ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2014(第3回)

 2014年9月13日(土)は、今年度3回目の「ふくしまオーガニックコットン ボランティアバスツアー」の日です。
 いつもどおり、朝7時に新宿西口からバスが出発。今回の参加者は25名、うち10名の方は初参加のこと。
 主催の認定NPO法人「女性の活力を社会の活力に」(JKSK)担当理事の伊藤さん、事務局長の梶田さんから、挨拶と行程の説明。
 プロジェクトの成果のひとつ、「ふくしま潮目手ぬぐい」も披露して下さいました。
 続いてマイクが回り、参加者一人ひとりから自己紹介。
 鎌倉で被災地の子ども達の保養を受け入れる活動をされている方、福祉関係の活動をされている方、誰よりもたくさんの草を抜きたいというマスコミ関係の方、前回、現地で頂いたお弁当の美味しさに福島の書間の豊かさを実感されたという方など。
 被災地のために何かできればという初参加の方もいらっしゃいます。イタリア人の方も2人いらっしゃいます(お一人は有名自動車メーカーの幹部の女性)。
 わざわざ金沢から参加された小学校の先生もおられます。
140913_1_convert_20140916070119.png
 JKSKの木全(きまた)ミツ会長も参加されていました。 
 「昨日、うちに来た大工さんが、東京五輪は今からでもやめてほしい、東北の復興が進まない、と言っていた。復興を滞らせるわけにはいかない。現地の状況がどうなっているか、ぜひ、自分の目で見て、自分の耳で聞いて欲しい」と話されました。
 10時45分頃、広野町(いわき市の北隣)のコットン畑に到着。
 いわきおてんとSUN企業組合の吉田恵美子代表、「工場長」の藤田さんと新妻さん、コットン栽培を指導して下さっている松本公一さん達が出迎えて下さいました。
 前回に続いて広野町の遠藤町長も見えられ、「双葉地方の復興の先頭に立ち、地元から新しい社会づくりに汗をかいていきたい」等の決意の挨拶を頂きました。
140913_3_convert_20140916070152.png
 第1回(6月1日)に種を播き、第2回(7月12日)に補植と草取りをしたコットン畑は、大人の胸の高さ位まで成長しています。3年目の今年は豊作のようです。
 この日の作業は、風で倒れないように畝の両側に紐を通す作業と、摘芯(側枝を伸ばすために頂芽を摘み取ること)が中心とのこと。松本さんに指導を受けた後は三々五々、畑に散って作業を始めます。
140913_4_convert_20140916070214.png
 この日、参加されていた金沢市の小学校のK先生は、私が金沢在勤中にお世話になった方なのですが、このプロジェクトに関心を持たれ、吉田さんから譲って頂いた綿の種を学校で栽培されているそうです。
 その様子は、地元紙にも大きく取り上げられました。
 今回は「子ども達100人分の目で被災地の様子をしっかりと見て、報告会で子ども達に伝えたいと」、わざわざ金沢から来られたのです。
 金沢で栽培している綿の写真とともに子ども達の手紙を、吉田さんに手渡されていました。
140913_5_convert_20140916070239.png
 新宿を出発した時は曇り空でしたが、浜通りはすっきりと秋の青空になりました。
 遠くには東電・広野火力発電所の煙突が見えます。先ほど、町長さんが最新鋭の設備を増強する計画もあると話されていました。原発は止まっていますが、福島・浜通りが東京へのエネルギー供給基地であることに変わりはありません。
140913_7_convert_20140916070351.png
 最初は戸惑っていた参加者ですが、松本さん達から教えてもらいつつ、次第に作業の効率が上がります。女性二人組が、すごい速さで縄をかけ渡していきます。お1人は、1回目にはマルチ敷きに活躍した方です。
 堤防の上の道路を、ひっきりなしにダンプカーが通過していきます。防災緑地の工事が行われているのです。
 人の憩える緑地として整備し、町のシンボルでもある蜜柑の木を植える構想があることは、前回のボラバスの際にお聞きしました。 
140913_6_convert_20140916070303.png
 あちらこちらに綿の花が咲いています。日本在来種の茶綿の花は、オクラに似た清楚な薄黄色です。
 花がしぼむと紡錘型のコットンボールになります。根元をよく見ると、はじけて茶色っぽい綿が姿を現しているのが見つかりました。
 今年の初収穫だそうです。
140913_8_convert_20140916070417.png
 この日の作業は順調に進み、コットン畑の脇のスペースの草取りもしました。
 草取りを楽しみにしていた参加者の方もおられたようです。イタリア人の男性、ご実家はブドウ農家とのことで、見事な鎌さばきでした。
 ちなみにこのスペースは、次に来られるグループの昼食会場に使われるそうです。 
140913_9_convert_20140916070457.png
 13時近くになり、予定の作業は終了。
 バスで近くの公民館に移動。ここで昼食の時間です。
 今回も、地元産食材をたっぷり使ったスカイストアのお弁当です。いつもながらの美味しさ、そしてボリューム。
 会場の脇では、ふくしまオーガニックコットンのTシャツや手ぬぐいが並べられ、販売されていました。
 アーティストコラボTシャツなど、ラインナップはますます充実しています。
140913_10_convert_20140916070523.png
 食事の後は、「工場長」藤田さんの解説に続き、綿繰りと糸紡ぎの体験ワークショップです。
 地元の方に指導いただき、3グループに分かれて作業に取り掛かります。
 1つ目のグループは、綿のゴミ取り。ふわふわとした真綿を手に取ってよく見れば、細かなゴミがついています。うまく糸繰りができるように、手で取り除いていきます。
 根気のいる地道な作業ですが、地元の方や他の参加者と談笑しながら手を動かすのは楽しい体験です。
140913_11_convert_20140916070548.png
 2つ目は綿繰りの作業。綿の中心には大きな種があります。
 綿繰り機の2つのローラーに押し込むようにして回せば、簡単に種と綿が分離できます。これは難しい作業ではありません。
140913_12_convert_20140916070610.png
 難しいのは3つ目の糸紡ぎです。
 スピンドルという金具の先端のかぎ状になっている部分を、綿のかたまりに差し込んで巻きつけ、コマのように回転させながら引っ張って糸を紡いでいくのですが、回転のスピードと綿を引っ張るタイミングが難しく、なかなか均一の太さになりません。途中で切れてしまうこともしばしばです。
 丁寧に教えてもらうのですが、みんな悪戦苦闘、それでも楽しい体験でした。
 
