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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇
No.81; 2015.11/12(木)[和暦 神無月朔日]発行
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和暦では神無月に入りました。神々は出雲に出張中です。
紅葉が散り始め、木枯らしが吹き始める季節。ちなみに神無月は新酒
が醸造されることから、醸成月(かもしなづき)とも呼ばれるそうです。
時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)
と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月朔
日の配信です。
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◆ F.M.豆知識
食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、
あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ
ていきます。
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本欄では、ある新聞の社説をきっかけとして、前回から米の価格と水
田農業について取り上げています。
前回は2015年産米の価格(相対取引価格)は前年産米に比べて1,000円
ほど高くなっているものの、2013年産米以前の水準までは必ずしも回復
していないことを紹介しました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/38_aitai.pdf
今回は、この米価の水準を農家の米生産費と比較してみます。
農林水産省「農業経営統計調査−平成26年産
米生産費」によると、20
14年産米の60kg(1俵)当たり全算入生産費(資本利子・地代算入生産費)
は平均で1万5,416円となっています。
内訳をみると、労働費、農機具費等が大きな額となっています。
リンク先の図39の棒グラフは、これを作付規模別に示したものです。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/39_cost.pdf
これによると、0.5ha未満の小規模層においては2万5,510円と平均より
65%高くなっていますが、規模が大きくなるに従い生産費は下がり、15
ha以上の大規模層では1万1,558円と平均を25%下回っています。
このように、米生産については明らかな「規模の経済」(規模拡大に
よる生産費低減効果) が認められます。ただし、5haを超えると低下する
度合いは小さくなっています。
それでは、この生産費は価格と比べるとどのような水準にあるでしょ
うか。
青い破線が前回紹介した相対取引価格(2015年産米、2015年9月) で、
全銘柄平均で1万3,178 円となっています。これはJA全農等が卸売業者等
に販売する際の取引価格ですので、ここから流通経費等(2,600円と仮定)
を差し引いた額(1万578円、青い実線)が生産者の手取り価格となりま
す。
これを棒グラフと比べると、大規模層においても農家手取り価格が生
産費を下回っている状況が分かります。つまり現在の米価の水準では、
規模拡大を進めてコスト削減に努めてもコスト割れとなっているのです。
なお、米農家に対しては、収入減少影響緩和対策(いわゆる「ナラシ
対策」)、直接支払い交付金といった助成制度があります。これらによ
る補てん後の農家手取り価格は1万2,960円(試算、赤い実線)となり、
5ha以上層では何とか利潤が出る状況となっているのです。
[出典等]
農林水産省「農業経営統計調査 平成26年
米生産費」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/seisanhi_nousan/pdf/seisanhi_kome_14.pdf
農林水産省「米穀の取引に関する報告」
(農林水産省ホームページ「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、
民間在庫の推移等」)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129409
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお
られる方達を紹介させて頂いています。
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認定NPO法人まちぽっと(まちぽっと)は、市民によるまちづくりや都
市計画、これからの住まい方の研究と提案など多様な分野で活動してい
ますが、その一つである助成事業を実施しているのがソーシャル・ジャ
スティス基金(SJF)です。
SJFの事業は、助成事業と対話事業が両輪となっています。
助成事業とは、「社会的公正」の視点から、社会の一般的な考えや今
の政策・制度では見逃されがちな大切な社会的課題に取り組み、解決策
の提案(アドボカシー活動)を行う団体の事業に資金助成するもので、
2012年から15年までに総額約800万円、11団体に対して助成を実施してい
るとのこと。
例えば、「死刑囚の再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業」、
「子どもの多様な学びを実現するための立法を目指す活動」、「放射線
防護についての情報等を共有し次の一歩を模索する市民科学者国際会議
の開催」等に対して助成を行っています。
もう一つの対話事業とは、現下の社会的課題を共有し解決策を考える
対話の場である「アドボカシーカフェ」を開催し、多様な市民が対話を
通してアドボカシー活動に関わる機会を広げていくというもの。助成対
象事業についても、それをテーマにしたカフェを開催し、単なる資金提
