2015年のゴールデンウィーク前半は、4月の天候不順が嘘だったような好天が続きます。逆に水不足が心配に。
4月30日(木)、5月1日(金)は休暇を頂き畑仕事。
といっても、自宅近くに借りているわずか30平米の市民農園の一区画ですが。
近所のJA直売所やホームセンターで苗を購入。
昨年は種から育てることにこだわったためか、成果が今イチ。今年は苗と種を併用することに。
JA直売所の苗には、生産者の名前と使用した農薬の種類と使用回数が書かれています。
店内にあった「柳久保ラーメン」もゲット。東久留米市を中心に復活が進む伝統種の小麦を使った新製品です。
山梨・上野原市西原(さいはら)地区で頂いてきたジャガイモ(在来種・ネガタとキタアカリ)と、たかとうインゲンも芽が出ています。
植えた覚えのない蕎麦も芽を出していました(これもルーツはさいはらです)。
畝を立て、一部には黒マルチを敷き、トマト、キュウリ、ナス、ししとう、ピーマン、枝豆、小玉スイカの苗を植え付けました。
昨年から植えてあった玉ネギも太りつつあります。
トウが立ったホウレン草と、花盛りの雲仙こぶ高菜と伝統大蔵大根は、種採り分を残して処分。
柔らかそうな花芽の部分は夜、湯がいて冷ややっこに添えて頂きました。春の味。ホウレン草はちょっと苦みが強いです。
5月2日(土)は、久しぶりに自由が丘に足を運びました。
多くの人たちが憩う緑道を抜けて「シェア奥沢」へ。多摩美大教授・堀内正弘先生が自宅の一部を改装してシェアスペースとして開放されています。
この日17時から開催されたのは、経済発展と平和:環境の制約のなかで考えると題するシェアトク。
講師の石井一也(いしい・かずや)先生は1964年生まれ。早稲田大、京都大の大学院を修了(経済学博士)。スタンフォード大学経済学部客員研究員などを経て、現在は香川大学法学部教授。
主な業績にダースグプタ著『ガンディーの経済学 -倫理の復権を目指して』(作品社、2010、監訳)、『身の丈の経済論-ガンディー思想とその系譜』(法政大学出版会、2014)等があります。
冒頭、堀内先生から「シェア奥沢での石井先生のシェアトークは2回目。前回はガンディー思想全般について説明頂いたが、今回は、現在の社会状況に即して展開していきたい」との開会挨拶。
そして石井先生の講演は、ガンディーを研究テーマに選ばれた経緯に触れられた後、世界の現状の話から始まりました(以下、文責中田)。
「世界の人口は急増中。しかし圧倒的な経済格差がある。世銀総裁のマクナマラは、1970年代の時点ですでに『絶対的貧困は放置できない』と警告していた。
ただし、貨幣価値だけで豊かさを計ることには注意が必要。
さらに現代社会は、生物の絶滅など深刻な環境問題にも直面している」
「南北問題は、東西問題の文脈の中で認識されてきた面が強い。開発援助は、人道的な観点というよりは東西冷戦時の戦略としての位置づけだった。その理論的背景にあったのがロストウ『離陸論』に代表される開発経済学。冷戦終了後は、センに代表される人間開発理論、人間の安全保障の議論が主流に」
「しかし、これら開発経済学は高所得国を到達すべき目標とし、豊かさと貧しさの関係性を無視していること、環境への配慮がなされていないこと等の問題がある。新しい経済学の開拓が必要」
「シューマッハーは、資源収奪的ではない全ての人の手が届く「中間技術論」を提唱。
また、ガンディーは『世界の貧困は、大量生産ではなく大衆による生産によってのみ救われる』として、チャルカーによる糸紡ぎ等を推奨した」
ここで先生は、インドで買ってこられたという綿のチョッキと帽子を着て見せて下さり、紡がれた綿とともに回覧して下さいました。柔らかく暖かな手触りです。
そして最後に、
「南北問題は、東西問題がほぼ解消した21世紀においても、なお深刻。現代の人類は、枯渇する資源を互いに(将来世代からも)奪って生きている」
「ガンディーやシューマッハーの考えは、豊かな人々がその富を諦め、他者と分かち合うことを求めている。