140913_13_convert_20140916070635.png
 事務局の皆さんに見送られて、バスは公民館を出発。この日も、見えなくなるまで手を振って下さいます。
 同乗して下さった新妻さんがマイクを握り、震災から現在までの体験と被災地の現状について語って下さいました。まだ若い、独身の男性です。
 震災までは、東京電力の関連会社の社員として原発で働いておられたとのこと。
 原発での作業は、今から思うとそれなりに楽しかったそうです。発災時は照明が消えて建屋内は真っ暗になったこと、その後、実家から避難された体験等を、時には笑いを交えながら話して下さいました。
140913_14_convert_20140916070658.png
 道の駅よつくら港に立ち寄り。ここで、お土産や帰りの軽食などを調達。多くの人で賑わっています。
 この辺りも津波で大きな被害を受けたそうですが、その痕跡は今はほとんど見当たりません。かさ上げしている柱のレリーフ板に記された「みんなでがんばっぺ」「少しずつ前へ」等の子ども達の文字が、記憶を留めてくれています。
140913_15_convert_20140916070723.png
 その後は、引き続き新妻さんの話を伺いながら、かんぽの宿いわきへ。温泉で汗を流しました。
 ここで藤田さん、新妻さんとお別れし、バスは一路東京に向かいます。
 途中、強い雨が落ちてきました。再び参加者にマイクが回され、1人ひとりが今日の感想などを述べ合います。
140913_16_convert_20140916070749.png
 「6月に種を植えた綿が大きく育っていたことに感動した。綿の花や弾けたコットンは初めて見た。土に触れることの大事さを再確認できた」
 「綿繰りと糸紡ぎは難しかったが、楽しかった。またやってみたい。昼食のお弁当も美味しかった」
 「毎回、現地の方々が明るく迎えてくれるのが嬉しい」
 「いつも作業の指導をして下さる松本さん達も綿繰りのワークショップに参加して下さったので、近くに座って改めて色々と話ができた。来なければ聞けない話もあり、いい経験になった。
 「もっと現地の方たちと交流し、回りの人たちに伝えていきたい」等々。
140913_17_convert_20140918224743.png バスの中では明るく話して下さっていた新妻さんですが、ご両親は仮設住宅、兄弟4人もバラバラで、ご自身はいわき市内のアパートで独り住まいとのこと。
 第一原発に近い楢葉町の実家の建物は、近く解体することを決めたそうです。
 「大変な経験。正直、余裕はない。明るくふるまわないと生きていけない」と漏らされた言葉には、経験していない者には想像することさえ難しい重みを感じました。
 作業を指導して下さっている松本さんも、元は楢葉町で「冬水田んぼ」(餌付けしていたのは何と白鳥!)で稲作をされていた方です。避難を余儀なくされ、代々継いできた田んぼでの稲作はできなくなり、現在はいわき市内の仮設住宅に住んでコットン畑を管理して下さっているのです。
 その松本さんも毎回、「来てくれると嬉しい」と私たちに言って下さいます。
 東日本大震災と原発事故から3年半が経過しましたが、特に原発事故の被災地では、まだまだ目に見えて復興が進んているという状況にはないようです。今も多くの方たちが避難し、不便な生活を余儀なくされているのです。
  
 バスの中で最後にJKSKの木全会長は、
 「現地に実際に足を運び、様々な経験された方の話を自分の耳で聞き、心に留めておくことが大事」という話をされました。
 ぜひ、多くの方々に被災地に足を運んで頂きたいと思います。いわき自分の目で見て、耳で聞いて下さい。いわきおてんとSUN企業組合でも、スタディツアーが活動の柱の一つになっています。
 また、「ふくしまオーガニックコットン ボランティアバスツアー」の4回目(収穫祭)は、11月8日(土)に予定されています。
 この日、広野町のコットン畑では、畝の端に植えられたキンセンカ(病虫害の予防に効果があるそうです。)が綺麗な花を咲かせていました。
 輝くような花の色に、多くの人たちの思いが凝縮されているように感じられました。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
(↓ランキングに参加しています。よろしかったらクリックして下さい。)

人気ブログランキングへ