2015年12月15日(火)の終業後は、京王井の頭線・駒場東大前駅近くの番来舎(ばんらいしゃ)へ。
ベテランママの会(福島・南相馬市)の番場さち子さんが代表をされている「ママ応援サロン&学び舎」です。
この日開催されたのは、福島学 in 駒場 第4弾「廃炉編」。
開沼博先生(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター)の「福島学カフェ in 駒場」の第4弾です。
私は去る9月25日(金)に続き2度目の参加。
19時過ぎ、番場さんの簡単な紹介に続いて、早速、開沼先生の話が始まりました。(文責、中田)
「福島には2006年から10年ほど関わっている。 福島大学の教員になってから4年目。
人、物、情報を継続的に回していくことが重要と考え、エクスカーション(スタディツアー)で一般市民、地方議員、企業のCSR担当の方達を受け入れ、現地の方達につなぐ活動をしている。一方、自分が出かけていく『福島カフェ』を各地で開催している」
「前著『初めてのフクシマ学』(2015年3月)のおさらいにもなるが、311で起こった特殊な問題と、311以前からの普遍的な問題を分けて考えることが必要。何でも震災や原発事故のせいにされがちだが、高齢化や人口減は311以前から継続し ている問題」
「福島の問題には語りにくさの壁がある。それは過剰な政治問題化、過剰な科学化(専門用語を知らなければ語れない)。
そして最大の壁はステレオタイプ化、スティグマ化 (負の烙印を押すこと)。風評は単なる噂ではない。経済的なダメージを与え、差別を助長する。今も多くの人が堪え忍んで暮らしている」
「語りにくい福島の問題をローコンテクスト化(敷居の低い議論に)していくことが必要。
先日、神戸の大学で講演した時、福島の人口のうち県外避難者の割合はどれ位かと聞くと40%位ではとの回答。現実には2.7%。いわきや郡山など震災前より人口が増加している地域もある。
もちろん少ないからといって軽視していい訳ではなく、弱い部分や悪化している状況を可視化していくことが必要。農業は震災前から衰退傾向だが、これを機に引退するという人も多い」
「震災前、人口5000人だった広野町の現在の居住者は2200人。しかし、水道使用量からみると5000人が広野町に住んでいる計算で、残りは廃炉や除染の作業員の方達。
帰還が始まった楢葉町ではゴルフ場跡地に作業員用の宿舎を建設する計画があるが、どう共生していくかが自治体にとっての大きな課題に」
「中間貯蔵施設は東京ドーム18杯分。土地の買収は進んでいない。フレコンバッグも、今、改めて計測すると意外に線量は下がっている面も。
避難し続けていることのリスクへの認識も高まってきた。復興について見直し、多様なあり方を探る余地はあるのでは。合意形成には時間がかかるだろうが」
「福島復興に必要な論点として、『優しい選択と集中』が必要ではないかと考えている。
支援は相双12市町村に重点化してはどうか。風評被害はほぼ一次産業と観光に集中。一方、復興予算の縮減が予想される来年度以降は建設業等も課題に。生活面では自立という視点が重要では」
「『初めてのフクシマ学』では、廃炉と放射線忌避感情(自主避難等)は扱えなかった。
これらを社会科学的な観点から分析を加え、明年2月に新著を出す予定。エビデンスに基づく復興、『脱魔術化』(M.ウェーバー)が必要」
「マルクス経済学では経済を下部構造、政治、文化、教育、メディア等を上部構造としている。
福島学では、下部構造として福島に最も近い(ど真ん中にある)廃炉と、福島から最も遠い放射線忌避感情の問題があり、上部構造として行政、産業、雇用・労働、家族、教育等があるという枠組み」
「そもそも、廃炉をどこまできちんと理解してきたのか。
キノコ雲、汚染水タンク、潜入取材というステレオタイプとなっていないか。SNSの馬鹿馬鹿しいデマを本気で信じている人も多い。
オンサイト(福島第一原発)とオフサイト(周辺地域)の両方について、データを整理し、デマを訂正(「これは違う」というネガリストを作成)していくことが必要」
「吉川彰宏さん(AFW)、竜田一人さん(『いちえふ』作者)達と『福島第一原発廃炉独立調査プロジェクト』(仮称)に取り組んでいる。
目的は廃炉の「見える化」。
独立性、客観性、当事者性という視点を重視しつつ、分かりやすくデータを整理しながら、書籍や動画による啓発、学生など一般市民による視察の定期化等に取り組んでいきたい」
20時40分を回り、会場との質疑応答。
何度か福島を訪問し、地元で暮らしておられる方達に寄り添っていきたいという方など。
開沼先生からは、「社会的起業やNPOが頑張って、大手資本や国を巻き込んでいくという視点が重要」等の回答。
引き続き、同じ会場で立食形式の懇親会。
スタッフの方達が豚汁や「おにぎらず」を準備して下さいました。
シニア世代の居場所づくりに取り組んでおられるラジオ番組製作会社の方(南相馬出身)、福島県から政策研究大学院大学に通っておられる若い男性、何度かボランティアで福島を訪ねるうち移住を決意されているという農学部の女子学生など、様々な方のお話を伺うことができました。
番来舎では、今後も開沼先生等を講師に招いての「福島カフェ」の取組を続けていかれるそうです。
ここも東京に居ながらにして、福島の実情に触れることのできる貴重な場所です。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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