【豆知識259】「物価の優等生」と規模拡大

飼料価格の高騰等を背景に、「物価の優等生」とされる鶏卵の価格が上昇しています。リンク先の折れ線グラフは、消費者物価指数(1970年=100)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/259_keiran.pdf

消費者物価指数(総合)は長期的に上昇基調で推移しましたが、2000年代に入ってからはほぼ横ばいとなっています(1970年比3.2倍)。食料全体もほぼ同様の動きとなっていますが、近年は総合を上回って推移しています(同3.5倍)。
 一方、鶏卵価格は長期的にほとんど上昇しておらず、まさに「物価の優等生」であったことが見て取れます。

棒グラフは、農家(経営体)1戸当たりの飼養羽数の推移を示したものです。1970年においては70羽程度(300羽未満の生産者を含む。)だったのが、2021年には約7万5千羽(1000羽以上の生産者のみ)と、実に1000倍以上の規模拡大が実現しています。
 このように採卵養鶏は、日本の農業の中で最も構造改革が進展 (規模拡大が実現) した「優等生」で、その結果、鶏卵価格も相対的に抑えられてきたのです。

これは、生産者の努力はもとより、稲作等に比べて土地の制約が少ないこと、生産コストの約半分を占める飼料を安価な輸入穀物にほぼ全面的に依存することで実現できたものです。
 しかしながら、気候変動による世界的な不作や感染症の拡大、ロシアのウクライナ侵攻等により、飼料等のコストは大きく上昇しています。また、フード・マイレージの観点からは、飼料穀物の大量・長距離輸送は地球環境に大きな負荷を与えており、持続可能とは言えません。さらには、アニマルウェルフェア(動物福祉)など、日本ではこれまであまり配慮されてこなかったコスト上昇要因が顕在化してくることも予想されます。

ところで先日の夕方、 NHKテレビ(首都圏ローカル番組)のトップニュースは鶏卵価格の上昇でしたが、続いて放映されたのは卵を減らしても美味しいレシピの紹介でした。消費者が節約したいと思うのは当然のことながら、以上述べたような様々な状況をみると、消費者も鶏卵の値上げ(コスト上昇)の一部を担う心づもりと行動が必要と考えます。

データの出典:
 総務省統計局「消費者物価指数」(2020年基準長期時系列データ)、農林水産省統計部「畜産統計調査」(長期累年統計)から作成。
 https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan/index.html#l

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.259、2023年1月22日(金)[和暦 睦月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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