【ほんのさわり】大和田順子「アグリ・コミュニティビジネス」


−大和田順子「アグリ・コミュニティビジネス」(2011.2,学芸出版社)−

著者は東京のお生まれ。百貨店、化粧品会社、シンクタンク勤務等を経て2007年から(一社)ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表。日本にはじめて LOHAS(ロハス)を紹介された方としても著名です。

その大和田さんの最近の関心事項の1つが「豊かで幸せな地域づくり」。
本書で大和田さんは、経済成長の結果、便利で豊かになったはずの日本が「気がついてみたら生活や社会の基盤である食や農が危うく、砂上の楼閣のような状態に陥っていた」とし、「こうした“危機”を脱するためには“農” … 続きを読む

【ほんのさわり】西加奈子「まく子」

西加奈子『まく子』(2016.2、福音館)

今回は食べものや農業とは直接関係なく、思春期に入りかけた少年を主人公とした小説を紹介します、

サトシ(小学5年生)は、「得体の知れない何かに変身してゆく化け物みたい」な同級生の女子を目の当たりにし、自分は大人になりたくないと切望しながら体がどんどん変化していることを嫌悪しています。
 そのサトシの前に、石や砂をまくのが大好きな転校生・コズエが現れます。実は宇宙人というトンデモ設定。コズエは砂をまく理由を「全部落ちるから楽しい。永遠に続かないから素敵なんだ」と言います。

ひなびた温泉町を舞台に祭りや放火事件といったエピソードを経て、コズエとオ力アサンが光の塊のUFOに乗って宇宙に帰るクライマックスシーン。… 続きを読む

【ほんのさわり】西田栄喜「小さい農業で稼ぐコツ」

西田栄喜「小さい農業で稼ぐコツ」(2016.2、農山漁村文化協会)

著者は石川・能美市で「日本一小さい専業農家・風来」を経営されている通称・源さん。
 その経営面積は30aと日本平均の8分の1で、4棟のハウスと自宅内の店舗兼加工所により「田舎で家族5人が暮らしていくには十分」な1200万円を売り上げているそうです。

大学卒業後、バーテンダーやホテルの支配人等をされていた著者は「命の元である食を育てる農業こそ、人を幸せにできる究極のサービス業」と思い、1999年、新規就農されました(初期投資は自己資金の140万円のみ)。

野菜等を載せて住宅地等を回る「引き売り」から始められたそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】蔦谷栄一「農的社会をひらく」

蔦谷栄一「農的社会をひらく」(2016.4、創森社)
 -足元からの自立と協同で農的社会の創造へ-

著者は長く(株)農林中金総合研究所で日本農業論、都市農業、持続的循環型農業等を中心とした調査研究に携わり、農林水産省の各種研究会委員等の公職も務められ、2013年には農的社会デザイン研究所を設立された方です。
 また、自ら山梨県下で自然農を実践するとともに田舎体験教室を主催、銀座農業政策塾の代表世話人も務められるなど、子ども達や都市の生活者を含めた多くの人に「農」の現代的な重要性について積極的に発信されています。

冒頭で著者は「農的社会に1人でも多くの人に触れてもらい、農の持つ社会デザイン(変革)能力を知ってもらいたい」と訴えています。… 続きを読む

【ほんのさわり】高橋博之「都市と地方をかきまぜる」

高橋博之「都市と地方をかきまぜる-『食べる通信』の奇跡」(2016.8、光文社新書)

離れてしまった生産者と消費者との間の距離を計測する指標がフード・マイレージ。この距離を縮めることで、私たちの食や農に関わる多くの
問題は解決できます。しかし、一般の人にとって生産者と直接「顔の見える関係」を作ることは簡単ではありません。
 そのようななか、都市住民が新しいふるさとをみつけるきっかけとなる史上初・世界初の「食べもの付き情報誌」が誕生しました。本書では、
その「食べる通信」を生み出した著者の実践に基づく熱い思いが綴られています。… 続きを読む