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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇
No.10 ; 2013.1/2(旧暦 霜月廿一日)発行【新春ご挨拶号】
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グレゴリオ暦では2013年の年が明けました。
北日本や北陸は大吹雪とのことですが、東京地方は、申し訳ないほど
の青空に恵まれた穏やかな正月になりました。
改めて、明けましておめでとうございます。今年はどのような年にな
るのでしょうか。読者の皆様の今年1年のご多幸をお祈りします。
本年も、皆様とともに、食と農の未来について考えていきたいと思い
ます。引き続き、どうぞよろしくお願いします。
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◆ F.M.豆知識
2 食をめぐる世界と日本の動き (3)伝統野菜等の取組
フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎
回少しずつ取り上げていきます。
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前回、世界においてスローフード運動など「食」をめぐる新しい動き
が盛り上がっている中、日本国内では必ずしも大きな流れとはなってい
ないことの背景として、日本人は食生活に対する満足度が高く、現状の
深刻さに対する問題意識が乏しいという事情があるのではないか、いう
ことを指摘しました。
それでは、日本国内では、欧米のスローフード運動等(食を通じた世
直し運動)に類似する動きは全く見られないのでしょうか。
私は、最近、各地において活発になりつつある伝統野菜や在来作物の
復活・普及の取組に注目しています。
伝統野菜等は、その地域で古くから生産され、その土地の気候や風土
に適合した種として固定化されてきたものですが、形や品質が不揃いに
なりやすく、栽培に手間がかかる等の理由から、経済の高度成長に伴っ
て流通の広域化が進み規格化された大量生産が求められるようになる中
で、生産量は大きく減少してきました(失われた品種もあります)。
ところが近年、各地で地産地消等に対する関心が高まる中、それらを
復活させ普及していこうという取組が、全国各地で盛んとなっているの
です(新聞等で取り上げられる機会も増えています)。
取組の主体やねらいは様々ですが、これら取組は、地産地消の典型と
してフード・マイレージと輸送に伴う二酸化炭排出量の削減に資するの
みならず、地域の歴史や風土、食文化を見直すきっかけともなることが
期待されるのです。
これまでのように、安くて便利という市場経済とグローバリゼーショ
ンの恩恵を享受するだけではなく、地産地消や身近な伝統作物を重視す
ることを通じてローカルなコミュニティを再生し、「世直し」を図って
いくことが、より豊かな未来の「食」を実現していくことにつながって
いくものと考えています。
具体的な取組等についても、順次、紹介していきたいと思います。
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組
んでおられる方達を紹介するコーナーです。
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年頭に紹介させて頂くのは、私の人生を決定づけたとも言える方です。
その方とは山下惣一(やましたそういち)さん。1936年、佐賀・唐津
生まれの農民作家です。
私事ながら、四国・徳島での高校時代は受験勉強に全く身が入らず、
これといった将来の目標もないまま消去法的に大学の農学部に進んだの
ですが、初めて親元を離れての下宿住まい、自分の時間だけはたっぷり
とありました。
そのような時、近くに下宿していた文学青年(?)の友人に紹介しても
らい、その後の私の人生に大きな影響を与えたのが、宮沢賢治の詩
(取り分け『稲作挿話』)と、山下惣一さんの一連の著作だったので
す。
友人に借りて最初に読んだのは、エッセー『いま、村は大ゆれ。』
(1978)だったと思います。九州弁混じりの軽妙な文章はユーモアがあ
って面白く、しかも高度経済成長期以降、大きく変貌しつつあった日本
の食べ物や農業、農村の現状と深刻な問題点を、鋭くえぐり出していた
のです。
その後、続編『まだ、村は大ゆれ』(1980)のほか、小説『減反神社』
(1979)、『ひこばえの歌』(1981)等を立て続けに読み、すっかり
「山下ファン」になってしまいました。そしていつしか、食べものや農
業、農村の問題に一生関わっていければと心を決め、農業関係の公務員
の道に進んで現在に至っています。
就職してからも、思い迷うことがある度に山下さんの著作を手に取り
ました。時勢に合わせて精力的に出版されている新著だけではなく、時
には、学生時代に読んだ本を本棚の奥から引っ張り出してきて読みなお
したこともありました。
その度に、進むべき方向を示してもらったような気がしたものです。
その憧れの山下さんにお会いできたのは、2005年10月のことでした。
当時、私は九州農政局(熊本市)で食育を担当しており、翌年1月の
親子向けシンポジウムの企画を練っていたところ、山下さんの『食べも
のはみんな生きていた』(2004)が子どもにも分かりやすかったことも
あって、この際、基調講演をお願いできればと思ったのです。
とはいえ、著名な山下さんに伝手はなく、予算も限られていたところ、
ダメで元々と思って10月8日(土)、折り良く福岡県久留米市で開催され
た講演会に参加し、終了後、厚かましくも楽屋に押しかけてお願いして
快諾頂いたのでした。
何とも不躾なことで、思い出しても冷や汗が出ます。
そしてシンポジウム直前の1月25日、唐津のご自宅まで最終的な打合せ
のために伺いました。
冬晴れの一日でした。
