【ほんのさわり278】自然栽培協会 監修『農業と食の選択が未来を変える』

−(一社)自然栽培協会 監修『農業と食の選択が未来を変える』(2023.7、玄文社)−
 https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_90593799/

本書は、医療、食、農業、環境等の幅広い分野の専門家の共著により、自然栽培に関連して、社会の現状や目指すべき目標について整理したものです。
 自然栽培とは、自然の循環を模範とし、持続可能な社会を実現するための多様性を尊重する農法ことで、食生活など様々な問題についても、自らが自然と共にあるという本来の姿を意識し、できることから実践するだけで、シンプルで明るい解決策につながると主張しています。… 続きを読む

【ほんのさわり277】井出留美『あるものでまかなう生活』

−井出留美『あるものでまかなう生活』(2020.10、日経BP)−
 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052600050/

著者は食品ロス問題ジャーナリスト。青年海外協力隊(フィリピン食品加工)、外資系食品会社の広報室長等を経て、東日本大震災時の支援活動をきっかけに、世界の食品ロス削減を目指す(株)0ffice3.11を設立。
 「食品ロス削減推進法」成立にも協力し、2018年には第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)、2020年度には食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞されています。

著者のいう「あるもの」とは、これまでは捨てていた食べものや眠らせていたモノだけではなく、私たち一人ひとりの資質や自分の回りにある自然環境も含むとのこと。そして「あるものでまかなう」暮らしは、楽しく、心が健康でいられるそうです。捨てるくらいなら最初から作らなければ、働く時間も資源もコストも無駄にならず、働き方改革につながるとも。… 続きを読む

【ほんのさわり275】山下惣一『百姓の遺言』

−山下惣一『百姓の遺言』(2023.7、家の光協会)−
 https://www.ienohikari.net/book/9784259547837

何度か書いてきましたが、昨年7月に逝去された山下惣一さん(佐賀・唐津の農民作家)の一連の作品は、私にとって人生の羅針盤ともいえる存在でした。
 本書は、「生涯一百姓」を貫かれた山下さんがエッセイ等のかたちで遺された警鐘や提言をまとめたもので、1979年に地上文学賞を受賞し直木賞候補ともなった小説『減反神社』も収録されています。

山下さんは、時代の流れに翻弄されつつも、減反や自由化、規模拡大を推進する農政に強烈に異議を唱え続けてこられました。そして、少なくとも前半生においては、同時に「消費者」とも闘っていたことが分かるエピソードが収録されています。… 続きを読む

【ほんのさわり273】阮 蔚『世界食料危機』

−阮 蔚『世界食料危機』(2023.9、日経プレミアシリーズ)−
 https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/08/08/00308/

著者(るあん・うえい氏)は中国・湖南省生まれ。上海外国語大学日本語学部を卒業し上智大学大学院で経営学修士を修了。現在は農林中金総合研究所の理事研究員を務めておられます。
 著者は農業調査のために世界を回る中で、アメリカ等の大規模で工業化された農業と、途上国などの零細個人農家の間に埋めがたい格差があることに気付きました。… 続きを読む

【ほんのさわり272】福岡伸一、伊藤亜紗、藤原辰史『ポストコロナの生命哲学』

−福岡伸一、伊藤亜紗、藤原辰史『ポストコロナの生命哲学』(2021.9、集英社新書)−
 https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1085-c/

生物学者、美学者、歴史学者による論考と鼎談により、現在の政治、経済、社会、科学からは「いのち」に対する基本的態度(「生命哲学」)が抜け落ちていることに警鐘を鳴らしている本です。
 「ウィルス同様、自らの身体も制御不能な自然物。ウィルスとは共生するしかない」と断じる生物学者(福岡)、「今こそ自然に耳を研ぎ澄ませて、効率優先の食と農のシステムを見直すチャンス」とする歴史学者(藤原)など、多くの示唆に富む本書ですが、今号のメルマガで特に紹介したいのは、美学者・伊藤亜紗の論考です。

障がいのことを考える時、本書等で伊藤が紹介する「はとバスツアー」のエピソードが、私の頭から離れることはありません。… 続きを読む

【ほんのさわり271】富山和子『水の文化史−4つの川の物語』

−富山和子『水の文化史−4つの川の物語』(2013.8、中公文庫)−
 https://www.chuko.co.jp/ebook/2014/11/515157.html
 (注:電子書籍しか掲載されていませんが、紙の書籍もあります。)

著者は1933年群馬県生まれ。出版社の編集者を経て、水、緑、土などについてユニークかつ先駆的な評論活動を続けて来られた方で、著者が監修された「日本の米カレンダー」は私も毎年愛用していました。
 1980年に初版が刊行された本書は、大規模な水源開発や河川改修が進められつつあった時代に、歴史的な観点を踏まえて、水と人間との関係について根本的な見直しを迫った名著です。… 続きを読む

