【オーシャン・カレント274】家庭備蓄ポータル(農水省HP)

各地で大規模な災害が頻発するなか、食品の家庭備蓄の一層の普及を図ることを目的として様々な情報を集約したポータルサイトです。
 掲載されている「災害時に備えた食品ストックガイド」には、最低3日〜1週間分の備蓄が望ましいとしており、例えば1週間分・大人2人の場合、米は2kg×2袋、カップめん類6個、缶詰18缶等のほか、たまねぎ・じゃがいも等の日持ちする野菜類、煮干し・のり・乾燥わかめ等が例示されています。
 また、要配慮者(乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方)向け、単身者向けのガイドも公開されています。

本ガイドでは、ローリングストック(好みの食品を普段から多めに買い置きし、賞味期限の近いものから順次消費すること)等により、日常の一部として無理なく楽しみながら備蓄していくことの重要性が強調されていますが、1週間分の備蓄食料を日頃から備えることは簡単ではないことが分かります。
 しかし、東京圏への人口等の一極集中が進むなかで首都直下地震が想定される現在、少なくとも東京圏の居住者にとっては、家庭での食料備蓄は欠かせないものと思われます。… 続きを読む

【オーシャン・カレント273】スプーン(平和祈念展示資料館)

去る8月13日(日)、東京・新宿にある平和祈念展示資料館を初めて訪ねてみました。
 企画展「43人が描く空想未来漫画『2100年8月15日』」と、漫画を描くワークショップが開催中(10月1日まで)で、小さな子どもを連れた家族連れ等が多数来場していました。
 シベリアの収容所で乏しい黒パンを切り分けている場面を描いたジオラマは、抑留者たち全員の目がその手元を見つめています。来場者の男の子も、真剣な表情で眺めていました。

特に印象に残ったのが、数多くのスプーンなど食器の展示でした。
 抑留者たちは、いつの日か故郷に帰り、腹いっぱい食べることを信じて食器を手作りすることで、明日への生きる望みをつないでいたそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント272】NPO法人ユメソダテ(東京・世田谷区)

2018年に設立されたユメソダテの理念は、社会がユメ(夢)を育て、ユメが人を育て、人が社会を照らす循環づくりです。
 知的・発達障がいのある方(当事者)の認知発達を促すフォイヤーシュタイン教材やブレインジム(体操)の体験会、障がいのある方のための「お買い物体験講座」、千葉大学とコラボしてのニコニコみかんソースの製造・販売など、幅広い活動をされています。
 また、2022年10月に開園した夢育て農園(世田谷区)では、障がいのある方々を対象に、畑作業をしながら認知・身体機能を高める「人を育てる畑コース」を設け、毎週木曜日には支援者の方々とともに認知身体発達の取組みと併せて畑作業を行っています。また、順天堂大学等と連携し、畑作業等が心身の状態を改善していることについてのエビデンスの収集・発表も行っています。

理事長の前川哲弥さんは1962年生まれ。農林水産省、経済協力開発機構(OECD)勤務を経て、現在は家業の精密機器運送業を営みつつNPO活動に勤しんでおられます。
 知的障がいのあるご子息の将来の自立に不安を感じていた前川さんは、障がいのある当事者の方々にお話を伺ったそうです。すると、何人かの方が「ユメ」(希望、目標など)を生き生きと語られたとのこと。「社会がユメを育て、ユメが人を育てる」ことに気づき、仲間とともにNPOを立ち上げたのだそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント271】通潤橋(熊本・山都町)

通潤橋と白糸台地の棚田(筆者撮影、2023.,4/9, 22.3/27)

通潤橋(つうじゅんきょう)は、熊本県のほぼ中央、山都町(やまとちょう)にある日本最大級の石造りアーチ橋で、豪快な放水などで観光スポットとしても有名です。
 実は、この橋は道路ではありません。通潤用水と呼ばれる農業用水路の重要な部分を構成する「水路橋」で、橋の内部には農業用水を通すための頑丈な石管が設けられています。

緑川等が削り取った深い谷に囲まれた白糸台地は、永く水や食料の不足に悩まされてきました。幕末近くの嘉永年間、惣庄屋の布田保之助(ふた・やすのすけ)は、その白糸台地に農業・生活用水を供給するための用水路の建設を熊本藩に申し出ます。当時の熊本藩は行財政改革を進めており、大規模な土木工事も地方・民間に移譲していたのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント270】今関麻子さん(農家支援キッチンカー“eat for”)

