図43 うるち米と新聞代 うるち米と新聞代(小売物価)の推移


◆ F.M.豆知識
 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 2017年4月からの消費税率引き上げ時に、軽減税率の導入が予定されています。
(増税する中で据え置くのを「軽減」と呼ぶのはいかがか、とのもっともな指摘はありますが、ここでは触れません。)

 その軽減税率の対象とされているのが、外食を除く食料品と宅配の新聞です。
(「これでいよいよマスコミは死んだ」とする論者もいますが、これもここでは触れません。)

 今回、取り上げるのは、軽減税率の対象品目が決まった翌日(昨年12月17日)付けの日本経済新聞2面の社説です。
 そのタイトルは「『民主主義のコメ』として」。

 この社説では、日本新聞協会の諮問を受けた法学者らによる「新聞の公共性に関する研究会」が13年9月にまとめた「新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書」から、「新聞は誇るべき日本の文化」「日本全土のいたるところでサービスを受けられる新聞こそが日本の民主主義の支柱であり基盤」といった意見を引用した上で、新聞は民主主義にとって重要な位置づけにあるとし、そのことを「民主主義のコメ」と表現しているのです。

 経済専門紙らしく(?)、かねてTPPや原発再稼働には「前のめり」な論調が目立つ日経がこのような表現を使っていることに、ちょっと驚きました(ちなみに、日経は私の日々の愛読紙です)。
 もっとも、戦後の復興期には鉄鋼が、高度経済成長期には半導体が「産業のコメ」と呼ばれていたこともあります。コメは、中枢であり重要なものを表す代名詞として現在まで使われてきているのです。

 さて、図43は「うるち米」5kgと「民主主義のコメ(新聞)」購読料(1ヶ月)の推移を示したものです。

 
 これによると、1970年代までは概ね同じような動きで推移してきたのが、1980年代に逆転し、1990年代半ば以降は米価は下落基調となり、両者の間には格差が広がっていることが見て取れます。

 重要なものの代名詞として今も使われる本家本元の「米」は、主食としての地位も(1人年間消費量:1963年118kg→2013年57kg)、日本農業の主役としての地位も(農業生産額に占める割合:1963年53%→2014年17%)失いつつあります。
 このことが、価格の動きにも反映しているのかも知れません。

[出典、参考資料等]
 2015年12月17日付け日本経済新聞社説「『民主主義のコメ』として」
  http://www.nikkei.com/article/DGXKZO95229160X11C15A2EA1000/

 総務省「小売物価統計調査(動向編)」、
 主要品目の東京都区部小売価格(昭和25年〜平成22年)
  http://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/3.htm

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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