【ブログ】Present Tree in みやぎ大崎・植樹ツアー(1日目)

2023年11月4日(土)~5日(日)は、 Present Tree in みやぎ大崎 植樹ツアーに参加させて頂きました。3月のくまもと山都以来で、大崎は初めてです。

 9時過ぎにJR東京駅・銀の鈴前に行くと、見慣れた黄緑色のビブスの方たち。今回も主催者・スタッフの皆さんにはお世話になります。
 受け付けてチケットを頂き、7時56分発の東北新幹線はやぶさ103号へ。連休中で駅もホームも混雑、列車も満席です。

左はPresent Tree ホームページ、右は当日の「しおり」より。

9時48分に古川着。改札を出ていったん集合し、今回案内して下さる地元の方たちを紹介して下さいました。
 一行約50名は2台のマイクロバスに分乗し、いよいよ2日間のツアーがスタート。いささか雨が気になる曇り空です。

 車中で主催者(認定NPO法人 環境リレーションズ研究所)の鈴木敦子 理事長からご挨拶(以下、ご発言の部分を含め文責は中田にあります)。
 「2005年1月にスタートしたプレゼントツリーは、森林再生と地域振興をつなげるためのプロジェクト。大切な人への贈り物として木を植えようと呼びかけ、地元との協定に基づいて10年間育てるもの。都会から足を運ぶことで交流も生まれ、森だけではなく、地域を丸ごと元気にしていくことがねらい」
 参加者からも一人ずつ自己紹介。旧知の方もいらっしゃいます。

 参加者のお一人・大和田順子さん(同志社大学政策学部・総合政策科学研究科 教授)から、ご自身も深くかかわられた世界農業遺産「大崎耕土」の概要等について説明を頂きました。

11時前、お手洗い休憩を兼ねて「あ・ら・伊達な道の駅」に到着。すごい人、レジ前には長い行列です。
 元横綱・白鵬関の優勝額が展示されていました。東日本大震災以降、様々な支援活動をされているそうです。伊達政宗の甲冑のレプリカも。 

11時40分頃に大堰頭首工(おおぜき とうしゅこう)に到着。世界農業遺産を構成する要素の一つで、大崎市の方が詳しく説明して下さいました。
 天正十九(1591)年に岩出山に入った伊達政宗が、城の防御用の堀の水と、かんがい・生活用水のために江合川をせき止め、木造の樋門を築いたのが最初とのこと。明治以降にコンクリート造りとなってからも何度も台風等で大きな被害を受けたそうです。

 2005年度に国営事業で改修が完了し、現在も広大な大崎耕土に水を供給しています。

特別に頭首工の上に登らせて頂きました。
 広大な光景が広がっています。広い川幅の脇には魚道も。取水口から取り入れられた水は、用水路をすごい勢いで流れていきます。

 バスに戻って岩出山へ。市の方が同乗して説明して下さいます。水路は一部トンネルとなっており、小水力発電施設も整備されていました。
 車窓からは荒廃した農地も見えます。高齢化等により増えてきているそうですが、400年以上も続いてきた農地が短い期間で放棄されている現実をみると、心が冷え冷えとしてきます。

10分ほどで岩出山に到着。
 城址の崖はブルーシートで覆われています。ここ7年で3回も豪雨の大きな被害を蒙ったとのこと。
 大堰の取水口から続く内川は、ここでは流れは緩やかになっており、岸辺は遊歩道として整備されています。都心ではまだほど遠い紅葉も見事です。

落ち着いた風情の城下町を散策。
 「森泉」の銘柄で知られる森民酒造店で試飲させて頂いた「純米秋しぼり」は爽やかで美味。残念ながら売り切れで、純米原酒を求めさせて頂きました。
 木造の土蔵は「昭和レトロ館」として整備されており、内部を見学できるようです。

 岩出山伊達家が開設した学問所「有備館」と庭園(国指定史跡/名称)も、残念ながら入り口まで。改めてゆっくりと訊ねたいところです。

昼食会場でもある凛菜・上の家(りんさい・うえのいえ、旧千葉家住宅)は、見事な茅葺の建物です。
 「居久根」(いぐね)と呼ばれる屋敷林は、杉、松、竹など様々な樹種で構成されており、冬の強い季節風(やませ)から建物を守るだけではなく、水田害虫の天敵を含む生物多様性を育み、食料や薬草を供給する役割も担っているそうです。
 広大な大崎平野にこんもりと散在する居久根は、独特の美しい景観です。

 高橋博之さんと道代さん(よっちゃん農場)が出迎えて下さいました。
 米や野菜の栽培、「よっちゃんなんばん」など加工品の製造・販売、竹林の整備など幅広く活動されている方です。

