【ブログ】Present Tree in くまもと山都 2024(2日目)

前回から続く。)
 願いが通じて2日目(2024年4月7日(日))は打って変わっての好天、という訳にはいきませんでした。
 いつ雨が落ちてくるか、天気予報をチェックしながらの行動になりそうです。

 8時20分に木地屋(五ケ瀬町)を出発、通潤橋でのトイレ休憩を経て白糸サテライトに到着したのは9時30分頃。廃校になった小学校の校舎を活用したコーワーキング/交流施設です。
 ここから、一昨日にお世話になったHさんもご主人とともに合流。

 いよいよ「本番」の植樹です。
 まず、鈴木理事長から「Present Tree inくまもと山都」は昨年、環境省により自然共生サイト(民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域)に認定された等の紹介。

続いて、地元の有機農家・下田美鈴さんがマイクを取られました。
 「白糸大地で農業ができているのは、170年前に通潤橋を作ってくれた布田保之助というという先人のおかげ。偉業を讃え伝えるための絵本も作っている。
 わが家は150年続いているが、かつて120軒あった専業農家は今は3軒だけ。伐採されたままの山も増えている。私も山を何とかしたいと思い悩んでいたところ、プレゼントツリーの方から一緒にやりませんかと電話があった時には、まさに神様の声のように感じた。そこで他の11軒の地権者を回り、プレゼントツリーに取り組むこととなった」

「40年前から有機農業を行っている。農薬を使っていないため、棚田や水路には絶滅危惧種を含む様々な生き物が生息している。その自然のおかげで私たちは美味しいご飯を食べられている。この自然を都会の方たちと一緒になって守っていきたい」

下田さんの先導で植栽地に向かいます。足下には見事な棚田の光景。丘の上には茶畑も。

 第一回(3年前)協定エリアに植栽した苗木は、無事に人の背丈ほどに生長していました。鹿の食害を防ぐための柵も設けられています。
 道端にはワラビなどの山菜、マムシ草などの珍しい野草。色鮮やかなカエデの若葉も。

やがて今年の植栽地に到着。
 一面の菜の花は、この日に合わせて下田さんが種をまいてくださったものだそうです。

10時過ぎから開会式。
 鈴木理事長からの第一声は「ただいま戻りました~」。
 続いて「今年はニューフェイスが多く、関係人口の広がりに期待。さっそく何人もの方がさっ里親になって下さっている。今日は丁寧に植樹し、これから10年間通い詰めたい」等の挨拶。
 続いて副町長と地権者代表の方からも挨拶を頂きました。
 保全管理を担ってくださる緑川森林組合の皆様、地元女性グループの皆様、大和町役場の職員の方の紹介。地元高校の林業科学科の生徒さんたちの姿も。

毎回、指導して下さる西野文貴先生((株)グリーンエルム)は急に体調を崩されたそうで、お姿が見えず残念でした。
 今回もこの地域の気候風土に合わせたシイ、カシ、ヤマザクラ、モミジなど広葉樹30種類、400本の苗木を準備して下さっています。

 5班に分かれ、森林組合の方から植樹方法を教えて頂いたのち、クワを手に思い思いに散っていきます。
 植樹する場所は、あらかじめリボンのついた竹が目印としてさされています。この脇をクワで穴を掘り、苗木を入れて土をかぶせ、最後はしっかりと足で踏み固めます。

昨年の大崎(土中の木の根っこやカヤが大量)に比べると土は柔らかく、作業は楽です。
 人数も多かったせいか、予定していた区域は早めに終了。隣の区域に移動して植樹を続けました。

12時前に終了。
 閉会式では鈴木理事長から地元の方たちに「有難うございました。これから10年間、よろしくお願いします」との言葉。
 白糸サテライトに向かい始めると、細かな雨が落ちてきました。作業中は降らず、植えたばかりの苗木には水が与えられるというグッドタイミングです。

 今日植えた苗木が来年、再来年、あるいは10年後に、どれほど生長しているかが今から楽しみです。

白糸サテライトでは、下田美鈴さん・円美(まろみ)さん母娘など、何人もの方が昼食を準備して待っていて下さいました。
 ワラビなどの山菜は美鈴さんご自身が採ってきて下さったそうです。タケノコやニンジン、大豆などの煮物、ちらしずし、手作り味噌の汁ものなど(一昨年は、この場所で味噌作り体験をさせて頂きました)。希望者はアイスクリームやアイスコーヒーも。

 円美さんは、ご自身の都会暮らしの経験を踏まえて、山都町がいかに食が豊かな地であるかという話をして下さいました。山都町のカロリーベース食料自給率は300%程度だそうです(ちなみに日本は38%、東京都は0%)。

 会場では、地元の方との交流&販売会も。
 しもだ茶園の有機釜炒り茶、なかはた農園のいちごとジャム、ARBOLの焼き菓子などを、多くの参加者が求めておられました。

昼食後は、まず、地元で自然観察会を開催されている藤吉先生からの講演。
 子どもが主役の観察会を40年近く続けておられるそうで、この地域に様々な珍しい生き物がいるのは農薬を使っていないためとのこと。「この豊かな自然は未来からの預かりもの」との言葉が印象的に残りました。

 続いて寺崎さんから、九州脊梁山地の魅力等についての報告。西日本には珍しい貴重な原生林を残していきたいと訴えられました。
 寺崎さんはツアーの全行程を通じて山都町の「自慢話」もたっぷり聞かせて下さり、強い地元愛がびんびんと伝わってきました。

その後は自家用車組と別れて(Hさんご夫妻には大変お世話になり、有難うございました。)空港へ向かいます。
 途中、空港近くの温泉施設で入浴したのち17時10分発のJAL便に搭乗。やはり満席。順調に19時前に羽田空港に着き、リムジンバスで所沢を経由で帰宅。

 山都町のツアーは今回で3回目でしたが、毎回、プログラムを工夫して下さっていて飽きることはありません。特に文楽鑑賞や自然観察会の話は、今回が初めてでした。
 また、今回は現地集合/解散を選択できるようにして下さったため、1日早く熊本入りして熊本城の見学や友人たちとの会食もできました。

 主催者・スタッフの皆様、最後の空港までフルアテンドして下さった寺崎さん、下田美鈴さんはじめ地元の皆様、それに素晴らしい体験を共有できた参加者の皆さんに感謝です。

最後に、私にとっての今回のツアーの大きな成果の一つ。
 有機農業は生物多様性の維持・保全の面でも有効であるという理屈は、頭では理解していたものの、実際に現地の方から話を伺い、棚田など現地の様子を見学できたことで、すとんと理解することができました。
 それでは、なぜ山都町ではこれほど有機農業が盛んに行われてきたのか。
 国は2050年までに有機農業の取組み面積を100万ha(全農地面積の25%)にまで拡大するという目標を公表していますが、現状(0.6%)に比べるとあまりに意欲的過ぎるのではとも言われています。
 しかし山都町のような地域が全国に広がっていけば、目標達成も可能かもしれません。まだまだ山都町から学ぶことは多そうです。

【主催者による公式レポート(2日目)はこちら。】

(参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997