ちょうど奥様とみかんの選別作業中だった手を中断させてしまい、座
敷に上げて頂き当日の段取り等について打合せすることができました。
さらに、山下さんが運転される軽トラックに乗せてもらって、棚田や
みかん園、直売所等を案内して頂いたのです。
著作や講演では激しい発言もされる山下さんですが、この日、普段生
活されている土地の中の山下さんは、本当に親しみやすく飾らないお人
柄で、高台から臨んだ青空の下の玄界灘の美しさとともに、強く印象に
残っています。
そして、1月28日(土)の熊本市でのシンポジウム「親子で食育!−
たべものさん、ありがとう−」は、山下さんのお陰で成功裡に終わるこ
とができたのです。
その後、縁があって鈴木宣弘先生(東京大学)と3名で共編著『食べ
方で地球が変わる−フードマイレージと食・農・環境』(2007)を出版
させていただく機会もありました。身に余ることです。
さて、この年末年始、山下さんから寄贈頂いていた新著『市民皆農−
食と農のこれまで・これから』(2012、中島正氏との共著)を改めて拝
読させて頂きました。
一貫して「自給自立の食と農」の必然性を鋭く洞察し、農的社会への
シフトを説かれており、強い刺激を受けました(拙ブログで少し詳しく
紹介させて頂いています)。
私たちの食べ物、日本の農業の将来は混沌としています。
そのような中、山下惣一さんの一連の著作は、私たち自身が選ぶべき
道を探す時に、足元を照らしてくれる松明であり続けていって下さるも
のと確信しています。
(参考)山下惣一、中島正『市民皆農 食と農のこれまで・これから』
(2012、創森社)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_88340272/
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◆ 情報ひろば
食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ウェブサイトやブログ
の更新情報、読者の方からの投稿(告知等)をお知らせします。
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▼ ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
・12月28日付け 「農家のこせがれネットワーク」交流会 & 忘年会
日本の農業の後継者問題が深刻となっている中、「こせがれ」の皆さ
んのユニークなネットワークが積極的に活動されています。
http://food-mileage.jp/2012/12/28/
・1月1日付け 「市民皆農」のとき
2013年が明けました。いつもの神社の「地口行燈」。
年をまたいで、山下惣一さんから寄贈頂いた『市民皆農 食と農のこ
れまで・これから』(中島正さんとの共著)を拝読しました。
http://food-mileage.jp/2013/01/01/
▼ 管理者が参加予定または関心のあるイベント等を紹介します。
○ 食育祭 in させぼ、させぼ食育フェア
日時:1月12日(土)13:00 〜16:00
場所:アルカスSASEBO(長崎県佐世保市)
内容:講演(医療法人照甦会・田中佳先医師)、幼稚園等での食育活
動の展示、「元気野菜」食べ比べ、生産者との交流・販売会等
主催:NPO法人大地といのちの会
(詳細、お問合せ等↓:1月12日の箇所をご覧下さい。)
http://yoshi3yasai.web.fc2.com/yotei.html
○ 【燻製作っちゃぉ!】イベント!
日時:1月19日(土)12:30〜18:00
場所:品川区北品川2-8-11
主催:グリーンスマイル
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.facebook.com/#!/events/188168307974663/
○ あっぱれ野菜! STUDY & CAFE vol.10〈江戸東京野菜編〉下
−下山千歳白菜&汐入大根−
日時:1月20日(日)11:00〜13:30
場所:くりやぶね(小金井市本町)
スタディ講師:大竹道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会代表)
カフェ料理&解説:酒井文子さん
(江戸東京野菜料理研究家・野菜ソムリエ)
主催:NPO法人ミュゼダグリ
(詳細、お問合せ等↓)
http://web2.nazca.co.jp/11210409/S%26C130120.pdf
○ 第3回「農」と里山シンポジウム−三富(さんとめ)を未来に−
日時:1月20日(日)13:10〜16:10
場所:川越南文化会館(川越市今福)
主催:三富シンポジウム実行委員会
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.santome.jp/kaihou1/24YearKaihou/Symposium/Symposium.html
○ 第4回アドボカシーカフェ
「原発事故子ども・被災者支援に必要な施策を考える」
日時:1月21日(月) 18:30〜21:00
場所:四谷地域センター(新宿区内藤町)
主催:ソーシャル・ジャスティス基金
(詳細、お問合せ等↓)
http://socialjustice.jp/p/20130121/
○ 映画“だんらんにっぽん”自主映画会&交流会
日時:1月26日(土)15:00〜鑑賞・監督対談、18:00〜交流会
場所:神田なみへい
主催:佐野孝裕氏
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.namihei5963.com/namihei-board/detail.cgi?sheet=hp31&no=1201
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也(フード・マイレージ資料室 管理者)