【ブログ】「おいしい未来をつくる読書会 #1」など

去る2024年7月19日(金)午後は、全国町村会主催・地域農政未来塾において、農林水産省統計部ホームページの見方・使い方等について説明させて頂きました(資料はこちら)。
 主任講師のお一人、榊田みどりさん(農業ジャーナリスト、明治大学客員教授)が、今年もお声掛けして下さったのです。今年の榊田ゼミの受講生は、北海道から中国地方までの町村の5名の職員の方。
 ともすれば地味で分かりにくいと思われている統計を、より多くの方に活用して頂ける一助となればと、有難い機会です。

終了後は、今年も東京大学キャンパス内にあるアブルボアで、講師と塾生全体による懇親会。
 富山・立山町の受講者の方が、珍しい(高級)日本酒を差し入れて下さいました。ご馳走様でした!

7月21日(日)は、2つの「読書会」に参加。
 午前中は11時から東京・国立の老舗カフェで開催された「シン・哲学カフェ」。オルテガ『大衆の反逆』を課題本とした3回シリーズの2回目です。
 参加者は6名と少人数ですが博識な方ばかり。課題本の歴史的な背景や民主主義の現状等について談論風発、しばしば脱線も。私は中島岳志『真のリベラルを取り戻せ-オルテガ・大衆の反逆』(NHK 100分で名著ブックス)しか読んでいませんでしたが、大いに勉強になりました。

話し合いの中でとりわけ印象に残ったのは、「生きている死者」というキーワード。
 これまでの社会を支えてきた「死者」は、身体が失われたあとも私たちのそばにいて見守ってくれているという感覚。これがあれば、現在の社会で(生きている人のなかで)仮に多数派を占めても、勝手に何でも決めたり、変えたりしていいことにはならないということ。柳田国男の「ご先祖になる」という考えにも共通しているそうです。

同日20時からは、第1回「おいしい未来をつくる読書会」にオンライン参加。
 霞ヶ関ばたけでのご講演を聴きに行ったのをきっかけに知り合った手島祐子さん(管理栄養士、(株)三祐コンサルタンツ)にお声掛け頂き、私も3名の運営委員の一人として関わらせて頂くことになりました。

 この読書会は、1冊の課題本を素材に自分たちの食の未来についてディスカッションし、相互に学びながら自らの行動に反映させ、さらに社会的なムーブメントにつなげていくことを目指すもの。今後、月1回のペースで開催していく予定です。

右の写真は第203回「霞ヶ関ばたけ」より。

この日の課題本は、ジェシカ・ファン『食卓から地球を変える あなたと未来をつなぐフードシステム』。手島さんが翻訳されたものです。

 この日のスケジュール等の説明に続き、10名ほどの参加者一人ひとりから自己紹介。
 食品メーカー勤務の方、生協で環境問題に携わられている方、ライターの方、看護師として障がい者や移民の支援をされている方、JICA海外協力隊でフィジーに行かれる予定の方(環境教育)など。仲間と量り売りのお店を立ち上げられた方も。

 手島さん(翻訳者ご自身)から、課題本の内容について簡単な紹介。なお、参加者には事前に課題本を読んでおくようお願いしてあります。
 これを受けて3~4名のグループに分かれて「食事と地球環境がつながっていることを知ってどのような印象を受けたか」等をテーマに1回目のディスカッションを行い、全員でその内容を共有しました。

 「食という切り口で、全部がつながっていることが理解できた」「自分の日々の食べる行為が地球環境に大きな影響及ぼしているという当たり前のことに、改めて気づかされた」「しかし多くの人は、食事と環境問題とのかかわりについて知る機会がないのでは」等の意見。
 「CO2だけではなく、輸入食品に使われている農薬など安全性も気になる」との発言も。

続いて、「自然環境にも良い食事のために実践していること。さらにどのようなできるか。何がハードルになるか」等をテーマに2回目のディスカッションと共有タイム。

 「なるべく自炊している」「地元の直売所を利用している」「産地や生産者のことが分かる生協を利用している」「少しでも市民農園等で野菜を作ってみることで、食べものや生産者の有難さが分かる」等の実践報告。 
 「自分の回りには農地もない」との発言には「都市部でも、ベランダ農園や屋上菜園で農に触れることはできる」等の意見も。

 「時々、海釣りが趣味の友人が食事会に誘ってくれるが、みんなで分かち合う食事は本当に美味しい。子ども達にも食べることは楽しいという原体験が必要」と体験談を紹介して下さった方。
 「子ども食堂でも、多世代が集まって食事することで人の輪が広がっていく。食を介してコミュニケーションが広がっていく」「食という身近なところからできることがあると思うと、可能性を感じる」等の感想を述べられた方も。

 さらに「我慢しないことが重要。我慢すると持続可能ではなくなる。楽しく快適な食生活とトレードオフにしないことが大切では」との意見も出されました。

 私からは「ご飯一杯の値段」のポスターを共有しつつ、(自分も含めて)消費者は安いものばかり求めているが、日本農業を将来にわたって持続可能なものとするためには、消費者も応分の負担をしていくことが必要等と意見を述べさせて頂きました。

 特に結論は取りまとめられませんでしたが、「小さな一歩が必要」「周りの人に伝えていくことが重要」等については、共通の認識が得られたようです。

最後に次回の紹介。
 第2回は8月25日(日)20時から、課題本はアリス・ウォータース等『スローフード宣言 食べることは生きること 』、コーディネータはもう一人の運営委員・しのさんです。
 なお、3回目(9月)には拙著『フード・マイレージ』を取り上げて頂く予定です。
 手島さんからはLINEオープンチャット「食べ物部」の紹介もありました。幸せな未来に向けた様々な情報を共有するゆるやかなネットワークです。

 予定の21時30分を回り、読書会は終了。
 時間のある方には残って頂き、22時頃まで「放課後」の雑談。参加者みんなの自由闊達な意見交換が、この読書会の目玉となりそうです。私自身も多くの気づきと学びを頂くことができました。
 参加者の皆さま、有難うございました。次回もお目に掛かれるのを楽しみにしています。

 (ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997