去る6月19日(火)の台風で近所のトウモロコシ畑は一面になぎ倒され、惨たんたる光景でした(写真左)。ところが1週間後のいま、再び一斉に天に向かって伸びつつあります(写真右)。
自然の強靭な回復力に脱帽です。
さて、24日(日)の日記の続き。
スカイツリーの足もと、「すみだ青空市ヤッチャバ」で賑わう押上駅からメトロに乗って銀座に向かいました。
この日、銀座 数寄屋橋の「東日本復興応援プラザ」では、7回目になる「数寄屋橋音楽祭」が開催されていました。
音楽を通じて被災地への復興のエールを送るとともに、被災地からの情報発信を行うこと等を目的として、「被災地にピアノをとどける会」等の主催により、毎月1回程度、開催されているイベントです。
すでにプログラムは後半、トークショーが始まるところに到着しました。
この日のテーマは、福島大学の嶋津武仁教授をお迎えして「福島の教育環境について」。
地震、津波に加え放射能災害にも見舞われている福島県における子ども達や大学生の様子について、現地からの報告がありました。
被災地域、特に福島県からの人口流出が止まらない中、今春の福島大学の志願者は逆に増えたとのこと。偏差値の低下を見込んだ受験生の現実的な対応という面もあったようですが、一方、こんな時だからこそと意気に感じて福島大を志願した受験生も多かったそうです。
このような状況下でも、子どもたちは明るく笑顔が絶えないとのこと。しかし、目に見えない放射能の問題が終息しない中、厳しい教育環境に置かれていることは間違いありません。
嶋津先生は「忘れてはならない。しかし、いたずらに恐怖、不安を駆り立ててはならない」と締めくくられました。
最後の演奏の前、司会の宮城教育大学教授の吉川和夫先生から、卒業生のフルート奏者、H.Iさんの日記が紹介されました。
そのタイトルは「微妙」。
いくつかの避難所を慰問演奏で訪れた時の気持ちが、率直に記されたものです。
(全文は広報誌「あおばわかば」震災特集号p.50に掲載されています。)
「慰問演奏に行く人たちは、音楽で人の心を慰められると、おそらく心のどこかでそう信じていて、その傲慢さが、自分たちから透けて見えるだろうと、それが恥ずかしいなぁといつも思います。」
(演奏後、目に涙をいっぱい溜めたおばあちゃんから握手され「73歳まで生きてきて、働いて働いて、音楽なんか全然聴いてこなかった。 今になって、素敵な音楽聴くことができました。ありがとうね」 と言われ、)
「握手の重さは感動の大きさではなく、彼女の直面している現実の重さだと思いました。音楽なんか聴く機会がなくたっていいから、もとの生活を続けさせてあげたかったと、思いました。」
「自分のやっていることが、ただの迷惑か、意味のあることなのか、よく分からなくなるのです。何年経っても、『あの時、意味ある活動をしたんだ』なんて偉そうに思うことのないように。ちょっとばかりフルートが吹けるから吹いただけくらいの小さい小さい出来事であって欲しいなぁと、思うのです。」
ひとつひとつの言葉が、私の心に突き刺さりました。
「ただの迷惑」なんてあり得ないし、間違いなく大きな「意味のある」活動です。当然じゃないですか。
にも関わらず、この若い音楽家が「傲慢」「恥ずかしい」「偉そうに思う」とさえ書かざるを得なかった心境。
それだけ目の前に突きつけられた震災の被害はあまりに大きく、被災者の方々の心の傷はあまりに深いということなのでしょう。
その厳しい現実の中で「微妙」な空気に戸惑い、時にはおそらく押しつぶされそうな圧迫感さえ感じつつも、彼ら、彼女達は懸命に、必死になって、慰問演奏等に取り組んでいるのです。自分に一体何ができるのか、と自問しながら。
被災地の厳しい現実を改めて思い知らされました。1年3カ月以上が経過した今も、まだまだ傷は癒えていないでしょう。それに、「美談」の裏にあった若い音楽家の苦悩など、全く想像もしていませんでした。ある種のショックさえ感じました。
それと同時に、率直な文体から伝わってきたH.Iさんの真摯で謙虚で、思いやり深い人柄にも、心打たれる思いがしました。おそらく「傲慢」とは対極にある方と察せられます。
ちなみにこのH.Iさん、この日の第1部に出演されていたそうです。遅れてきたことを悔やむことになりました。
最後の演奏はヴァイオリン・前田みねりさん、ピアノ・斎藤さやかさんによるデュオ。
難曲にも挑戦され、トークでは、被災地を慰問した際のワカメしゃぶしゃぶがおいしかった等と、爽やかな笑顔で話されていました。
そして「私たちは被災地のことを絶対に忘れることはない」との若々しくも強い決意の言葉。
音楽には、間違いなく人の心を揺さぶる大きな力があります。そして音楽は人の思いを繋ぎ、伝えていきます。
次回の数寄屋橋音楽祭は7月22日(日)16時から。
「千の音色でつなぐ絆」、あの陸前高田の松で作られたヴァイオリンが登場するそうです。
演奏会終了後は、この日の最終目的地である千駄木の「市民科学研究室(市民研)」事務所へ。「市民にとってよりよい科学技術とは」を考え提言するNPOです。
この日は総会が開催されていたのですが、懇親会だけ参加させて頂きました。押上で買ったどら焼きと、鹿児島県のアンテナショップで買った地域限定品の焼酎を差し入れ。
市民研は、アカデミックな研究者の方だけではなく、市民の立場で科学に携わっている方達が多く参加されており、この日も色々と貴重なお話を伺うことができました。
原発事故以降、ともすれば科学技術が市民から遠いものと感じられ、科学者への信頼も失われつつある中、上田昌文代表はじめ「市民研」の皆様の活動は、ますます重要になっていくものと思われます。
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“「微妙」” への1件の返信
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まとめtyaiました【「微妙」】
去る6月19日(火)の台風で近所のトウモロコシ畑は一面になぎ倒され、惨たんたる光景でした(写真左)。ところが1週間後のいま、再び一斉に天に向かって伸びつつあります(写真右