【ほんのさわり】青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』

−青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』(2022.11、文春新書)−
 https://bunshun.jp/articles/-/67655

【ポイント】
 日本が原発を止(や)められないのは、原子力ムラが存在しているから。しかし原発は巨大だから変えられないというのは嘘で、推進する勢力は一部だけ。

著者は札幌市出身。地元新聞社を経て全国紙に入社後は東日本大震災・原発事故の現場を取材し、「手抜き除染」の告発報道等に携わられました。現在も個人の立場で、学生時代からのライフワークである原発問題の取材を続けておられます。ちなみに祖父は電力会社勤務、父親は大学工学部の教授として原発に代わる発電方法の研究をされていたそうです。

昨年、政府は「原発回帰」に舵を切りました。「世界で最も厳しい規制基準」といった新たな安全神話も作られつつあります。
 あれほどの事故を経験し、現在も被災者には(避難者も帰還者も)厳しい状況が続いているにもかかわらず、なぜ日本は原発を止(や)められないのか。疑問を持った著者は、政治家、官僚、電力会社、研究者、マスコミ関係者など、意見の異なる人たちを含めて数百人に会い、話を聞きました。怒鳴られたこともあったそうです。

取材で改めて明らかになったのは、内閣総理大臣を村長とし、政・官・業・学・メディアの五角形から成り立っている「原子力ムラ」の存在でした。
 電力会社による政治家への献金(原資は電気料金)と、経産省等からの天下りの受け入れ(“互助会”システム)。学会・大学には研究費等を支出し「御用学者」を養成します。
 マスコミは、原子力PR広告や、電力会社・政府の発表を鵜呑みにした記事を掲載することで原発を容認してきました。情報を得るためという口実で、あえて電力業界に取り込まれ一体化する記者も存在するそうです。

そして「おわりに」には、本書の出版に当たって著者自身が経験した、所属する新聞社との「確執」が赤裸々につづられています。一時は出版不許可とされ、所属する新聞社名や肩書はすべて削除したそうです。

最後に著者は「本書で描いたのは、原発は巨大だから変えられないというのは嘘だということ。原発を推進する勢力は一部だけ」であるとし、「村長である総理が変えると決めれば変えられる。そのために投票に行く人が一人でも増えてほしい」と訴えています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.288、2024年3月24日(日)[和暦 如月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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