-広井良典『コミュニティを問いなおす』(2009/8、ちくま新書)-
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065018/
著者は1961年岡山市生まれ。現在は京都大学こころの未来センター教授として、環境や社会保障に関する政策研究からケア等をめぐる哲学的考察まで、幅広く発信されています。
著者によると、これからの日本社会の課題を考えて行く上で中心に位置するテーマが「コミュニティ」とのこと。
経済成長期を支えていたのは“都市の中のムラ社会”とも言うべき閉鎖性の強いコミュニティ(カイシャ、核家族)でしたが、経済が成熟し定常化社会を迎える中で、地域に根ざした新たなコミュニティの創造が必要としています。
そこで著者が注目するのが、神社やお寺です。
「豆知識」欄でも紹介したようなデータを示しつつ、「昔の日本では地域や自治体の中心に神社やお寺があった」「これほどの宗教的空間が全国にくまなく分布している国は珍しい」とします。
また、これらは宗教施設に限られるものではなく、寺子屋のような教育機能、位置が開かれる経済機能を併せ持ち、「『宗教、教育、経済』という、人間の社会における主要な機能を渾然一体となった形で担っていた」としています。さらに「鎮守の森」は、自然とともにあるというスピリチュアルな要素をも有しているともしています。
本書の刊行後、著者は「鎮守の森コミュニティ研究所」を設立し、神社等を地域の自有用な資源として再評価し、自然エネルギー開発や福祉・学習活動の場として活用する方策等について研究を進めています。