高橋さんご夫妻が準備して下さったのは「農家のぬくもり弁当」。
 この日限定の手書きの包装紙には、地元の野菜等をふんだんに使ったメニューの説明が、イラスト入りで詳しく描かれています。三種きのこの銀杏ご飯、金山かぼちゃのサラダ、放し飼い鶏の卵焼きなどなど。
 決まったメニューはなく、その日ごとの(つまり旬の食材だけを使った)完全受注製造のお弁当だそうです。
 わくわくしながらふたを開けると、見た目も鮮やかに様々な食材がぎっしりと詰まっています。思わず顔がほころび、回りの人たちとの会話も弾みます。

 心が暖まるような優しいお弁当でした。ご馳走様でした。

食事の後は、大崎氏の方から「大崎耕土・世界農業遺産」の説明がありました。

 世界農業遺産(GIAHS)とは、世界的にも重要な農林水産業を営む地域(伝統的な農林水産業と、それに伴い発展してきた文化や景観などのシステム)を、国際連合食糧農業機関(FAO)が認定し“生きた遺産”として次世代につないでいく取組みのこと。
 大崎地域は「やませ」による冷害や渇水・洪水など厳しい自然条件の下、巧みな伝統的水管理システム(取水堰、用排水路、ため池等)を形成し、国内有数の水田農業地帯として発展。2017年に世界農業遺産に認定されています。

 囲炉裏には赤く炭火が燃えていました。 

右の写真は「大崎耕土・世界農業遺産」のウェブサイトから。

食事の後は、屋敷の裏でバイオ竹炭作り体験です。
 山から伐り出して乾燥させていた竹を1mほどの長さに切り、さらに縦に2つに割って窯にくべていきます。子どもも笑顔で竹運びなどを体験。やがて炎が高く立ち上ってきました。

蕪栗沼に到着したのは16時近く。国の天然記念物であるマガンの越冬地で、2008年には周辺の水田と共にラムサール条約に指定されています。
 NPO 蕪栗ぬまっこくらぶの高橋のぞみさんが、詳しく説明して下さいました。

 大きな鳴き声に驚いて空を見上げると、多くのマガンが隊列をなして次々と飛来してきます。鳥同士で会話しているのだそうです。 

水面が見えるところまで来ました。
 雲が切れて薄赤く染まった西の空を背景に、おびただしい数の鳥の姿があります。圧倒されました。年間では約7万羽がここをねぐらとしているとのこと。

 すでに水面の相当部分は鳥で埋まっているのですが、さらに次々と飛来し、水面のわずかなスペースをめがけて錐もみ状態で急降下していきます(お菓子の「落雁」の言葉の由来となっているとの説も)。貸して下さった双眼鏡をのぞくと、一段の迫力です。
 白鳥やサギの姿も見えます。

 マガンの映像は大和田先生の講演会その他で何度か見てきましたが、実際に見ると迫力が全く違います。夜明け前には一斉に飛び立つ姿も見られるとのこと。
 このような景観がみられるのも、地域の環境と調和した水管理システムの賜物です。

17時頃、安心市場「さくらっこ」へ。
 伸萌ふゆみずたんぼ生産組合の西澤誠弘さんが出迎えて下さいました。ハッピーボタニカルの山下のぞみさんは、素敵な天然藍染めの雑貨を販売されています。ご自身が栽培された藍の花も展示して下さっていました。

隣接する加護坊温泉さくらの湯(気持ちのいい源泉、露天風呂など)に入浴後、ロマン館で夕食交流会。

鈴木理事長からの開会挨拶。2014年に震災からの復興を目指してスタートした大崎での Present Tree の取組みの概要についても説明がありました。
 駆けつけて下さった伊藤康志 大崎市長からは、地元愛たっぷりの熱いご挨拶を頂きました。

一ノ蔵 特別純米生酒「ふゆみずたんぼ」で乾杯。他にも様々な日本酒を用意して下さっています。
 宮城野ポークの豚しゃぶ、地元産大豆を使った加護坊豆腐のひややっこ、地場産野菜を使った漬物や小鉢、それにおにぎりも。
 途中、西澤さん、山下さん、高橋さんからはそれぞれの取組みの説明も頂きました。

 美味しいお酒と料理で満腹です。地元の皆様、ご馳走様でした。
 古川駅前のホテル(ねぐら)に向かうバスの中でうとうと。鈴木理事長の「本番(植樹)は明日ですからね」との念押しの声が聞こえたような、聞こえなかったような。
 (2日目に続く。)