2015年10月14日(水)。
19時半から新宿のカフェ Naked Loft で開催されたのは、「緊急座談会!元陸自レンジャー隊員と語らう戦場のリアル、自衛隊の実態を知っていますか?」と題するイベント。
フロアはシニアから学生まで50名ほどの参加者で満席。開始前から熱気に包まれてい ます。
定刻、今夜の出演者が入場。フラットなステージは、すぐ目の前です(私は真横の至近距離に着席)。
帰りの時間を心配しなければならない23時過ぎまで、会場も一体となって熱い議論が闘わされました。
その中で印象に残った部分を備忘的にメモしておきます(聞き間違いや誤解があるかも知れず、本ブログの文責は全て筆者にあります)。
19時30分に4名が入場。
雨宮処凛(あまみや・かりん)さんは1975年北海道生まれの作家・活動家。「反貧困ネットワーク」副代表等を務められています。
「突然、司会をやれとの指名があり、猛獣使いの心境」という言葉で開会。まずは自己紹介から。
「ここ9年ほど貧困や格差の問題に関わってきた。
24歳の時、2度目の海外旅行先のイラクで劣化ウラン弾で亡くなる多くの幼児を目撃し。戦争は最大の較差・貧困問題との視点から有識者等にインタビューし『14歳からの戦争のリアル』(河出書房新社)を上枠した」
伊勢崎 賢治(いせざき けんじ)さんは1957年、東京生まれ。
東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンで武装解除等を指揮。現在は東京外国語大教授かつJAZZトランペット奏者。
「安保法制騒ぎがなければアフガン問題の研究に注力していたはず。アフガンは大変な状況にある。対話が成立していない。ビデオでコミュニケーションできる施設の設置、当事者を東京に招いて の対話等に取り組んでいきたい。アフガンは自分のライフワーク」
井筒 高雄(いづつ たかお)さんは1969年東京都生まれ。
高校卒業後、自衛隊体育学校を経て陸上自衛隊に入隊(レンジャー隊員)。1992年のPKO法成立を受け依願退職。
「東京五輪の円谷幸二選手(マラソン)に憧れ、高卒後、自衛隊体育学校へ。 その後、体力があるならとレンジャーに。訓練前に遺書を書かされた時、戦争とは死にに行くことだと皮膚で感じた。最近、『安保法制の落とし穴』(ビジネス社)、『自衛隊はみんなを愛してる!』(青志社)を緊急出版」
諏訪原 健(すわはら たけし)さんは1992年生まれ。自由で民主的な日本を守るための学生による緊急アクション・SEALDsの市中心メンバーの1人。
「筑波大学大学院博士前期課程 (教育社会学)に在学中。SEALDsでは理詰めと言われている」
この日のテーマについて議論が深められていきます。
井筒さん
「安保法制が成立したが、自衛隊員自身、あるいは家族の意思を再確認することが必要ではないか。危険手当の額、もし死亡した場合の賞じゅつ金や年金額の水準等についても、国民全体で議論していくことが必要。
自衛隊員の命はぞんざいに扱われており、救命訓練(止血や気道確保等)さえ十分になされていない」
伊勢崎さん
「国際社会は、まだまだ無法地帯。そこに軍隊を出すことについては法治国家としての法的な整理が不可欠。現在の日本は国家が責任を持つという体制になっていない。軍法もない。
米、EUはアフガン戦争に20万人の軍隊を投入したがテロリストには勝てなかった。現在はCOINという戦略を採用している。これは敵を軍事的にやっつけるのではなく、人心掌握戦に勝つことを重視するもの」
諏訪原さん
「SEALDsは安保法制反対デモで有名になったが、色々と勉強もしている。正直、これまで自衛隊のこともよく知らなかった。現状のままでいいとは思っていない。議論を終わらせてはならない」
井筒さん
「米国は軍事面での民営化を進めている。自衛隊を使えるなら経費も掛からず、安保法制は米国にとって都合のいい制度」
伊勢崎さん
「自衛隊では、交戦という話自体がタブーになっている。自衛力とは日本だけに通用する概念。国際法における自衛権とは交戦権に他ならない。ルワンダでの虐殺を止められなかったトラウマから、PKOの任務や内容が大きく変化している。住民保護のためには交戦主体となりうる」
井筒さん
「現行の憲法9条からみると、自衛隊の存在自体が違憲と言わざるを得ない。まず、このことを認めることから、国民的な議論を始める必要があるのてはないか。憲法や法律上の自衛隊の位置づけについて、きちんと整理することが必要。
あえて挑発的に言うが、政治もメディアもこの問題から逃げている。日本人は正面から戦争に向き合っていない。リアリティがない」
諏訪原さん
「SEALDs頑張れと応援してくれることは有り難いが、それぞれが自分たちのできることを積み上げていくことが大事ではないか」
伊勢崎さん
「これまでのPKOは全て憲法違反。民主党政権がソマリア派遣を決めた時、浮遊する世論を目の当たりにして私は『日本人には9条はもったいない』と書いた。ちなみに現在、南スーダンに部隊を派遣している先進国は日、韓、中のみ。PKO参加5原則は南スーダンでは完全に崩壊している」
22時30分ころから会場との質疑応答。話はさらに深まっていきます。
伊勢崎さん
「戦後、日本が戦争していないなどとは大間違い。税金を払い続けることで、私たちは米国の戦争に荷担してきた。ただ、護憲派には対案がないことが問題」
諏訪原さん
「言いたいことを言っているだけなら意味がない。SEALDsも反対デモだけやっている訳ではなく、世界をリードしていけるような平和を提示していけるのではないかと、色々と学習している」
雨宮さん
「今回の安保法制に自衛隊員が自ら声を上げないことについて、組織内で圧力があったようなことも聞いている。派遣切り等で苦しんでいる若い人たちへの自衛隊員の募集活動が活発になっている。戦争は、格差や貧困を必要としている」
井筒さん
「自衛隊員は入隊に際して『国民の負託に答える』 旨を宣誓している。自衛隊をどう活用するかは、国民の皆さんが決めること」
伊勢崎 「難民受け入れ等についても、とにかく、世界から嫌われないように対応していく ことが大事」
熱のこもったトークは、23時半頃まで続きました。
井筒さんが仰ったように、「安全保障や自衛隊についてちゃんと議論しようよという気運が高まってきている」のかも知れません。私自身、これまでそれほど意識してこなかった(意識せずに済んできた)問題です。
取りあえず、本を数冊求めて熱気の冷めやらない会場を後にしました。
【ご参考】
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