8月25日(土)は、久しぶりに押上の「よしかつ」に行ってきました。
江戸東京野菜など東京の食材に、とことんこだわっていることで有名なお店です。
18時過ぎに押上駅に着くと凄い人です。
お店までの途中、北十間川にかかる橋から望むと、暮れなずむ西の空にスカイツリーのシルエットが映えています。橋の上にもカメラを構えた多くの観光客。
緑提灯や江戸東京野菜の幟が目印の「よしかつ」は、そう大きな店ではないので、最近はなかなか予約も取れないと聞きます。
この日は、江戸東京伝統野菜研究会の大竹道茂さん始め、江戸東京野菜関係の3名の方とともにお邪魔しました。
(この日の会食のことは、既に大竹さんのブログ「江戸東京野菜通信」に紹介されています。毎日更新される大竹さんには、とても叶いません。サンバも見損ねました。)
今日も暑かった一日、ということで、まずはビール。
折角なので、国産初のビール麦を復活させて醸造した「金子ゴールデンビール」を頂きました。数量限定のレアもの、エールのような深い味わいです。ここで飲めてラッキーでした。名前は、明治時代に品種開発した練馬の篤農家・金子丑五郎氏に由来します。
東京産の生ハムでくるまれているのは、メロンではなく本田瓜(ほんでんうり)です。
佐藤店長が自ら調達された完熟したものだそうで、色は鮮やかな緑色、メロンに負けないほど甘く、かつ、涼やかな酸味もあります。これは世田谷産とのこと。
続いて多摩産の東京しゃもの燻製。このお店の定番の一つ、添えられている野菜や海苔も東京産です。
お新香は大越(おおしろ)瓜、雑司ヶ谷茄子、水菜。全て東京産です。大ぶりの大越瓜のぱりぱりとした食感がたまりません。
次に、大皿にたっぷりと盛られてきたのは、江戸前や島しょ部の魚や貝のお造りです。金目鯛、穴子、鰺、タカベ、青柳など、いずれも新鮮で甘味があります。鰺はたたきのように生姜と混ぜられていますが、これは葛飾産。添えられた山葵は奥多摩産、醤油はあきる野市の醸造屋さんのもの。
さらに、三鷹産の寺島茄子とジャガイモのケチャップチーズ焼き。ちょっと皮が硬めの寺島茄子とホクホクのジャガイモ。熱々で、サントリー府中工場産のプレミアムモルツを注文。
続いて、日の出町産の大豆と青ヶ島産にがりで作ったおぼろ寄せ豆腐。
さらには、多摩産の牛乳から店長が手づくりされたカッテージチーズと、小金井産のルバーブのジャム。クラッカーに乗せて頂きます。あまりの美味しさに、クラッカーの追加をお願いしました。
飲みものも、東京産の地酒や果実酒等が豊富に取り揃えられています。
ビールに続いて、千住葱の焼酎と、青ヶ島の芋焼酎(青酎)を頂きました。
さしていよいよ、この日のメインのもんじゃ。名物の「赤と黒」、バケットもつきます。小麦粉は瑞穂町と東久留米市産。
野菜は東京産を中心にたっぷりと使われています。ただ、この時期、東京のキャベツは旬ではないので群馬県産を使っています、との佐藤店長の説明。少し申し訳なさそうな口調です。
その「赤」はトマトの酸味がさっぱりと、対照的に「黒」は烏賊墨の甘さが舌にとろけます。
ちなみに「黒」の写真は何だか分かりませんが、実物は艶々と黒光りしており、その妖しい美しさはスマホの(下手な)写真ではお伝えできません。ぜひ、実際に確認されることをお奨めします。
このように「よしかつ」では、出される料理について、店長の佐藤勝彦さんが一つひとつ産地を含めて説明して下さいます。これが、このお店の魅力の一つです。
もっとも私は食べるのに夢中で、とても全てメモし切れませんでした。詳しい産地等の情報は、先ほどの大竹さんのブログに掲載されています(さすが)。
もんじゃや焼きそばは、佐藤店長が手ずから焼いてくれました。
大竹さん達(ONコンビ)も、その手際の良さと東京食材の話に目と耳が釘付けです。もちろん、鼻と舌も。
最後に、東村山名物の黒焼きそば。ソースは私の地元(自宅の近所)の老舗ソース屋さんの製品、私には、馴染みのあるほっとする味です。
デザートは、八丈島産のパッションフルーツをアイスクリームに絡めて頂きました。爽やかな酸味とパリパリとした歯ごたえがたまりません。
このお店には、つき出しがわり(?)に、お菓子がテーブルに置かれています。もっとも、その場で頂くことは少なく、この日もお土産に頂いて帰りました。これも江戸東京野菜(亀戸大根せんべい)です。
美味しい料理とお酒をすっかり堪能し、いい気持ちで店を出ると、とっぷりと暮れた夜空を切り取るように、青くライトアップされた東京スカイツリーが輝いていました。
それにしても、このお店に来るたびに、東京の食材の豊かさに驚かされます。
東京都のカロリーベースの食料自給率は日本で最低、わずか1%しかありませんが、島しょ部から高山まで地勢に恵まれ、大消費地の近隣で野菜や魚介類など多品種の農水産物が生産されています。
さらに近年は、江戸東京野菜等の伝統作物を復活・普及しようという取組が、街おこしや食育の一環としても広く取り組まれています。
とはいえ、伝統品種はもとより、東京産食材の市場流通に占める割合はまだまだ小さく、一般の消費者が接する機会は乏しいと言わざるを得ません。
この店で豊富な東京食材を楽しめるのは、佐藤店長が自ら地域の生産者を回って調達するという、ご苦労、ご尽力に負うところ大というのが実態です。東京の食材に対する佐藤さんの思いが、お料理から、びんびんと伝わってきます。
伝統品種や地場産品には、生産者の思いに加え、その地域の歴史や風土、食文化といった物語が込められています。そのような価値を消費者につなげていくためには、これまでの大規模市場流通システムには担い切れない部分があります。
その意味で、「よしかつ」のような飲食店や、心ある小売店は、今後の循環型社会の構築に向けて、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。
本当に美味しかったです。ごちそうさまでした。
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