図13 乳製品のカーボン・フットプリント(CO2排出量)


5 フード・マイレージ基礎知識
(13) フード・マイレージ指標の限界-2 (LCA-2)

フード・マイレージ指標は、地産地消が輸送に伴う環境負荷を低減する効果があることを説明する上で、単純で分かりやすい指標である一方、2つの大きな限界・問題点があります。

一つは輸送に伴う二酸化炭素排出量は大きく異なること。
もう一つは、生産、包装、流通、加工、消費、廃棄・リサイクルという食料のライフサイクルのうち、輸送の過程のみに着目した指標であることです。

前回は、北海道のコープさっぽろ(札幌市)によるカーボンフットプリントの算定、表示の取組において、みそとポテトピラフのライフサイクルにおけるCO2排出量のうち、輸送部分が占める割合はそれぞれ7%、2%弱に過ぎないことを紹介しました。

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/12_CFP1.pdf

LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いた研究は、海外でも盛んに行われています。その中には、イギリスのフードマイルズ運動(いわゆる地産地消運動)に批判的な内容のものもあります。

ニュージーランド・リンカーン大学のソーンダースらは、ニュージーランドからイギリスへの主な輸出農産物についてエネルギー使用量及び二酸化炭素排出量の計測を行いました。その結果、例えばイギリス国内で生産された乳製品は、ニュージーランドで粗放的に生産され輸入したものに比べて、その輸送のためのエネルギーを加えても、全体で約2倍のエネルギーを費やしているとしています。

]このため、イギリスのフードマイルズ運動は、国際貿易を歪め、結果的に環境負荷を増大させる恐れがあると警告しています。

それでは、フード・マイレージという指標には有用性が無いのでしょうか。次回以降も考察を続けていきたいと思います。

[参考]
Sounders, et al. “Food Miles ” Lincoln Univ., July 2006, Table 7.1(p.61)
https://ucanr.edu/datastoreFiles/608-324.pdf