日本の中心・東京の、そのまたど真ん中・銀座で、日本の農業・農村を真剣に考える取組が続けられています。
その名は「銀座農業政策塾」。
食へのこだわりのある方、農業・農村のサポートを考える方、市民農園や家庭菜園に興味のある方、そして新規就農を考える方達を対象に、日本農業の現状と課題、関連する法制度等に関する実践的なレクチャーと、 塾生一人ひとりがコミュニティ農業、農的社会の実践を目指すというものです。
本年2月からスタートする第4期「コミュニティ農業のすすめ」は、基礎編2回、本編6回からなり、4月にはコミュニティ農業体験ツアーも行うという意欲的な内容。現在、塾生募集中です。
2015年1月21日(水)は、第4期銀座農業政策塾のメイン講師を務められる蔦谷栄一先生(農林中金総合研究所客員研究員、農的社会デザイン研究所代表)をお迎えして、プレ講座「食と農に興味のある人のためのTPP、農協改革、企業参入」が開催されました。
銀座は冷たい雨が落ちていますが、会場である貸し会議室の一室は、20名以上の参加者の熱気に包まれていました。
19時を回り、主催者であるNPO法人 農業情報総合研究所の植村春香理事長の司会により開会。
まず、塾長である高安和夫さん(NPO法人 銀座ミツバチプロジェクト理事長)から開会あいさつ。銀座農業政策塾は、早くも4期を迎えたとのこと。
なお、会の後半では、高安さんから「第1回みつばち千年の森植樹大会」(3月21日~22日、宮崎・えびの市)「テッラ・マードレ in 学習院女子大学」(1月24日)の紹介がありました。
続いて、参加者から簡単に自己紹介。
大学教授、民間シンクタンク、生協、八百屋さん、公務員など。銀座農業政策塾のリピーターの方が多いようです。
蔦谷先生の講演は、自己紹介から始まりました。
農林中金総研では有機農業、飼料用イネ、都市農業等の調査研究に携わられ、一昨年10月の退職後は自ら看板(農的社会デザイン研究所)を掲げて活動されておられます。
ご自身の経験を踏まえ、「研究や理屈だけではなく、自ら現場に入り現場から変えていくことが必要」、との話がありました。
そして現在、「世界中で格差が拡大し、国のあり方が問われている」とし、
「アベノミクス下の規模拡大と効率性追求の『攻めの農政』自体は否定しないが、もう一つの極である中小零細農家への対策も必要。工場の海外移転等に伴って地域の就業機会が減少し、兼業農家も減少している」
一方で、「仮にTPPが締結されることとなれば(自分はTPPには反対だが)、大規模層ほどその影響は大きい。中小農家を含む地域農業全体として、消費者と連携して販路を確保していく取組が必要。
安全・安心だけではなく、健康や公益性など、消費者とともに価値を創造していくという視点が重要」
(注:写真は主催者から提供頂いたものです。)
大きな議論となっている農協改革に関しては、
「協同組合は運動体であって同時に事業体。協同組合原則は、むき出しの資本主義に対抗して、生産者と消費者を結びつける機能がある。
今の全中、農協がその役割を十分に果たしているかとうかは議論はあるが、本来の趣旨、目的を追求していくことは必要。冷静な議論が求められる」とのこと。
そして、
「今後は『農的社会』を目指すべし。
重要なことは生命原理。いのち、くらしが絶対的なペース。GDPだけでは豊かさは測れない。若い人たちの「田園回帰」も進んでいる」とし、同時に、
「私は悲観し過ぎてはいない。
仮にTPPが妥結して国全体の食料自給率がさらに下がることになっても、地域にこだわり、面白い農業に取り組んでいる人たちは残る。そのような人達を支援する農協の役割も残る」
「だから、理屈だけではなく、皆さん、一緒にコミュニティ農業と農的社会を創造していきましょう」、と参加者に、力強く語りかけられました。
講座終了後は、蔦谷先生も含め10名ほどで近くの居酒屋さんに移動、アルコールも入ってさらに談論風発。
必ずしも農業や農業政策の専門家ではない方でも、日本の農業や農村を真剣に考え、自分で何かできることをやろう、という方達が、大都会・東京にもたくさんいらっしゃいます。
このような人達と、地域で農業に取り組んでいる生産者の方達が、ゆるやかに、しなやかに繋がっていくことが、厳しいと言われる日本の農業と食料を再生していく方向かも知れません。
蔦谷先生は、そのような姿を「コミュニティ農業」と名付けられ、豊富な事例とともに、『地域からの農業再興~コミュティ農業の実例をもとに~』(2014年1月、創森社)に分かりやすく整理されています。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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