【ほんのさわり】上間陽子『海をあげる』

−上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2020.10)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815583/

著者は1972年沖縄生まれ。米海兵隊・普天間基地の近くに住みながら、幼い頃から性虐待を受けたり、若年出産をした女性等の調査を続けておられる琉球大学教授です。
 その著者が「目の前の日々」を書き記したエッセイ集は、なかなかに重たい内容を含んでいます。

前夫との離婚話が進む失意の中、友人が持たせてくれた粕汁を泣きながら食べたこと(「美味しいごはん」)。小学生の頃から父親から性暴力を受け、今は風俗で働く17歳の母親とのこと(「何も書かない」)、子どもの頃は大嫌いだった祖母との別れ(「空を駆ける」)など。

東京の大学院在学中は「軍機の音が聞こえない」ことに驚き、1995年に小学生が米兵に強姦された事件を受けた抗議集会のニュースに接した指導教員の一人が「すごいね、沖縄。行けばよかった」と発した言葉には、強い怒りを感じます。
 「あんたの暮らす東京で抗議集会をやれ。沖縄に基地を押し付けている加害者の一人は誰なのか」
 言うべきだった言葉は、今も著者のなかに沈んでいるそうです。

そして、幼い娘の発熱に悩ませられたりしながら辺野古の住民集会に通う著者は、本書の最後に、「この海をひとりで抱えることはもうできない」と、絶望を読者に託すのです。
 私には、その言葉を受け止める覚悟があるでしょうか。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
No.222、2021年7月24日(土)[和暦 水無月十五日]
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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