しかし、この『身の丈の経済』論は、現状肯定派の人々に「非現実的」なものとして却下されるかもしれない。しかし、彼らの目に『非現実的』なものに見えれば見えるほど、現状に対する根本的な批判を内包しており、それを乗り越えてゆくための論理(ないしは倫理)を示している」
等と、まとめられました。コンパクトで分かりやすい説明でした。
引き続き、30名ほどの参加者との間で質疑応答。
ある男性からの「例えば服でも、生産性を低下させれば高価になる。一般の人が手に入れにくくなるのでは」との質問に対し、石井先生からは 「生産性よりも、どれだけの人が労働に従事できるかが重要。消費者が安い方にばかりなびいていては成り立たない」等の回答がありましたが、質問された方は得心されないようです。
これに対して他の参加者からは、
「市場を通さない労働というものもあるのでは」
「スペインやフランス等では若者の失業率が高く、これら先進国こそ、カンディーの思想に学ぶべきところは多い」
等のコメント。
素朴ながら本質的な部分を突く質問をきっかけに、多くの参加者を巻き込んだ議論が白熱してきたところで、第1部は終了。
間に料理を出して下さるところが、シェア奥沢のイベントのいいところです。
美味しいだけではなく、他の方との交流の場になります。一緒に食べることには、人を繋ぐ大きな力があります。
この日も、スタッフのIさん(堀内先生のところの男子学生さん)が中心になって、素晴らしい料理を準備して下さいました(ご馳走様でした)。
好みの飲みものを手に、しばし懇談。
20時近く、テーブルを片づけて車座になって第2部がスタート。
第1部の石井先生の問題提起を受け、講師、参加者の間で対話を展開(シェアトーク)します。
服飾関係の専門学校に通っているという女性は、
「服を買う時、それがどのように作られたものか、本当に必要なものか自問していきたい。自分のできるところから行動したい」
天然素材による家づくりに携わっている女性からは
「効率性重視の現状に疑問を持ち退職。野菜作りなども含め、自分のできることから行動に移していきたい」
また、自宅を改装してレストランを開いている女性「顔のみえる範囲で繋がっていくことが大事では」等の発言。
一方、NPO勤務の女性からは「個人の行動変化に期待するだけでは不十分。もっと政策提言をしていくべきでは」との意見。
大手建設機械メーカーを早期退職しフリーでパーマカルチャーを拡げる活動をされているという男性は、持参されたチャルカーの模型(実際に紡ぐことができます。)を見せて下さりつつ、
「個人が使いこなせるのが適正技術。3Dプリンタなど、新たな適正技術がどんどん出てきている」
大学で平和学、開発学を研究されている男性は
「ヨーロッパやラテンアメリカの多様性に、学ぶべきところはたくさんある。ガンディーの思想を政策や制度にどう反映させていくかが課題」との意見。
元新聞記者で反核運動に携わっておられる男性からは
「本当に重要な情報を社会に流し、共有されるような仕組みを作っていくことが必要」等の発言。
他にも様々な意見が出されました。
最後に堀内先生からは、
「今日の話からも多くの課題が明らかになった。シェア奥沢では、引き続き分科会形式で様々なテーマについてしぉあトークを続けていきたい」とまとめられました。
「中締め」の後も10名ほどが残って意見交換の続き。22時を回って私は中座させて頂きましたが、刺激的で多くの「気づき」を頂いたシェアトークでした。
効率・生産性優先とは別の新しい方向を模索しつつある現代社会ですが、その内容は、例えばスロー、オルタナティブ、パーマカルチャー、ロハスなどのカタカナで表わされることが多く、今一つ、感覚的にすとんと落ちない違和感がありました。
それを、「身の丈の経済」という日本語で表わせることを教えてもらえたのは、私にとって、今回のシェアトークの最大の成果のひとつでした。
石井先生の著作など、さらに勉強してみたいと思います。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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