-イヴァン・イリイチ著、渡辺京二/梨佐翻訳『コンヴィヴィアリティのための道具』(2015/10、ちくま学芸文庫)-
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480096883/
著者は1926年、オーストリアに生まれ、神学、哲学、歴史学を学びカトリック司祭として活動した後、メキシコを拠点に産業社会への批判を展開した思想家です。
1973年に刊行された本書は、その後のエコロジー運動や脱成長論の思想的な源泉の一つと位置づけられています。
本書のキーワード「コンヴィヴィアル」(convivial)は、一般的に耳に馴染みはなく、書くのも発音するのも大変です。
著者は「尊敬する友人たちの忠告に逆らって」、あえてこの言葉を用いたとのこと(「はじめに」)。というのは、現代英語ではコンヴィヴィアルとは「宴会気分」といった意味があるためです(本書は最初、英語版として刊行されました)。
著者が意図するところは、この意味とは異なります。
肥大化する産業社会においては、道具(技術や制度)が人間を支配するようになり、人々は選択権を有しない消費者の地位におとしめられている現状にあります。そうではなく、人間が道具をコントロールし、他者や自然との関係性の中で、その創造性を最大限に発揮できる理想社会を、コンヴィヴィアルという言葉で表しているのです。
生産性至上主義の正反対にある言葉として位置づけています。
また、本来(ラテン語等)は「節制ある楽しみ」「優雅な好奇心」といった意味もあるとのこと。ちなみに渡辺京二は「自立共生」という訳語を当てています。
多くの示唆に富んだ本書ですが、必ずしも読みやすい内容ではありません。
現在、毎週末に都心の某大学で開かれて入る読書会に参加させて頂くことで、少しずつでも自分なりに理解を深めていきたいと思っています。