「秋晴れ」という言葉は、どこかに行ってしまったようです。
2016年9月28日(水)の終業後は、東京・西日暮里のフロマエカフェへ。
代々木公園で毎月開催されている東京朝市・アースデイマーケットから派生した「縁農カフェ」です。
19時15分前に到着すると、店の前には列ができています。
ちなみに向かいには銭湯。「フロマエ」の名前の由来の一つは、お風呂屋さんの前にあるからだそうです。
間もなく受付が始まり、お店の中へ。
この日、開催されたのは「寺田本家☆蔵出しNight!」。
人気の蔵元・寺田本家(千葉・神崎町)から24代目の寺田優さんを迎え、9月9日の重陽の節句に蔵出しされた日本酒を愉しむ会です。
フロマエの共同経営者・トモさんから紹介された優さん(1月のたまつきツアーでお世話になって以来です)から、挨拶と、本日のお酒の説明を頂きました。
原材料にこだわった日本酒造りをされていて、自社でも米作りをしているとのこと(10月8日には稲刈りを予定)。また、発酵文化を伝えていくことを大事にされているそうです(寺田本家については、後半で詳しく説明して下さいました)。
続いて、テーブルの各自のプレートに並べられた利き酒用のお酒の説明。夏を過ごしたお酒はまろやかになるそうです。
まずは蔵出しの「香取80」と「香取90」。
80、90とはそれぞれ精米歩合80%、90%のこと。ちなみに一般的な日本酒は60~70%、大吟醸は50%以下。日本酒は米を削れば削るほど美味しくなるとも言われますが、寺田本家のお酒は玄米に近いものを使っているため「個性があり、糠(ぬか)っぽい独特の味」とのこと。
話を伺いながら頂いてみました。なるほど、確かに。
さらには、代表銘柄の「五人娘」純米酒と、14年寝かせた五人娘の古酒「懐古酒」。懐古酒はウィスキーのような琥珀色です。
寺田本家の日本酒を頂くたび思うのですが、頭の中にある日本酒のイメージが崩れてしまいます。「端麗」「すっきり」とは真逆の味。日本酒ではない別のジャンルのお酒といえるのかも知れません。
自宅用に香取90を1本、求めさせて頂きました。
シェフの木村さんから料理の説明。この日のメニューは試飲するそれぞれのお酒に合うようにと、準備されたそうです。
大皿には色とりどりの野菜。アースデイマーケットに出展されている生産者の方たちのもの。
これをゴルゴンゾーラチーズの香りも高い2種類のディップ(ひよこ豆、ビーツ)を付けて頂きます。
プレートにはドライトマト、イチジクに味噌を絡めたものなど。パンは、寺田本家の発芽玄米酒をベースにした天然酵母を用いている手作りだそうです。
大きな熱々の鉄板で出して頂いたのは、アサリとキノコのオイル・ガーリック炒め。敷かれているジャガイモのガレットも美味。
ペンネは栗とサーモンのクリームで。ちなみに栗は、木村シェフの実家の庭で無農薬栽培されたものだそうです。
そしてデサートは、アーモンドとアニスシードたっぷりのビスコッティ。
途中、スライドを映写しながら、優さんから寺田本家の酒作りについて説明がありました。
「微生物の発酵の力を最大限活かした寺田本家のお酒は、毎年、少しずつ味が違う。原材料は自社農場を含め地元産を重視。ワインのテロワールのような日本酒ができないかと考えている」
「微生物から教わることも多い。自然界には多くの微生物が共生している。人間も微生物のかたまりなのだから、微生物のことを考えることで世界平和の実現にも貢献できるのではないか」
寺田本家の家訓(10か条)も紹介されました。
「人は天と人様に支えられて生かされる。感謝と報恩を」「人は自然の中の生きもの。自然に学び謙虚に生きよ」「人は愛と調和と光を発している」等々。
また、製造工程はできるだけ機械を使わず、人の手で行っているとこと。「生命が喜ぶ本物のお酒を造っていきたい」という思いからだそうです。
実際に寺田本家で歌われている「もと摺り唄」も披露して下さいました。
もと摺りとは、桶に入れた酒母を櫂(かい)で摺り潰していく作業。重労働で、現在は多くの酒蔵では行われていない伝統的な手法です。
「イヤエ~、めでためでたの若松様よ、枝も栄えてよ、葉も茂る」・・・。
最後に、全員で声をあわせて唄い、この日のイベントは終了。
心を込めて醸されたお酒と、生産者とシェフの心のこもった食材と料理に、心地よく酔うことのできた一夜でした。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
(プロバイダ側の都合で本年1月以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業中です。)
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