−井出留美『あるものでまかなう生活』(2020.10、日経BP)−
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/052600050/
著者は食品ロス問題ジャーナリスト。青年海外協力隊(フィリピン食品加工)、外資系食品会社の広報室長等を経て、東日本大震災時の支援活動をきっかけに、世界の食品ロス削減を目指す(株)0ffice3.11を設立。
「食品ロス削減推進法」成立にも協力し、2018年には第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)、2020年度には食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞されています。
著者のいう「あるもの」とは、これまでは捨てていた食べものや眠らせていたモノだけではなく、私たち一人ひとりの資質や自分の回りにある自然環境も含むとのこと。そして「あるものでまかなう」暮らしは、楽しく、心が健康でいられるそうです。捨てるくらいなら最初から作らなければ、働く時間も資源もコストも無駄にならず、働き方改革につながるとも。
食品ロスが大量に発生している要因としては、欠品への過度の恐れや「3分の1ルール」など業界の対応、賞味期限に対する消費者の誤解など、様々なものがあることが解き明かされています。
また、食品ロスの統計には農場段階での廃棄や備蓄食品のロスなどが含まれておらず、ロスはさらに多い可能性があることも指摘しています。
一方で、フランスの食品廃棄物削減法やデンマークの賞味期限切れスーパー、広島の「捨てないパン屋さん」、奈良から広がった「おてらおやつクラブ」など、食品ロス削減のための国内外の様々な取組み事例も紹介されています。
歩いて行ける範囲の個人商店から対話しながら買い物をすることの楽しさ、大切さも強調されています。
著者は、「モノを捨てることが平気な社会」になってしまっている一つの理由は、「つくる人が見えなくなっている」ことにあるとします。「目に見えない」こと(人や自然)への想像力や敬意が欠けているから、痛みもなく平気でモノを捨てているというのです。
さらには、何を選ぶか、何を買うかは私たち消費者が持つ大きな権利・義務であるとし、消費者の小さな一歩が地球の環境を守る大きな一歩につながると強調しています。
なお、本書は著者から恵贈頂いたものです。引用して下さっている「フード・マイレージ」のグラフ等については、事前に出版社の方から丁寧な使用許諾の連絡を頂きました。
以下の著者のサイトには、幅広い活動の様子等が分かりやすく掲載されていますので、ぜひご覧ください。
(参考)
株式会社office 3.11(井出留美さんオフィシャルサイト)
http://www.office311.jp/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.277、2023年10月15日(日)[和暦 長月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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