【ブログ】飯田泰之先生「人口減少下の地域創生」

ソメイヨシノもすっかり散り、2017年4月15日(日)は早くも初夏の気配。
 自宅近くに借りている市民農園の一画。
 せっかく更新でき、春作業を本格化させる時期なのですが、足腰の調子が今イチです。整理し忘れていたキャベツの花に熊ん蜂が来ていました。

週明けの4月17日は、一転して寒々とした雨に。
 終業後、東京・神田駿河台の明治大学に向かいました。

この日、19時からグローバルフロントで開催されたのは、明治大学リバティアカデミー主催「人口減少下の地域創生-ローカルからよみがえる日本経済の新時代」と題する公開講座。

生涯学習の拠点らしく、参加者は学生・大学院生からシニアの方まで100名ほどです(会場の写真は開演15分前のもの)。

この日の講師である飯田泰之先生は、1975年東京渋谷生まれ、埼玉・日高市育ち。
 明治大・政治経済学部准教授で政府の規制改革推進会議の委員も務めておられます。直接、お話を聴くのは今回が初めてです。
 
 颯爽と壇上に現れた飯田先生の話は、自己紹介から始まりました(文責・中田)。
「本来の専門はマクロ経済学・経済政策だが、2011年以降、三陸地方や関西でのまちおこし活動に縁ができ、地域経済の活性化についても色々と考えるところがある」
 昨年、『地域経済の失敗学』が出され、6月には2冊目が出版されるそうです。

「経済成長は『移動』から生まれる。
 2030年頃(ぎりぎり合理的に予想できる10年ちょっと後)の日本経済について考える場合、需要が供給を創造するという視点が重要。かつて供給能力とは工場の生産能力やインフラだったが、現在はモノ自体ではなくスタイルや楽しみ方を消費している。それを供給する(生み出す)のがアイディア」

「人口減のため成長できないという議論は悲観が過ぎる。2030年でも潜在成長率1%は維持できる。
 人手不足が成長戦略になり得る。産業革命が英国で始まったのは人手不足だったため。省力化技術であるIoT、AI、ロボティクスは日本の強み。これらが日本の主要輸出品となる可能性」

「経済成長の主役は『生産性』だが、それは発明や発見ではない。
 現在、7割はサービス産業に従事。製造業もサービス化。生産性とは人の発揮する能力という基本に立ち返って考えることが重要」

「『動く』成長とは、より生産性を発揮できるポジションに人材が移動することによる生産性の向上(古典的成長)。
 東京近郊から地方都市に人材が移動するところに成長の芽がある。通勤時間を勘案すると東京の生産性は決して高くはない。人材が動きやすくするためには退職金優遇制度の見直し、年金のポータビリティ化等が必要。

「『出会う』成長とは新内生的成長。人が動くと人と人が出会い、多様性のある出会いがアイディアを呼ぶ。寛容さが多様性を引き寄せる」

「人同士の『弱いつながり』の中から生み出されるアイディアがイノベーションの第一段階になる。
 しかし第二段階(現実化)のためには『強いつながり』による効率的な実行が必要。これは日本の企業(男性社会)が得意な分野。アイディアや親会社から与えられていたが、これからはアイディアを生み出すことが重要に。
 これが『親しむ』成長(内生的成長)。トランザクティブ・メモリ(誰が何を知っているか)が重要で、企業内で『仕事をこなす』ベテランの力は侮れない」

「地域経済の再生が日本経済の生命線。
 中核市(人口50万人+α)の死守が全国的課題。当局一極集中にはリスク。多様な人材(ご当地アイドル等)をプールできる中核市が『出会いの核』となる。
 中小都市は人口減を活かす方法を考える必要。固定費(行政費)を極小化しブランド化等により一人当たり所得の増加を目指す。そのためには重点的に掘り下げるべき商圏を確定させる。ロングテール向けの強みがある場合はインターネットによる世界への発信が効果的』

「アイディアは数で決まり、アイディアの数は人口で決まる。人口の少ない中小都市は大都市との『弱いつながり』を維持してアイディアを導入しつつ、小さくとも魅力のあるコミュニティ(センシュアスな街)を作ってUターン者等を受け入れることが必要」

「中心市街地の活性化には2つの大きなコンセプトがある。
 コルビジェ(輝く都市)とジェイコブズの4条件。前者は効率的で再開発政策等に馴染みやすいが、縦の比較が可能で特定の大都市にしか適用できない。
 一方、後者は横のバラエティのために比較困難(差別化が容易)。プレイヤーの能力に依存した街づくりを重視」

21時過ぎに終了。
 身振り手振りを交えた話は分かりやすく、詳しいレジュメも配って下さり、期待していた以上の内容でした。

終了後、多くの方達の行列の最後に名刺交換させて頂き、先日、電子マガジン α-Synodosに寄稿させて頂いたことにお礼を申し上げました。

飯田先生は、ニュースサイトの運営等を行うシノドスのマネージング・ディレクターでもあり、大学だけではなく、多彩な場で幅広い情報発信等をされています。
 そのような飯田先生のスタイルも含めて、多くのヒントや気付きを頂くことができました。