【ブログ】Cease Fireシンポ5「停戦をためらう構造について」

新年度に入った2024年4月1日(月)。
 玄関前に置いたプランターのブルーベリーの花。
 ヒガンザクラは満開になりましたが、ソメイヨシノは咲き始め。ちなみに都心の桜の開花は3月29日と、昨年の半月遅れだったそうです。

東京・永田町の衆議院第一議員会館へ。仕事(公務)以外で議員会館に入るのは初めてです。 
 玄関を入ったところで主催者の方がパスを配ってくださり、前の人に続いて会場(地下1階の大会議室)はほぼ満席、すごい熱気です。ところが頂いた資料を見て会場を間違えていることに気付き、慌てて1階の国際会議室へ。
 こちらは正直、閑散としています。動員力と組織力の差と言えば、その通りなのですが。
もっともインターネットテレビが2局、中継するそうです。

この日開催されたのは、「今こそ停戦を Cease All Fire Now !『停戦をためらう構造について』シンポジウム5」。
 「ウクライナ・ロシア戦争の停戦をためらう構造MAP」と題したペーパーが配られています。
 右側には「内政干渉になる」「正当性はウクライナにある」「あきらめろとは言えない」「交渉がうまくいくとは思えない」等の「ためらう」意見。
 これらに対して左側には「停戦は幸福でも引き分けではない」「まず命の確保。それから法、正義、領土の順」等の「停戦すべき」との意見。
 そして中央に「停戦のリアルはどっちだ」と大きく記されています。

(写真はクリックすれば拡大表示されます。)

進行役の岡本 厚氏(元「世界」編集長)により開会(文責は全て中田にあります)。
 「個人の集まりとして2022年から始めた5回目のシンポのテーマは『停戦をためらう構造』がテーマ。ガザ・パレスチナとは異なり、ウクライナについては様々な意見がある。
 最近、ローマ法王が白旗を掲げてでも交渉する勇気を持つべきと発言し、ゼレンスキー大統領が3万1千人という戦死者数を公表するなど、大きな動きもあった。
 私たちはウクライナに降伏しろと言ったことはないが、一方、戦い続けろと言うこともできない。双方に『殺すな』と言い続けるだけ。市民が戦争を止めさせるパワーを持つべき」

まず、伊勢崎賢治氏(東京外国大 名誉教授)から。
 「実務家として発言する。ロシアによるウクライナ侵攻により破られた国連法規、人道法を一刻も早く修復することが必要。そのためにいったん戦闘を凍結すべき。これを『移行期正義』という。「正義」の実現には時間がかかる。何よりも、これ以上無辜の民の命が奪われないよう、まずは一日でも早く戦闘を終わらせるべき。
 今のウクライナには戦う総意などない。戦闘継続のためには新たな徴兵が必要となるが、士気は低下している。
 9条を持っている戦後70年の日本の英知を、ウクライナ国民のために使うべき時だ」

羽場美智子氏(青山学園大 名誉教授)は、ズームによる登壇です。
 「ロシアが侵攻する前の2017年、ウクライナは東部の親ロシア派勢力がクレムリンの支援を受けていると国際司法裁判所(ICJ、オランダ)に提訴していた。しかし本年1月、ICJはウクライナの主張の大半を退ける判決を出している。
  他国の裁判所や民間のシンクタンクも、ウクライナ政府による東部の親ロシア派住民への弾圧があったことを認めている。欧州諸国の中には停戦交渉を始めるべきとの声が出てきており、ウクライナ国内でも戦争継続については意見が割れている」

和田春樹氏(東京大 名誉教授)からは、
 「平和運動を行っているグループの間に対立がある。日本共産党は即時停戦に反対。朝日新聞はロシアの排除、即時停戦の双方の記事を掲載。国連総会の3度の決議でも30か国以上は棄権している。
 私たちは双方に武器を置くことを提案しており、そのための会談の再開が必要と考える」

マエキタミヤコさんは、東郷和彦氏(元外交官、政治学者)の「イスタンブール合意に回帰すべき」等とするメッセージを読み上げ。

ジャーナリストの田原総一郎氏からは「国土の2割をロシアに占拠されているという状況の中で、いったいどういうかたちでの停戦を考えているのか」と強い口調で質問。

 これに対して伊勢崎氏は、暫定的な停戦ラインはクリミアや東部の州との間で引くしかないのではないかと発言。
 羽場氏は、改めて住民投票を実施することの必要性を指摘。
 和田氏は、停戦ラインはあくまで仮のもので、国際社会が認めるかどうかは別等の発言。

国会議員でただ一人参加されていた阿部知子衆院議員(立憲民主党)からは
 「人道支援など国民が共有できる言葉を用いながら、世論作りに取り組んでいきたい」等の発言がありました。

最後に伊勢崎氏は、監修された『SDGsで見る現代の戦争』(2021.9、学研)という中学生向けの冊子を紹介。この中で「クリミア危機・ウクライナ東部紛争」についても取り上げていることを紹介しつつ(「国内の分断に、他国が手を出して戦争へ」との副題があります。)、
 「力による現状変更は許されないことは国連憲章2条で高らかにうたわれている一方、11条では係争地におけるマイノリティの自決権についても定めている。国連憲章には2つの正義が規定されている。将来にわたって代理戦争の現場とならないような国づくりが必要」等と発言されました。

 議論の中では、東アジア有事についての発言も。
 南西諸島へのミサイル配備は日本のためにならず、東アジアでは戦争をさせないという状況を市民が作り上げていかなければならない等の主張。
 田原氏からは、アメリカが自国第一主義の傾向を強めている今こそ、きちんとアメリカに言うべきことを言うべきとの発言。

この翌日、上川外相はUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への資金拠出を再開すると表明。
 ガザ・パレスチナとは異なり、ウクライナ問題については現在も様々な意見があり収斂していません。情勢が変化しつつあるなか、一日も早い戦闘停止の実現に向けての動きを注視していきたいと思います。

(参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997