写真は2023.6/17、東京・麹町にて。

今関麻子(いまぜき・あさこ)さんは千葉市のご出身。小学生の頃から環境や食の問題に関心があり、千葉大学食料資源経済学科在学中には、仲間と学生居酒屋「あるばか」を共同出資でオープンされました(私も何度か伺いました。今関さん達の卒業後も何代か続いていましたが、残念ながら2019年に閉店)。

卒業後、生協での品質管理業務や食育プログラムを扱うヘルスケア等に携わっておられましたが、2019年、台風19号により生産者が大きな被害を受けた様子を目にして「いま行動しなければ」と決意し、翌年、「食べることが社会貢献に。」をコンセプトとする農家支援キッチンカー“eat for”を起業されたのです。

現在、東京を中心に、自然災害等で市場に出荷できなくなった規格外野菜等を使ったメニューを提供されています(出店スケジュール、メニュー等は添付を参照)。一食につき5円のほか、車体広告の掲載料が生産者に寄付されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント266】オーガニックビレッジ

農林水産省HP「オーガニックビレッジ」のページより。

オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組みを進める市町村のことです。
 農林水産省は「みどり戦略」を踏まえ、2021年度補正予算から交付金による支援を開始し、2025年までに100市町村で先進的なモデル地区「オーガニックビレッジ」を創出することとしています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント264】地域交流広場ぱうぜ(東京・高島平)

2023年3月19日(土)に開催されたECOM(NPOエココミュニケーションセンター)30周年ワークショップでは、多くの新しい出会いもありました。
 「小さなアンテナショップネットワーク」とは、埼玉・小川町やときがわ町の有機野菜生産者と都会のアンテナショップ(販売・情報普及者)をつなぐネットワークで、ECOMの森良代表がご自身で野菜を仕入れて届けているそうです。

 そのアンテナショップの一つが、東京・高島平団地の地域交流広場ぱうぜ。「ぱうぜ」とは、音楽用語で休止のことだそうです。運営者の石田ゆかりさんとは、偶然、ワークショップで同じテーブルになったこともあり、名刺交換させて頂きました。

 石田さんのお話をもっと伺いたいと思ってお訪ねしたのは、3月27日(月)夕方のこと。都営地下鉄三田線・新高島平駅の近く、桜並木に沿った団地の1階は商店街になって賑わっており、その一画にぱうぜはありました。
 改めて石田さんからお話を伺うと、野菜(鹿児島・出水市や山形・庄内の野菜も取り扱っておられます)の販売は活動のごく一部とのこと。他にも夕方キッチン(おにぎり、野菜スープ等)、健康づくり体操、スマホ&パソコン教室、コミュニティビジネス何でも相談会など、毎日のように多彩なイベントを開催されています。空いている時間は、レンタルスペースとして貸し出しも行っているそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント263】フランスのエガリム法

[出典]食料・農業・農村政策審議会 第2回基本法検証部会(2022年11月2日)資料(p.21にエガリム法の概要) 

食料・農業・農村基本法の見直し作業を行っている審議会(検証部会)でも議論されているように、フランスで2018年に公布された「エガリム(Egalim)法」が注目されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント261】ヨコハマライブラリー スクール(横浜市立図書館)

先にみたように、近年、書店数が減少するなかで、公共図書館数はほぼ一貫して増加しており(文部科学省「社会教育基本調査」)、図書館の役割は相対的に大きくなっているとも考えられます。

横浜市図書館が市民のために提供している「学ぶ楽しみの場」が、ヨコハマライブラリースクールです。
 「人と出会い、本と出合い、知識を深める「学び」を図書館から」をコンセプトに、専門家から最先端の知識を学ぶ講座や、生活上の課題解決に役立つ知識を学ぶ講座など幅広いテーマで開催されており、司書によるテーマに関連する図書の紹介もあります。

2022年度の第7回ヨコハマライブラリースクールでは、フード・マイレージについてお話させて頂きます。
 パンデミックやウクライナ危機により世界的に食料危機が顕在化するなか、例えば地産地消など、私たちに何ができるかについて参加者の皆さんとともに考えてみたいと思います。ご関心のある方の参加をお待ちしています。… 続きを読む