西田栄喜「小さい農業で稼ぐコツ」(2016.2、農山漁村文化協会)
著者は石川・能美市で「日本一小さい専業農家・風来」を経営されている通称・源さん。
その経営面積は30aと日本平均の8分の1で、4棟のハウスと自宅内の店舗兼加工所により「田舎で家族5人が暮らしていくには十分」な1200万円を売り上げているそうです。
大学卒業後、バーテンダーやホテルの支配人等をされていた著者は「命の元である食を育てる農業こそ、人を幸せにできる究極のサービス業」と思い、1999年、新規就農されました(初期投資は自己資金の140万円のみ)。
野菜等を載せて住宅地等を回る「引き売り」から始められたそうです。
近くに大勢の消費者がいることが日本の特徴であり、そのメリットを最大限に活かせるのが加工品を含む直売とのことです(現在はネット販売が中心とのこと)。
また、著者は畑が小さければ時間もコスト(機械投資等)もかからない(スモールメリット)とし、「小さいからこそこだわりを持つことが必要」「小さいからこそできるこだわりがある」という「ミニマム主義」を提唱されています。
そして、農家になって自然に対する感謝の思いや畏怖を実感しているという著者は、「農は価値観を変える扉」とし、「命の価値観を共有できる輪が広がれば」と願っておられるそうです。
この野菜に加工、直売を組み合わせた方法(6次産業化)が、米や畑作物、畜産など他の作目に単純に当てはめることは困難かもしれませんが、いずれにしても、日本の農業や食料供給のあり方等について大きな示唆に富む著作です。
何しろ評論ではなく、現実に著者が取り組んでおられる内容ですから、大きな説得力があります。
なお、著者は本年9月、続編とも言える『農で1200万円!-「日本一小さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩』を上梓されました。
これも読むのが楽しみです。
[参考]風来
http://www.fuurai.jp/
【F.M.Letter No.104; 2016.10/31 掲載】