築150年の古民家をゲストハウスに雑穀の郷づくりを

14日(木)に最初に熊本で発生した地震は、依然として余震が終息せず、しかも震源が活断層に沿うように東北の大分や南西の八代方面にも移動しています。
関連死の方も含め犠牲になられた方にはご冥福をお祈りすることしかできません。また、今も不安で不自由な生活を強いられている多くの方々に、お見舞い申し上げます。

そのような時でも、季節は巡り、多くの花たちが咲き誇っています。
青空を押し上げるハナミズキ(幸せが100年続きますように、といった歌がありましたね)、民家の生垣のモッコウバラ、日比谷公園の藤も満開です。
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2016年4月20日(水)の終業後は、東京・雑司ヶ谷にある「がんばれ!子供村」へ。
民間のグループ企業が社会貢献活動の一環として運営するボランティア、NPO法人、個人向けの無料貸出施設です。
あれ、明るいと思ったら隣にコミュニティカフェがオープンしています。
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この日19時から開催されたのは、都市農山漁村交流しごと塾「古民家再生シリーズ」の第1回、「築150年の古民家をゲストハウスに雑穀の郷づくりを」と題するワークショップ。
主催はNPO法人ECOM(エコ・コミュニケーションセンター)です。

少々遅刻して3階の会場に入ると、20名ほどの人が集まり、ゲストの長田容子(おさだ・ようこ)さんの話が始まっていました(以下、文責は中田にあります)。

「21歳の頃、夜は大学に通いながら新聞社や広告デザイン会社のアルバイトで忙しくしていた時に、『農家民泊』という言葉に出会った。田舎に拠点を持ちながら、行きたい時は都会にも行けるようなライフスタイルに憧れ、インターネット等で調べるうち、山梨・上野原市西原(さいはら)の古民家に住む同い年の女性のことを知り、訪ねていった。
そうすると、一目惚れ。都会からほど近いにもかかわらず、自然豊かな景色や地元の方達の素朴で熱い人柄に触れ、ここに住みたいと強く思った」
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「地域の方と交流するなかで畑を借りることができ、毎週のように開墾に通った。そのうち空き家も借りられることとなって2007年11月に移住。その後は畑仕事を続けながら、友人とイベント(蕎麦うち新年会、お花見ランチ、はたけっとまーけっと等)を企画・開催し、地域の方たちもどんどん参加してくれるようになってきいった」

「その後、イベントの準備等を手伝ってくれていた地元の大工さんと結婚。『容ちゃんにしかできないことがある』と言ってくれている。2人の子宝にも恵まれ、子育てに追われてつつ、様々な活動に関わっている」

「その一つ、上野原市の移住・定住促進事業の委託を受けたNPO法人さいはらの活動として、この2月には空き家マッチングツアー&交流会を2回実施した」

「自宅隣の築およそ150年の古民家の再生にも取り組んでいる。壊すしかないと見放されていたのが、今日も来て下さっている森田千史先生(一級建築士)や森良さん(ECOM)の協力を頂き、昨年は9月の大掃除合宿(注:中田も参加させて頂きました。)から数回にわたってワークショップを開催した。伝統工法により地元の木材等を使って修復している。
今年も、5月7日(土)の土壁用の土づくりから何度か開催する予定で、11月には交流拠点としてお披露目する計画」
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「また、西原は、代々雑穀の種を受け継いで生産されている農家の方がおられ、全国的にも注目されている。これをポン菓子に加工して地域おこし等(結婚式でのポン菓子シャワーなど)に活用できないかと考えているところ」

「まだまだ、何ができるか模索中。この一年、少しずつできることから実現していければいいと思っている」

その後は、ECOM代表の森良さんの進行で、質疑応答や意見交換。
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まず、一級建築士の森田千史先生が指名され、伝統木工法による古民家再生の意義について解説して下さいました。
伝統木構造は、建築基準法に基づく在来工法とは全く別のもの。古民家等を残すことは、風土に根差した技術や使い捨てではないライフスタイルを未来に残すことにつながる」等の説明がありました。

