文化の日に「あたり前の農業」について考えました。

 11月3日の文化の日、東京は秋晴れの一日でした。
 午前中、東京都下H市の自宅近くで借りているささやかな市民農園の片隅は、菊の花が満開になりました。

 茄子は実が小さくなり、そろそろ終わりです。週末には片づける予定です。夏から秋にかけ、たくさんの恵みを頂きました。
蕎麦はあまり実がついていません。
 今日は参加できませんでしたが、山梨県上野原市でのECOM「しごと塾」蕎麦収穫イベントはどうだったでしょうか。
 午後からは神田小川町に出かけました。ニコライ堂も秋晴れの下です。
 総評会館で開催された『有機農業の技術と考え方』(コモンズ)出版記念シンポジウムに参加しました。会場はどうやら主催者の予想を上回ったようで、100名以上の参加で満杯、なかなかの熱気です。
 最編著者代表・小川町の有機農家、全国有機農業推進協議会代表の金子美登氏の挨拶からスタートしました(写真左)。
 同じく西村和雄さん(有機農業技術会議代表)の挨拶、執筆者からの報告として茨城大・中島紀一先生(写真右)、農業生物学研究室・明峯哲夫さんの報告。

 続いて有機農業現場からの講評として、小川光氏(福島県喜多方市)からの遠慮のない批判、続いて八尋幸隆氏(福岡県筑紫野市)から「むすび庵」での消費者との交流事業等の報告。
 最後に東北農業研究センター・長谷川浩氏とコモンズ・大江正章氏を座長に、会場参加者を含めた総合討論。
 有機農業推進法が成立して4年、有機農業の取組が確実に広がっていることが、各氏から報告や討論から感じられました。有機農業は、単に安心な食物を提供するだけではなく、近代農業へのアンチテーゼとしての「あたり前の農業への回復と展開」(中島紀一先生)という文明論的ともいえる意味づけも示されました。今後の展開に大いに期待したいところです。
 その一方で、「地産地消、旬産旬消は原則として譲れない」といった意見もありました。地産地消等が望ましいのは、少なくともこのようなシンポに参加する位の人の中では分かり切った話で、その共通認識の上で、例えば自給率1%の東京の食をどうするのか、という現実的な議論が必要なはずです。現に生協等の参加者の方からは、そういった観点からの切実な議論(実際に苦労されている報告)もされていたにも関わらず、教条的な(?)意見を述べて終わってしまう一部の発言には、現在の有機農業のシェアが拡大しない一因が伺われるような気がしました。立派な理屈はそれとして、現実を踏まえて、例えば八尋さんの報告にあったように、現場現場で、消費者に農業の実態を理解してもらうような取組を地道に続けていくしかないのではないのでしょうか。
 いずれにしても、このような議論を、「業界」内だけではなく、広く一般の消費者を巻き込んで進めていくことの重要性を痛感した一日でした。