−山脇史子『芝浦屠場千夜一夜』(2013、青月社)−
https://seigetsusha.co.jp/booklist/CWc5Ckok
【ポイント】
最初は1週間だけのつもりだった体験取材が7年間も続いたのは、芝浦には類いまれな、抜け出せないほどの魅力があったから。ただ、本書は出版までに四半世紀という長い年月が必要でした。
東京出身のフリーランスのライターが、1991〜98年の間、東京・芝浦の食肉市場・と場に通って現場の方から仕事を習い、働いた時の体験記です。
最初は1週間だけのつもりだった「野次馬」的な体験取材が、結局、断続的に7年間も続いたのは、芝浦には類いまれな、抜け出せないほどの魅力があったからだったそうです。
自分の体の何倍もある大型の牛の解体に、ナイフ1本を握ってひとりで取り組む作業員の姿は「神話の中の光景を見ているよう」だったとのこと。自らも牛のカシラ(頭部)を運ぶたび、これまでなかったような清涼感が体に行き渡ってきたそうです。現場は「たくさん血は流れ、けっこう凄まじいけれど、なんだか静かで心落ち着く場所」だったようです。
差別的な表現をした著名な出版社等を組合が激しく糾弾する「出版確認会」の様子も描かれています。
なお、本書は出版までに四半世紀という長い年月が必要でした。著者自身、多くの人に読んでもらうのがいいのか、悩みがあったようです。
それでもやはり出版しようと決めた時、著者は解放運動の支部を訪ねて事前に了解を求めたそうです。「ここに書いてあることに差別はないけれど、差別される環境は今も残っている」と言われつつも、最後は「あんただって何年も芝浦の現場に通った当事者だ。当事者が書きたいというのを書くなとはいえない」と納得してもらったというエピソードが記されています。
[付記]
年末年始以降、本書を含めて、肉食に関わる何冊かの本を読みました。拙ブログにまとめてありますので、ご関心のある方は覗いて頂けると幸いです。
https://food-mileage.jp/2024/01/07/blog-481/
https://food-mileage.jp/2024/01/23/blog-483/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.284、2024年1月25日(木)[和暦 師走十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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