供にとどまらず社会対話の側面からも支援するという面もあるそうです。
このカフェには、2011年夏から15年春の第35回までに延べ1000人超が
参加しているとのこと。
このSJFアドボカシーカフェには、私も何度か参加させて頂きました。
11月4日(水)には、第40回「民主主義をつくるお金−ソーシャル・
ジャスティス基金の挑戦」と題して、小熊英二さん(慶應義塾大学総合
政策学部教授)、上村英明さん(SJF運営委員長)、西川正さん(ハンズ
オン埼玉理事)により、社会学者、社会活動家というそれぞれの立場か
ら「社会を変えること」等についての興味深い議論が行われました。
ところで最近、SJFはこの日のカフェのタイトルと同じ「民主主義をつ
くるお金−ソーシャル・ジャスティス基金の挑戦」と題する書籍を出版
されました。
見過ごされがちな声を社会的課題として取り上げ解決策を提案する市
民の活動(アドボカシー活動)を支えることの重要性について、豊富な
具体的な事例とともにまとめられています。
色々と参考になりそうです。
[参考]
ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)
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◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント
の開催情報等をお届します。
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▼ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
○ 2015東京ゴマ01最終ステージ
(10/26)
http://food-mileage.jp/2015/10/26/
○ ご近所ラボ新橋 全体カイギ #1(ここはどこ?)
(10/31)
http://food-mileage.jp/2015/10/31/
○ 東京で出会う会津・山都の人と食 (11/01)
http://food-mileage.jp/2015/11/01/
○ 土と平和の祭典2015 @日比谷公園
(11/04)
http://food-mileage.jp/2015/11/04/
○ 「ユギムラ牧場 だらだらまつり」@東京・八王子 (11/05)
http://food-mileage.jp/2015/11/05/
○ SJF主催アドボカシーカフェ「民主主義をつくるお金」 (11/09)
http://food-mileage.jp/2015/11/09/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には
必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 民家フォーラム東京 2015
日時:11月14日(土)9:00〜16:00
場所:登録有形文化財「顧想園」村野家(東京・東久留米市柳窪)ほか
主催:NPO日本民家再生協会
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.minka.or.jp/news/2015/11/2015-d5f5.html
○ 「コミュニティの力で農場を作り、運営していく農業!」研究会&懇親会
日時:11月14日(土)15:00〜18:00
場所:バー クオーレ(Bar Cuore)(池袋西口)
主催:農業情報研究所
(詳細、お問合せ等↓)
http://m-motegi.at.webry.info/201510/article_9.html
○ ふくしまオーガニック旅2015「浜通り・広野町&いわきツアー」
日時:11月21日(土)〜22日(日)
場所:福島・広野町、いわき市
主催:NPO法人福島県有機農業ネットワーク
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/861684247279443/
○ ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2015(第3回)
日時:11月22日(日)7:00新宿駅西口集合
場所:福島・広野町
主催:認定NPO法人JKSK女性の活力を社会の活力に
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.jksk.jp/j/yyp/yyp_cotton2015_2.pdf
○ 第8回脱成長ミーティング「協同組合の可能性と課題−成長なき時代に」
日時:11月22日(日)13:30〜17:00
場所:ピープルズ・プラン研究所(メトロ江戸川橋
徒歩5分)
主催:脱成長ミーティング
(詳細、お問合せ等↓)
http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/ci_hui_11_22ri.html
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* 今号のコツコツ小咄。
「大豆を使った料理は、アイディアさえあればいくらでも新メニューができるよ」
「創意(SOY)工夫だね」
注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)投稿中です。
https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7
* 次号No.82は11月26日(木)[神無月十五日]の配信予定です。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて
頂いています。いつもありがとうございます。
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方
の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也
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