映画「よみがえりのレシピ」

yomi_1_convert_20121111104945.png かねて多くの方から奨められていたドキュメンタリー映画「よみがえりのレシピ」を、先日、ようやく観てきました。
期待していた以上の素晴らしさでした。
冒頭から、映像の美しさに引き込まれます。
庄内地方の田園風景。山と森。
迫力ある焼き畑の場面では、顔が熱く感じられるような錯覚まで。
作物一つ一つの接写。
だだちゃ豆は、棘の一本一本まで緑色がみずみずしく、あまりの美しさに涙が出そうにさえなります。
そして、伝統作物を守ってきた高齢の生産者の方たちの表情と言葉。
食卓で、これまで食べてきたものについて語る場面、傾斜のある畑で作り守ってきた作物について語る場面、時おり笑顔になると、顔の深いしわが、さらに深く刻まれます。
映画に登場するのは高齢の方ばかりではありません。
会社勤めを辞めて戻ってきた若い後継者もいます。学校で子ども達が伝統野菜を育て、賑やかに試食する場面も出てきます。
ここ庄内においては、伝統作物と、それを守り育ててきた生産者の方たちの思いは、若い世代に確実に引き継がれています。
「語り部」的に登場されるのは、伝統作物の重要性に早くから着目し活動されてきた山形大学農学部の江頭宏昌先生。
それに、素材の個性的な美味しさを引き立てるイタリアレストラン「アル・ケッチャーノ」の奥田政行シェフ。本当に美味しそうな独創的な料理の数々。食べる人たちの笑顔。羨ましい。
伝統を守り続ける生産者と心ある消費者が、ここに結びつき、ネットワークが拡がっています。

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(写真は映画公式ウェブサイトより)
効率性に劣る伝統作物は、大量生産・大量(長距離)流通・大量消費・大量廃棄に特徴づけられてきた文明の中で、多くが消滅してしまいました。
ところが近年、エネルギーや地球環境問題の制約が明らかになってくる中、私たちの文明は、持続可能性を追求するものに大きくかじを切りつつあります。
近年、欧米では「懐かしい未来」「幸福の経済学」など多くの優れたドキュメンタリー映画が制作され、評判になりましたが、これらに勝るとも劣らない映画が、ようやく日本でも登場しました。

山形県庄内という日本の一地方において、伝統作物に関わっている多くの人たちの気持ちを、若い渡辺智史監督が丁寧に、心寄り添うように描いています。
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渋谷のユーロスペースのほか、各地で自主上映会も開催されているようです。
ぜひ、一人でも多くの方に観てもらいたい映画です。
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