【ブログ】シンポジウム「関東にFEC自給圏を」

2019年2月11日(月)は建国記念「の」日。
 「建国記念日」ではなく「の」が入っているのは、この日に初代・神武天皇が即位したとの日本書紀の記述は必ずしも歴史的事実として明らかではないため、「建国をしのぶ」祝日とされたためとのこと。

数日来の雪は落ちていませんが、北風が冷たい曇り空の下、東京・中野の中野サンプラザへ。
 昔と変わらない威容を誇っていますが、現在、再整備計画の検討が進められているそうです。
 エントランスの前には、コンサートを待つ多くの若い人たちの行列。

この日13時から7階の研修室で開催されたのは「関東にfec自給圏を~地域資源を活用する知恵と人を」と題するシンポジウム。
 主催であるNPO法人エコ・コミュニケーションセンター(ECOM)の創立25周年記念事業とのこと。

冒頭、森良代表から
 「ECOM設立当初は環境教育に関わる活動が中心だったが、次第に地域づくりに取り組む人達のエンパワーメントに重点を移した。
 今日は、関東の各地で地域づくりに取り組む方々から報告を頂いて経験・ノウハウを共有し、会場の参加者を含め、関東におけるFEC(Food、Energy、Care)の自給圏ネットワーク作りのきっかけとしたい」等の挨拶。

続いて環境省・中井政策統括官から「つなげよう支えよう、森里川海プロジェクト」の紹介も含めた挨拶。

プログラムの最初は、関東各地の取組事例の報告。
 10地域から15分ごとと、なかなかタイトなスケジュールです。

最初は冨澤太郎さん(やまはた農園、山梨・上野原市西原)から「『雑穀の村』の復活と雑穀街道」について報告。
 クラウドファンディングも活用しつつ、都市住民等を巻き込んで伝統作物を伝承している取組みについて報告がありました。

続いて、黒田志保さん(ワーカーズコープ連合会・あぐり~んTokyo、東京・大田区)から「廃食油から燃料を」。
 協働事業によるバイオディーゼル燃料の製造販売の取組みに加え、復興支援で宮城で栽培した米を使い醸造した日本酒の紹介も。

中野岳春さん(NPO中野環境市民の会、東京・中野区)からは「中野のまちのでんきとごはん」。
 全国市区町村で人口密度が第2位という中野区で取り組んでいるワークショップの模様、「勝手に姉妹都市・ミツバチ協定」等の取組みについて紹介がありました。

鈴木亨さん(ユギムラ牧場、東京・八王子)からは「多摩丘陵のおっさんの環境福祉」。
 多摩ニュータウン開発(強制買収)が進められる中、農地と田園風景を守ってきた経緯等について報告がありました。社会福祉法人の設立、新規就農者の受け入れ等も。

高橋優子さん(NPO生活工房つばさ游、埼玉・小川町)からは「有機農業を支える企業CSA(買い取り支援)」と題する報告。
 有機の里を支えるための生産者、市民、企業等の連携の様子について紹介がありました。ポイントは「提携三原則」(全量買取、即金、再生産可能価格)とのこと。

森さんが報告のポイントをホワイトボードに書き起こしていきます。
 2枚の大きなホワイトボードは、たちまちカラフルな文字で一杯になっていきます。

ここで15分間の休憩。会場の後方では各団体や参加者によるパネル展示等が行われています。
 私も17日の主催イベント「空が青いからお寿司を巻くんです」のチラシを置かせてもらいました。

休憩後の一番手は、この日の報告者の中で最も遠方から来られた松林建さん(南牧村に学ぶ会、群馬・南牧村)。
 「温泉復活で交流としごと」と題して、ご自身を含む移住者が中心となって温泉施設を建てた取組等について紹介されました。若者が定住できる雇用創出を目指しているとのこと。

ご自身も小さな子どもがおられるという栃木・鹿沼市の福田大樹さん(一本杉農園)からは「学校給食の地産地消で子どもたちの未来にYES!」と題する報告。
 市の事業を活用した学校給食への地元食材活用の取組みに当たっては、地域のみんなが同じ方向に向かえるような目標設定が重要という話が印象的でした。

茨城・水戸市の萩谷慎一さん(みと市民プロジェクト)からは「まちづくりの力を生み出す相互のエンパワメント」と題する報告。
 ワークショップ等を通じて、思いをかたちにしていくプレイヤー(市民)を手助けしていく取組みとのこと。

千葉・長南町の千葉美賀子さん((一社)もりびと)からは、里山林業の活性化の取組(ツリークライミング、体験イベント、オリジナル商品の開発等)について報告がありました。
 今後は多地域での連携を強化していきたいとのこと。

東京・日野市の伊藤勲さん(NPOやまぼうし)からは「農福連携と雑穀アンテナショップの推進」と題して報告。
 やまぼうしのミッションは、障がい者を含めて「共に生きている」を実感できるまちづくり。今後は山梨・上野原市の雑穀プロジェクト(第1報告)との連携も考えておられるようです。

第Ⅱ部「まちとつながる」というセッションでは、横山知代さん(東京・葛飾区)から「立石マルシェから小さなアンテナショップネットワークへ」と題する報告。
 生きるとは食べることと気付き、地域とつながった小さなマルシェ(アンテナショップ)のネットワークを広げていきたいとの内容でした。

続く第Ⅲ部の基調提案は、当初、置賜自給圏推進機構の菅野義秀代表を予定されていたそうですが、インフルエンザで来られなくなったとのこと(残念!)。

急遽、代打で登場されたのは小山田大和さん((合)かなごてファーム、神奈川・小田原市)。
 「ソーラーシェアリングとみかん山の再生」と題して、脱サラして小さな会社を興したご自身の経緯等も含めて、毎日が充実していると熱意のこもった報告が印象的でした。

会場におられた丸山茂樹(連帯経済)さんは森さんから指名され、
 「自給圏の考え方は関東圏に留めることなく、日本全国、さらにはアジアへと広げていくべき」等とコメントされました。

第Ⅳ部は、勝手に姉妹都市「ミツバチ合同協定」の締結セレモニー。
 仲野区の中野さんが呼びかけ、すでに小田原市と締結されている「ミツバチ合同協定」を、この日報告された各地域との間で締結。
 締結書は、ケヤキの丸太をユギムラで加工したものだそうです。

最後に「どこから始める自給圏づくり」をテーマに、参加者同士(近くに座った3人位ずつ)で対話。
 私は「(東京を含む)関東自給圏などという考えはナンセンス、むしろ日本の他地域に有害。一極集中を是正しつつ地域に根差した小さな循環の輪を広げていくという視点が必要では」等と意見を述べ、同旨をアンケートにも記入して提出。

もっとも、最後に森さんが「オール関東でのシンポジウムは2度とやらない。後は地域ブロックごとに」とまとめられたのを聞き、関東全体での自給圏構想というのはブラックユーモアだったようで、ほっとした次第。

個々の報告の時間は十分とはいえず、全体として慌しい印象はありましたが、盛り上がったイベントでした。
 報告のあった各地域の取組みはいずれも素晴らしいものでした。これら小さな循環が拡がっていくことに期待したいと思います。

帰途、通った東京・中野サンモール商店街では、障がいを抱えるアーティスト等によるアール・ブリュット展が開催中でした。
 日本の国の姿も、多様性が増しているとすれば嬉しいことです。