長田さんには、田舎暮らしの現状や今後の抱負等について質問がされました。
「西原地区の移住者は10人ほど。半分ほどは定年退職してこられた方で、若い人は就農給付金制度を活用して農業をしたり、びりゅう館(地元の観光・交流施設)でアルバイトをしたり。現金収入が少なくても結構豊かな生活は送れる。私も1人の時は地域の方から野菜等をたくさん頂いた」

「移住については、市は担当者も置くなど風は吹いてきている。地元の人たちは末永く住んでくれる人を求めていて、正直、変な人には来てもらいたくないと思っている。そのためにマッチング事業を行っている。肝っ玉のある人に来てもらい、一緒に仕掛けを考えていければと思う。答えは出ていないが」

「私は人に恵まれていると思う。やりたいことも、地域の方達に受け入れてもらってきた。色んな人たちがいて、水車のように地域が回っている。私もそのピースの一つとして、地域外の人を含む多くの方との交流の場、器のようなものを作っていきたい。移住を希望する方達の応援もしていきたい。さらには、地域の子どもの数を増やしていく仕掛けも作っていきたい」
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後半は、「古民家を活かすには」をテーマにワールドカフェ。

4人ずつ位のテーブルに分かれて、まずは自己紹介から。
空き家再生に取り組んでおられる方や関心のある方、自宅をコミュニティスペースとして開放されている方、全国各地の農山村地域を歩いておられる情報誌編集者の方など、多彩な方達が集まっておられます。
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途中でメンバーを替えて話し合いを続けたのち、最後に出された意見等を全員でシェア。
来たい人は誰でも(小さな子ども連れでも)来れるような、自炊もできるゲストハウスを設けてはどうか、現在の家族構成と古民家の構造がマッチするのか検討が必要では、何といっても地元の方と結婚されたことが素晴らしい、等の意見が出されました。

会の終わりに、森さんから今後の予定等について告知。
ECOM主催による都市農山漁村交流しごと塾「古民家再生シリーズ」は、以下の予定で開催されるとのこと(いずれも時間は19~21時)。

4月20日(水)長田容子さん(NPOさいはら)
「築150年の古民家をゲストハウスに雑穀の郷づくりを」[終了]
5月18日(水)深沼まりさん(北上尾エコ改修)
「戸建て民家をエコ改修して文化の発信拠点に」
6月15日(水)高島聖也さん(稲敷市地域おこし協力隊)
「築50年の農家をDIYで移住体験用住宅に」
7月20日(水)「自分たちのやりたいことをカタチにしよう」
(参加者によるプロジェクトづくりワークショップ)

また、4月30日(土)には「空き家再生プロジェクト in 上尾」の第1回ワークショップ&プチ体験会が開催されるそうです。
さらに、参加者の一人からは、次回のしごと塾さいはらは5月15日(日)にジャガイモの土寄せ&山菜採りを行う予定との紹介がありました。
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21時半頃に片づけて終了。
長田さんは、自ら車を運転して幼い2人の子どもとご主人の待つ山梨へ帰って行かれました。お疲れさまです。

いつも明るく、アイディア豊富で実行力もある長田さんですが、実際に地域のなかで暮らしていると、ともすれば出る杭は打たれるなど、近所づきあいも含め、様々なわずらわしいことがあるかもと察します(私の想像です)。

しかし、都会暮らしの楽しいことと疲れること、田舎暮らしの大変なことと豊かなことなど、両方を体験しておられる長田さんだからこそ、例えば、移住希望者と地元の方達の間をマッチングする役割は、まさに適任かと思われます。
かわいいお2人の子どもさんにも恵まれ(保育園の送り迎えなど子育ては大変のようですが)、優しい理解のある年上のご主人とも手を携えつつ、長田さんの夢が一つずつ実現していくことを目の当たりにしていきたいと思います。