【豆知識281】市場メカニズムとは(米市場を例に)

【ポイント】
 水田農業の有する多面的機能等に対する消費者の理解が深まれば、米の価格上昇と生産量の増加が同時に実現。

市場メカニズムとは、価格と生産量は需要と供給のバランスが取れたところ(均衡点)で自然に決定されるというものです。
 リンク先の図281【1】は、現在の米市場です(あくまで単純化した概念図です)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/12/281_DS.pdf

価格が高くなるほど供給量は増加するため供給曲線は右上がりに、逆に需要は減少するため需要曲線は右下がりになります。
 仮に米が1万2千円の場合は供給量(900万トン)が需要量(500万トン)を上回るため、値下がりが起こり、最終的には需要と供給が均衡するE(10,000円、700万トン)に収束することとなります。これが現在、実現している米価と生産量です。

また、青い部分を消費者余剰(消費者一人ひとりが支払ってもよいと思う金額と,実際に支払う金額との差を足し上げたもの)、黄色い部分を生産者余剰(生産者一人ひとりが供給してもよいと思う金額と,実際に受け取る金額との差を足し上げたもの)といい、その合計(社会的余剰)は均衡点で最も大きくなります(これは、網掛けしてある均衡していない場合と比べても明らかです)。

【2】は、規模拡大や技術革新によるコスト低減があり、生産性が向上し、供給曲線が右下にシフトしたケースを示しています。生産量は増加し、余剰は【1】よりも大きくなることから、生産性の向上は消費者にも利益となることを示しています。しかしながら米価水準は低下し、小規模などコストを賄えなくなる生産者が増えることが予想されます。

【3】は、需要曲線が右方にシフトするケース示しています。これは、例えば水田の有する多面的機能等に対する消費者の理解が進み、現在より高い価格であっても米を購入してもよいという消費者が増えたことを示しています。【1】に比べて生産量が増加すると同時に米価も上昇し、消費者余剰、生産者余剰ともに増加することが分かります。

以上は非常に単純化したもので、現実の米市場には交付金や生産調整など制度的な要因も大きな影響を及ぼしていることに留意が必要です。
 しかし、この単純なモデルからも、現在の米をめぐる課題(米価水準の低迷と生産量の減少(=食料自給率の低下)の解決のためには、消費者の行動変容が重要であることを示唆しています。

(資料)各種テキストを参考に筆者が作成。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.281、2023年12月13日(水)[和暦 霜月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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