【ほんのさわり276】梅原 彰 『農業は生き方です』

−梅原 彰 編著『農業は生き方です−ちば発 楽農主義宣言』(2017.2、さざなみ会)−
 http://www.shinjuku-shobo.co.jp/new5-15/html/mybooks/466_agri.html

著者は1950年生まれ、千葉県で農業改良普及事業に30有余年関わってこられました。定年退職後の2013年には、仲間たちと会員制の農業ミニコミ誌「漣(さざなみ)」を発行し、約3年半にわたって続けてこられました。本書は、そのミニコミ誌で紹介された様々な農業者等(後継者、新規参入者、さらには原発被災地からの避難者の方など)の声を採録・整理したものです。

本書では、大都市圏に近いという千葉県の地理的特性もあり、消費者との連携の事例が多く紹介されています。
 例えばチーズケーキやビワ加工品の製造・販売、駅ナカへの直売所の出店、観光農園、酪農教育ファームなど食育への取組みなど。女性が活き活きと活躍されている様子も描かれています。

特に印象に残ったのは、2010年、木更津市で異業種から新規参入し農場(株式会社)を設立したT氏の話。
 経営コンサルタントとしての経験と人脈を活かして、都心の有名料理店や高級百貨店との取引を実現させ、大きな催事やマルシェにも招待されるなどの積極的な経営展開は、メディアにもしばしば取り上げられたそうです。しかし、そのような「半ばミーハー的な発想」だけでは農場は立ち行かなかったそうで、経営方針を基本的に転換することとし、地元の消費者こそを重視することとしたそうです。
 T氏は「都会の富裕層等は『食』に対する知識や情報は豊富に持っているかも知れないが、感度や行動力は、地方の消費者の方が高い。地元の一人ひとりのお母さん達としっかりと向き合って、口コミでじわじわ広がっていく評価の方が、何倍も何十倍も価値がある」と語っておられます。

ちなみに本書の帯には、加藤登紀子さんの「歌う仕事も農業と同じ。自分の力の限り、心の中に歌を注ぎ、育て、繋がっていく!『生き方としての農業』を共有しましょう」との推薦文も掲載されています。
 生産者はもとより、食や農に関心のある消費者の方にも読んで頂きたい本です。私はいつか機会があれば、本書をガイドブックがわりに千葉の観光農園や直売所を回ってみたいと思っています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.276、2023年9月29日(金)[和暦 葉月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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