F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.033

================================================================

◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.33 ; 2013.12/3(火)[旧暦 霜月朔日]発行

================================================================

 

 12月に入って慌ただしくなってきました。旧暦では今日から霜月です。

 「霜降り月」の略ともされ、農閑期でもあり、廿日(20日)の冬至を

控え、一年でもっとも早く日が落ちる時期です。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日(朔日=新月の

日)と15日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は旧暦霜

月朔日の配信です。

 


—————————————————————-

  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

—————————————————————-

日本は「農業大国」か

 (7)  日本農業の強みを活かすには

 前々回、前回と、他の主要国にはない日本農業が有する強みとして、

「風土」と「人口密度」をあげました。

 

 それは、日本においては、比較的温暖かつ湿潤で、さらに四季が豊かで

あるという気候条件と、標高差が大きく南北に長いという国土条件の下で

多彩な農業生産を行うことが可能であり、そのような特色を活かすことに

よって、「身近にいる」消費者との間で「顔の見える関係」を構築しやす

いという内容でした。

 

 現に、例えば関東圏においても、東京の消費者や飲食店との間で野菜等

を直接取引(宅配等)することにより、高い所得を得ている農家も多数あ

ります。

 

 しかし、これら大都市圏における野菜農家のビジネスモデルが、日本農

業全体に単純に当てはまるわけではありません。

 

 野菜は、鮮度が重視されるために消費地に近いという優位性が特に働く

だけではなく、品種や味、栽培方法(有機栽培等)といった面で差異化を

図りやすい作目です。

 

 実際、日本の野菜の41%は、三大都市圏[注]で生産されています(農

林水産省「生産農業所得統計」、2010年)。

 

 一方、米は26%、麦類19%、豆類24%、肉用牛18%、乳用牛23%と、三

大都市圏のシェアは大きくありません。特に加工に向けられるものなどは、

差異化すること自体、困難な面があります。

 

 つまり、国全体で平均すれば日本の人口密度は他の国に比べて高いとは

言え、例えば、大都市近郊における野菜農家と、北海道や九州、あるいは

中山間地において、相対的に差異化が困難な作物を生産している農家とで

は、かなり状況が異なるのです。

 

 そもそも、東京都の食料自給率(カロリーベース)は1%、大阪府は2

しかないように、大都市圏は、近隣県のみならず、多くの食料を遠隔地の

大産地に依存せざるを得ません。

 しかしながら、従来型の大規模市場流通では、どうしても価格や規格

(見栄え)が重視されがちであり、輸入品との競合も避けられません。

 

 このため、遠隔地からの市場(大量・中距離)流通の中にも、いかに

「顔の見える」的な要素を組み込んでいくかが重要な課題となるのです。

 それは、どのようにすれば実現できるでしょうか。

 

 難しい課題ですが、次回、考えてみたいと思います。

 

[注]ここでは、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、

  愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良の各都府県としています。

 

[参考]農林水産省「生産農業所得統計」(2010年)

  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001086043

 

—————————————————————-

  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

—————————————————————-

 

 熊本市在住の毎熊知子さんは、幅広い活動をされています。

 

 その一つが、2009年設立の「フード&ライフスタイル協会」の代表。

 次世代の子どもたちが安全に安心して暮らせる社会作りを目指し、食育

や子育て支援を中心に活動している団体です。

 

 例えば、月に数回、熊本市市民活動支援センター(あいぽーと)や子育

てサークル等で「ゆるベジカフェ」と銘打った調理教室を開催されていま

す。

 技術を教えるというよりは、食材の選び方や農業を支える大切さを伝え

るインストラクター養成講座(不定期)を開催し人材育成に主眼が置かれ

ているようです。

 1116日(土)には、フード・マイレージの講演会を主催して下さい

ました。

 

 また、今年4月には、「菓子工房 myくま屋」をオープンされました。

 

 毎熊さんは、熊本の在来品種「みさを大豆」を何とか残したいと思って

います。

 大正時代、阿蘇地方の井上ミサオさんという方が偶然畑で発見し、栽培

し始めたものと伝えられ、多収ながら小粒で、目(へそ)が黒いために加

工すると見栄えが悪いとされ、商業的な生産はほとんど無くなりつつあり

ます。

 

 一方、県北部の鹿本農業高校では、食育の取組の一環として生産が行わ

れています。

 毎熊さんは、この大豆の販路を拡大するため、作業所等に加工品作りを

働きかけてきたのですが実現に至らず、それではと、自ら手がけることを

決意されました。

 

 そこで、もともとご近所で、生協でも交流のあった「とうふ庵うちだ屋」

さん(県産大豆と昔ながらの製法にこだわる豆腐屋さん)の店舗の一部を

借りて改装し、食品衛生責任者の資格も取得して、「myくま屋」をオープ

ンされたのです。

 

