2018年7月7月(土)は曇り。
東京地方は平穏ですが、西日本を中心に記録的な大雨が続いているとのニュース。
午前中は都心の某大学で開催されたイリイチ読書会(4回目)に参加。
自らの体験を踏まえたディスカッションが中心で、今学期はこれで終了。秋からは新しいテキストで再開される予定とのことです。
終了後は、急いで東京・東五反田の清泉女子大学へ。
13時からここで第42回 縮小社会研究会が開催されました。
(一社)縮小社会研究会とは、従来の成長路線が行き詰まるなか、物質的規模を縮小するための様々な問題の解決法を見出していくことを目的に2013年に設立されました。
京都を中心に活動されていますが、この日は東京での研究会開催です。
(昨年11月の脱成長ミーティング公開研究会(於 PP研)では、代表の松久寛先生のお話を伺ったことがあります。)
この日の研究会のテーマは「科学技術の進歩で大量生産文明の持続は可能か」。
(以下、文責は全て中田にあります。)
最初は尾崎雄三さん(縮小社会研究理事)から「人工知能、ロボット、IT は縮小社会に本当に有効か? 」と題する講演。
30分ほど遅刻したため最後の部分しか聞けませんでしたが、自らの経験に基づく判断よりもコンピュータの判断を優先するようになると社会が脆弱化する恐れがある等のご発言がありました。
続いて五十嵐敏郎さん(金沢大非常勤講師、縮小社会研究会理事、もったいない学会理事)から「科学技術の倫理問題-私たち科学技術者は何を目指して研究開発を行うのか」。
軍学共同が進む中で科学技術に携わる組織の理念が失われつつあるなか、一般の人々との対話等を通じて科学技術者個々の倫理観を呼び起こすの必要性等を訴えられました。
3番目の講演は「空き家問題をビジネスチャンスに~そして本当に送電線は必要不可欠なのか」と題して、橋本正明さん(NPO市民科学研究室理事、市民科学者)から。
空き家の増加が社会問題化している中、市民発電に取り組むことで空き家を地域の共有財産として管理するアイディアが提示されました。
続いて登壇された長谷川浩さん(NPO福島県有機農業ネットワーク理事)は、喜多方市山都地区に移住・就農された方で、私は現地でもお世話になったことがあります。
長谷川さんからは、生態学等の概念を取り入れた新しい農学(アグロエコロジー)の概念や限界等について、ご自身の実践に基づいた報告が行われるとともに、募集中の放牧豚オーナー制度の紹介がありました。
5番目の講演は「縮小社会において科学技術は自由民主主義の持続を可能とするのか?」と題して、山本達也さん(清泉女子大)から。
グローバル化が逆流し世界が分断され、市民が「強いリーダー」を望む権威主義体制化が進むなかでの民主主義が直面する問題点等について報告がなされました。
また、ソーシャルメディアが民主主義を抑圧する道具となる恐れ等について質疑応答がなされました。
講演の最後は大谷正幸さん(金沢美術工芸大)から「成長と崩壊の文明論~セネカ効果を中心に~」。
セネカ効果(緩慢な成長過程に比べて急峻な崩壊過程)やダ・ヴィンチの「人体図」等を紹介しつつ、自然との整合性を図っていくためには「回心」が必要であること等を主張されました。
その後は、松久代表の進行により、講演者を含む参加者全員で全体討論。
「私たちの頭脳自体が縮小しているのでは」との質問に対して、松久先生からは「コンスタントな状態が続くと自分で考える力が失われていく。戦後の体制変化を体験した戦前生まれの方の話を聞くことも有用」等の回答。
「世界的に若者が右傾化していることはホットな研究課題。自らの文化圏が脅かされているという恐れが背景にある」等の議論も。
また、農業についての消費者と生産者との意識の乖離については、日頃から交流することが大切等のやりとり。議論も。
さらに、西日本での大雨被害を念頭に「ローカルに生きることも大切だが、その一方で広域的な助け合いも必要」との発言もありました。
資源・エネルギー制約下では量的縮小は不可避ですが、質的にはより高度で豊かな社会を建設することは可能と思われます。
その可能性を探るためには、経済、技術、歴史、政治など様々な面からの検討が必要であることを、感じることができた研究会でした。