【ほんのさわり270】堤 未果『ルポ 食が壊れる』

−堤 未果『ルポ 食が壊れるルポ-私たちは何を食べさせられるのか?』(2022.1、文春新書)−
 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613854

著者は東京生まれ。ニューヨーク州立大学で学位を取得した後、国連、証券会社での勤務を経て、現在は国際ジャーナリストとして貧困問題や公共政策等について鋭い警鐘を鳴らし続けています。… 続きを読む

【ほんのさわり269】辻 信一『ナマケモノ教授のムダのてつがく』

−辻 信一『ナマケモノ教授のムダのてつがく-「役に立つ」を超える生き方とは』(2023/1、さくら舎)−
 https://namakemono.shop-pro.jp/?pid=171926845

著者は1952年東京生まれの文化人類学者、NGO「ナマケモノ倶楽部」代表、明治学院大学名誉教授。インドのサティシュ・クマールの思想や南米の民話「ハチドリのひとしずく」を日本に紹介した方としても著名です。

本書で著者は、コロナ禍のなか「不要不急を避けよ」と叫ばれるなど、ムダに対する風当たりが強まり、ムダが忌避・敵視されることで、世の中はずいぶんと生きづらくなっているのではないかと警鐘を鳴らしています。… 続きを読む

【ほんのさわり268】島村菜津『シチリアの奇跡』

−島村菜津『シチリアの奇跡−マフィアからエシカルへ』(2022/12、新潮新書)−
 https://www.shinchosha.co.jp/book/610978/

著者は1963年長崎生まれ、福岡育ちのノンフィクション作家。イタリアのスローフード運動を紹介した『スローフードな人生!』(2000年)は大きな話題となり、私自身も当時、大いに触発されたことを覚えています。
 その著者が10年以上にわたって取材を続けてきたのがイタリアのシチリア島。シチリア島と言えば映画『ゴッドファーザー』で描かれているように、マフィアの本場というイメージがあります。

本書でもマフィアによる凶悪な事件の数々が描かれています。… 続きを読む

【ほんのさわり267】白川真澄著『脱成長のポスト資本主義』

−白川真澄著『脱成長のポスト資本主義』 (2023/4、社会評論社)−
 https://www.shahyo.com/?p=11707

著者は1942年京都市生まれ。かつて60年安保闘争、ベトナム反戦運動、三里塚闘争等に関わり、現在はピープルズ・プラン研究所などで研究・普及、ネットワークづくり等に取り組んでおられます。私も、高坂勝さん(SOSAプロジェクト)と共催されている「脱成長研究会」に何度も参加させて頂くなど、多くの学びを頂いています。
 
 本書によると、現代の世界は深い危機(ウクライナ戦争、新型コロナの流行、気候危機、社会内部の格差の拡大と分断等)のただ中にあり、資本主義という現代の支配的なシステムは行き詰まりを見せているものの、予想以上の強い延命力を持っており、その手直しや自己修正では問題は根本的に解決できないとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり266】谷口吉光 編著『有機農業はこうして広がった』

−谷口吉光 編著『有機農業はこうして広がった』 (2023/2、コモンズ)−
 http://www.commonsonline.co.jp/new_books/2023/04/19/sensho9/

編著者の谷口吉光先生(秋田県立大教授、社会学)によると、「日本では有機農業は広がっていない」との通説は間違っているとのこと。農地面積等の統計でみれば全体の0.6%に過ぎないものの、有機農業を「ひとつの社会現象という物差し」で見ると、様々な形(運動、ビジネス、思想、政策)で広がっていると主張されています。… 続きを読む

【ほんのさわり265】桐村里紗『腸と森の「土」を育てる』

−桐村里紗『腸と森の「土」を育てる−微生物が健康にする人と環境』 (2021/8、光文社新書)−
 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334045562

著者は1980年岡山県生まれの内科医・認定産業医。
 臨床現場では生活習慣病から終末期医療まで幅広い診療経験を積まれると同時に、「ヘルスケア」の再定義など情報発信等に努めておられます。… 続きを読む

【ほんのさわり264】宮台真司『日本の難点』

−宮台真司『日本の難点』 (2009/4、幻冬舎新書)−
 https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/1599

著者は1959年宮城県生まれの社会学者、評論家。
 昨年11月29日夕、教授を務める首都大学東京での講義を終えて1人でキャンパス内を歩いていた際、男に襲われて重傷を負ったとのニュースには驚きましたが、その後、快復されて活動を再開されていると伺い安堵しています。なお、容疑者とみられる男は12月に死亡(自死)が確認されています。… 続きを読む