−(一社)自然栽培協会 監修『農業と食の選択が未来を変える』(2023.7、玄文社)−
https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_90593799/
本書は、医療、食、農業、環境等の幅広い分野の専門家の共著により、自然栽培に関連して、社会の現状や目指すべき目標について整理したものです。
自然栽培とは、自然の循環を模範とし、持続可能な社会を実現するための多様性を尊重する農法ことで、食生活など様々な問題についても、自らが自然と共にあるという本来の姿を意識し、できることから実践するだけで、シンプルで明るい解決策につながると主張しています。
特に強く印象に残ったのが、アル・ケッチァーノ(山形・鶴岡市)オーナーシェフの奥田政行さんの言葉です。
奥田シェフによると、人間に限らず、地球に生きるものは大地に根を張って育ったものを食べるのが基本であり、命の終わりには土や水に還るのが自然な循環のサイクルとのこと。つまり、自然に寄り添う形で育った命を、正しく料理し、感謝していただくことが、人間の再生に、さらには地方の再生、地球の再生へとつながるというのです。
オーシャン・カレント欄で見たとおり「エシカル」とは多くの分野にまたがる複雑な概念です。
しかし、奥田シェフの言葉に接して、究極のエシカルフードとはシンプルに「地球とつながる食材」ということかも知れないという気がしてきました。地球とつながっている食材であれば、自然や地域の環境への負荷も小さいでしょうし、放牧という飼養形態は動物福祉の面でも優れていると思われます。
一方で、現在、脱炭素の観点からもてはやされているプラントベース(植物性)の代替肉や培養肉、あるいはゲノム編集食品等には「地球とのつながり」は希薄と感じざるを得ません。脱炭素はエシカルの重要な要素ですが、それが全てではないと思われます。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.278、2023年10月29日(日)[和暦 長月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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