイント】
 消費者は、ライフスタイルや嗜好の変化を反映して一貫して加工食品や外食への支出を増やしていますが、供給側の企業活動も影響しているとの指摘もあります。

18世紀半ばの産業革命以来大きく発展した資本主義は、食料や農業にも大きな影響を及ぼしてきました。消費者の食料消費のかたちも大きく変化しています。
 家計における食料消費の長期的な推移を示したものが、リンク先の図286です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/02/286_kakei.pdf続きを読む

【豆知識】農地面積に占める市民農園の面積の割合

【ポイント】
 東京、神奈川等では市民農園の面積の割合は特に大きく、都市住民が土に触れる貴重な場となっているとともに、農業や農村に対する理解を深める面でも重要な役割を担っています。

市民農園とは、非農家や都市住民がレクリエーション等のために、小面積の農地を利用して野菜等を育てるための農園のことをいいます。2022年3月末時点の日本の市民農園数(注)は4,235農園・187,006区画で、面積は1,293haとなっており、農園数、面積ともこの20年間で約1.6倍に増加しています。

(注)特定農地貸付法、市民農園整備促進法及び都市農地貸借法の手続きに沿って設置された農園の数値で、いわゆる農業体験農園(園主の指導の下に利用者が継続的に農作業を行う農園利用方式の農園)は含まれていません。

 このように増加が著しい市民農園ですが、全国の農地面積に占める割合は0.03%に過ぎません。ただし、この割合は地域によって大きな差があります(リンク先の図285参照)。… 続きを読む

【豆知識】栄養面、農業生産面における肉類の地位の変化

【ポイント】
 肉類は、食料消費面、農業生産面でますます重要となっています。しかしながら、産地や生産者・事業者の方たちのことを想像することが難しいことが、根深い偏見や差別が払拭されない一因となっていると考えられます。

日本人の食生活は、1960年代に高度経済成長が始まって以来、大きく変化しました。これほど大きく食生活が変化した国は、世界にはありません。
 変化の主役は、米と畜産物・油脂です。米の消費量はピーク時の約4割へと大幅に減少した一方、畜産物と油脂は数倍に増加しました。生活の急激な「欧米化」です。今回は、このなかで肉類を取り上げます。
 リンク先の図284は、栄養摂取及び農業生産面における肉類の割合の変化を示したものです。… 続きを読む

【豆知識】能登の農業

【ポイント】
 能登の農業生産条件は必ずしも恵まれたものではありませんが、多彩で特徴的な農業が営まれており、日本で最初の世界農業遺産にも認定されています。

石川県の能登地方(七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町及び能登町)における農業の生産条件は、必ずしも恵まれたものではありません。
 リンク先の図283は、能登の農業についてのいくつかの指標について、石川県平均、全国平均と比較したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/01/283_noto.pdf続きを読む

【豆知識】2023年の振り返り

(【 】内の数値は発行号数。以下同じ。)
 今年は「経済学の父」アダム・スミス生誕300年、米市場を例に市場メカニズムについておさらい(消費者の行動変容の重要性を指摘)【281】。関東大震災からは100年目、人口等の東京圏への一極集中は当時からさらに進んでいます… 続きを読む