 ここで、みさを大豆を使ったお菓子やドライおからを製造されています。

私もビスコッティやブラウニーを頂きましたが、素朴かつおしゃれな風味

で、大変美味でした。

 もっとも、ほとんど毎熊さんが一人で切り盛りされており、他の活動で

も多忙なため、口コミでの注文に応じるのが精一杯という現状のようです。

 

 さらに毎熊さんは、熊本県立大学の研究員として研究活動の支援や「食

博士ドリル」の編集・改訂に携わっておられるほか、地域の防災計画づく

りやドッグレスキュー等の活動にも取り組んでおられるそうです。

 

 「myくま屋」にお邪魔した時、毎熊さんは、「活動の拠点を持てたこと

が嬉しい。個人でできることは限られているけれども、徐々に周りの人た

ちに食育を広めていきたい」と目を輝かせながら話して下さいました。

 

 参考

  フード&ライフスタイル協会

  https://ja-jp.facebook.com/foodandlife

 

  菓子工房「myくま屋」

  https://www.facebook.com/mykumaya

—————————————————————-

  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

—————————————————————-

ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」更新情報

  「フード・マイレージ講演会−あなたの食が地球を変える」(11

  月16日、熊本市)と「江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座 フー

  ド・マイレージと地産地消」(1123日、東京・新宿)における説

  明資料を掲載しました。

   http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/131116_Kumamoto.pdf

   http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/131123_EdoCon.pdf

 

ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 1120日付け]フード・マイレージと「みさを大豆」

  熊本の知人がセミナーを企画して下さいました。

  熊本の在来大豆を使ったお菓子やオカラ茶を頂きながらの意見交換

 会も。お世話になった阿蘇・産山村の肉牛農家の方も顔を見せて下さ

 いました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/20/

 

 1122日付け]熊本の豊かな食

  熊本2日目。「my熊や」で毎熊さんの活動内容について伺った後は、

 直売所の見学、築200年の農家を改装したレストランで郷土料理。

  熊本の豊かな食を堪能しました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/22/

 

 1124日付け]「コミュニティ農業」への期待

  第3 銀座農業政策塾のプレ講座として、蔦谷栄一先生から「コミ

 ュニティ農業」の内容、位置づけ、期待等について講演がありました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/24/

 

 1125日付け]共生による復興・ふゆみずたんぼ

  有楽町「さえずり館」で開催された岩渕成紀さんのセミナーでは、

 生物多様性を重視し自然と共生することによる復興の様子等が報告さ

 れました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/25/

 

 1127日付け]江戸コン育成講座はグループワークなど 

  江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座(第3期総合コース)でグルー

 プワーク等を実施。翌日は小金井市で懇親会など。

   http://food-mileage.jp/2013/11/27/

 

 1128日付け]ミック入来さんライブ「ベジ太の歌」など 

  高円寺で開催された野菜ロックミュージシャン・ミック入来さんの

 ラ イブ爆発。楽しい新曲「ベジ太のうた」も披露。

   http://food-mileage.jp/2013/11/28/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  中には締切等の場合がありますので、参加を希望される場合等は、

 必ず事前にお問い合せ下さい。

 

  江戸東京野菜コレクション2013 「幻の練馬大根+大道芸」

  日時:123日(火)18:3020:30

  場所:ポレポレ坐(中野区東中野4-4-1

  主催:TYC2013実行委員会

  (詳細、お問合せ等

   http://za.polepoletimes.jp/news/2013/06/20131232013.html

 

  シェアトーク・檜垣忠雄「日本の田舎について」

  日時:125日(木)19:00

  場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢 2-32-11

  主催:シェア奥沢

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/559453810809570/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

 Hinoha
la Dish
」ひのはらダイコン地産和食プロジェクト

  日時:127日(土)9:3017:00JR武蔵五日市駅集合)

  場所:東京・檜原村

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/750867511595053/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  第11回品川マルシェ「全快野菜ちゃん」

  日時:1215日(日)10:0015:00(売り切れ終了)

  場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/537161609708409/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  あっぱれ野菜!STUDY
& CAFE <
江戸東京野菜編>vol.17

    〜伝統大蔵大根と高倉大根〜

  日時:1215日(日)11:0013:30

  場所: くりやぶね(小金井市本町1-12-6

  主催:NPO法人ミュゼダグリ

  (詳細、お問合せ等

   http://www.musee-d-agri.org/pdf/2013/s_c131215_3.pdf

 

—————————————————————-

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は、全て筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は1217日(火)(旧暦・霜月十五日)の配信予定です。

 

================================================================

 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

================================================================

  発行者:中田哲也

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/