11月3日(土)は、埼玉県小川町での「収穫祭」に参加してきました。
システム開発会社の(有)USP(Universal Shell Programming)研究所の社会コミュニティ活動分野を担当しているUS.Peaceファームが、1年間実施してきた農業体験会の最終回(総仕上げ)です。
この体験会、小川町のNPO法人「生活工房つばさ・游」と連携し、有機農業を目指して新規就農した若者たちを支援するための活動の一環として開催されているものです。
他にも、一流シェフによる有機野菜を使った食事会の開催、月2回定期的に有機野菜が宅配される「おいしいお野菜届け隊」など、「生産者と消費者の顔の見える関係づくり」拡げるための活動に取り組んでいます。
10時に東武東上線の小川町駅に集合。この日の参加者は、小さな子どもを連れた家族も含めて30名ほどです。
私は、10月6日(土)の稲刈り体験に続いて2回目の参加です。
ちなみにこの時は、今まで経験したことのない湿田(というか泥田)での稲刈りで、数日、足腰の痛みに悩まされました。
この日の舞台は、稲刈りでもお世話になった「有井農円」の有井佑希(ありいゆき)さんの自宅です。
小川町の著名な有機農家・金子美登さんの霜里農場等で研修後、昨年、独立して新規就農された若い女性です。
絶好の秋晴れの下、山道を登っていきます。
山野は秋の気配、美しい景色が拡がります。この辺り、花桃がたくさん植えられていて、春には一帯がピンク色に染められるそうです。
10分ほどで到着した有井さんの自宅(借家)は、高台にある古い農家です。
有井さんと、地元NPOの代表である高橋優子さんが出迎えて下さいました。
前回、刈り取ってはざ掛けしていた稲束は、きれいに乾燥していました。
まず、脱穀(稲穂からもみを外すこと)から取り掛かります。
有井さん宅には古い農具がたくさん残されていて、まず、千歯こきを実演して見せてくれました。しかし、これはさすがに効率が悪く、足踏み式の脱穀機にかけることにします。
ペダルを踏むと、針金が植えられた円筒が、かなりの勢いで回ります。
これに稲穂を押し付けるてもみを外すのですが、しっかりとつかんでいないと引き込まれそうになります。足踏みとのタイミングもなかなか難しいものがあります。
脱穀したもみには、稲わらやもみ殻が混ざっているので、次に「とうみ」にかけます。
風を起こし、重いもみは近くに落ちて軽い稲わらやゴミは飛ばされるという原理で選別する道具です。ハンドルをぐるぐる回すと、みるみる選別され、手前のバケツには、もみがたまっていきます。
子ども達は、これらの体を使う道具に大喜びです。
続く工程は、もみ殻を外して玄米にする「もみすり」です。
ここで登場したのが、初めて見た道具でした。
2つに分かれた大きな木の臼のような道具で、下に置く方は上部が円すい状となっていて、溝が刻まれています。 これに軸を立て、もう1つを上から合わせるように乗せるのですが、とにかく重く、大人の男性が3~4人掛かりです。
そして上からもみを入れ、向かい合った2人が通されたひもを持って、半回転ずつ、右、左とリズムよく回すのです。これも相当の力が仕事です。
上下の臼の隙間から、ばらばらと玄米が落ちてくるのを、子ども達が拾って集めます。
ただ、溝がだいぶ摩耗しているためか、もみ殻が取れていないものが、かなり残ってしまいました。
ちなみにこの道具、以前に長野県の方から求めてきたものだそうですが、有井さんも名前はご存じありませんでした。後日、フェイスブックに投稿して情報を募ると、もの作りに詳しいIさんが色々と調べて教えてくれました。「木摺臼(きずりうす)」というそうです。
これらの作業と並行して、ニンジンの間引きとシイタケの収穫です。
ニンジンは、人差し指から小指位の太さに育っているものを間引きするのですが、子ども達は大喜びで止まりません。畑の一部は間引きならぬ、更地になってしまいました。
自宅の裏のホダ木には、立派なシイタケができています。これも子ども達は喜んで収穫します。
小さなユズの実もありました。
この日は玄米は後回しにして、別に用意してくれていた白米を炊くことにしました。
薪も自分たちで斧を使って割り、羽釜にくべて火をつけます。
隣の釜では地元の野菜をふんだんに使った味噌汁の準備。味噌は、青山在来という伝統品種の大豆を用いて有井さんが自作されたものです。
もちろん、やさいもたっぷりとあります。
青茄子、シイタケ、シシトウ、サツマイモは焼くことにしました。他に、亜麻仁油と岩塩で和えたサラダなど。
ご飯が炊きあがり、子ども達も一緒になっておむすびを握り、食事の準備は完了です。
前回に続き、地元で醸造された雑穀ビールも。
そして、みんなで食事。一段落したところで自己紹介と移ります。
お母さんたちからは、「ふだん食の細い子どもが、ここに来るとよく食べる」「有井さんの野菜を配達してもらうようになって、子どもが野菜を好きになった」等の体験談が次々と語られました。
確かにこの日も、間引きされたニンジンを、何本もポリポリとかじる小さな女の子もいました。
後片付けもほぼ終わる頃、有井さんの姿を探すと、最初の脱穀機のかたわらに屈み込んでいます。
回りの子ども達のおしゃべりの相手をしながら、残されていたもみを、一粒一粒、手で拾っていたのでした。自分で育てた米は、一粒も無駄にしたくないという気持ちが強いようです。
自然からの恵みである食べ物に対する感謝の気持ちの大事さが、その姿を見た子ども達にも、しっかりと伝わったことと思います。
また、この日はUSP研究所の當仲社長も見えられており、農業体験会の実施等に対する思いを直接お聞きすることもできました。
最後に、新規就農の仲間のご夫妻が、くろもじ茶や野菜を持ってきて下さり、即売会も開催されました。私も地粉のうどんを2束、求めました。
納屋の脇には、稲わらから縄をなう道具も置かれていました。
この日使った道具の多くは、ほとんどエネルギーを用いない人力で動くものです。
小川町で有井さん達が目指している有機農業とは、単に化学合成農薬や化学肥料を使わないということだけではなく、資材やエネルギーを含め、できるだけ石油資源に依存しない循環型の農業(あるいは地域)の姿なのです。
解散後、駅前近くにある地元NPOの拠点である「ベリカフェ」に立ち寄り、さらに事務局の皆さん数人と温泉へ。元は瓦屋さんだったそうです。
暮れなずむ空を見ながら、ゆっくりと露天風呂を楽しみました。
そして湯上りにはビールと地酒の飲み比べ。豆腐サラダ等を少し。
地元のTさんに見送られて19時過ぎの電車に乗る頃には、すっかり暗くなっていました。
この農業体験会は、来年も続けられるそうです。
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