◆ F.M.豆知識
食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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「食品に対する安心感、不安感をもたらすもの」
食品に対する消費者の不安感は大きなものがありますが、その要因を探るとともに対策を検討するのに有益な調査結果があります。
添付の図52は、2008年に(ちょっと古いですが)農林水産省が消費者モニターに対して行ったアンケート調査の結果で、食品について安心と感じているか、それとも不安と感じているかという消費者意識の状況について、食品供給の各段階に別に調査したものです。
これによると、食品に対する消費者の不安の程度は全体として大きいものの、段階別にみるとその様子はかなり異なることが分かります。
「家庭での取り扱い方」については9割以上の消費者が安心と感じています(「安心」が41%、「どちらかというと安心」が50.4%)。次いで安心感が大きいのが「小売店」の64%(同6%、58%)、「農畜産物の(国内)生産段階」の56%(同6%、50%)となっています。
これらに対して、「輸入農産物、輸入原材料」については9割以上という多くの消費者が不安を感じており(「不安」が59%、「どちらかといえば不安」が32%)、「外食店舗」についても7割近く(同23%、46%)が不安感を有しています。
これらの調査結果には、当時、輸入された冷凍餃子による健康被害事件や外食店舗に置ける食品偽装事件が頻発していたという事情が反映しているものとみられます。
しかし、消費者が食に対して有している不安感の要因には、これら個々の事件・事故だけではなく、「食と農の間の距離」の大きさが背景にあることが想像されるのです。
つまり、自らコントロールできる自宅での取り扱い方や、自ら原産地表示等をみて選択・購入できる小売店頭においては比較的安心感が高く、生産や調理の過程が見えにくい輸入食品や外食については不安感が大きくなっているのです。
なお、食中毒に起因する死者の多くが家庭で発生しているという事実からすると、食に関するリスクが最も大きいのは家庭といえます。つまり、ある程度科学的、客観的に評価できる「安全」と、主観に基づく「安心」は同じものではないことに注意する必要があります。
さて、今回紹介したアンケート調査結果からは、(安全確保のための衛生管理等を前提とした話ですが、)消費者の食に対する不安感を低減していくためには、「食と農の間の距離」を縮めていくことか有効な方策になると考えられるのです。
次回で考察を続けて行きます。
[出典、参考資料等]
農林水産省「平成19年度食料品消費モニター第3回定期調査結果」(2008.10)
http://www.maff.go.jp/j/heya/h_moniter/pdf/h1903.pdf
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
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