【ブログ】碧野圭さん『駒子さんは出世なんかしたくなかった』トーク&サイン会

2018年の春は、ソメイヨシノに続いて八重桜もあっという間に散ってしまいました。

それでも空を押し上げるハナミズキ、モッコウバラ等が目を楽しませてくれます。
 冬には氷柱を下げていた東京・日比谷公園の鶴は、今は新緑を噴き上げているかのようです。

4月20日(金)の終業後は、吉祥寺のパルコブックセンターへ。
 この日19時から、碧野圭さんの新刊『駒子さんは出世なんかしたくなかった』発売記念のトーク&サイン会が開催されました。

碧野圭さんはテレビドラマ化もされたベストセラー『書店ガール』シリーズの作者で、食べものや農業にも造詣の深い方。江戸東京野菜関係の資格も取得されています。

トークのお相手は矢部潤子さん。
 大手チェーンで複数の店長をされた後、現在はハイブリッド型総合書店「honto」を運営する(株)トゥ・ディファクトのディレクターをされている方。

お2人の紹介に続き、碧野さんにマイクが渡されました(文責・中田)。

碧野さん
 「ここは私のデビュー作『辞めない理由』を一番売ってくれた書店で、当時の店長が矢部さんだった。矢部さんにお会いして書店員という仕事に興味を持ち、1週間ほど研修もさせてもらった。
 それが次作『ブックトア・ウォーズ』に活かされた」

この本が後に『書店ガール』と改題されたのですが、その舞台は吉祥寺の書店という設定です(フロア構成等は全く別の場所の書店をモデルにしたとのこと)。

ところでこの日のテーマは「女性管理職は幸せか」。
 作家デビュー前は出版社に勤めておられた碧野さんは、
 「副編集長になったのは一番年上だったから。子どもがいたので、地位が上がって仕事が選べるようになったことは有難かった。それでも自宅では電話の前で寝てFAXを待ち、朝一番で印刷会社に届けてから帰宅して朝食を作といった生活が5~6年は続いた」

矢部さんが渋谷店の最初の女性店長になられたのが1998年とのこと。
 「言われた時は順番かなとも思ったが、どうしようと思い、帰宅してベッドに入っても眠れず、天井ばかり見つめていた。その時の天井の模様は今でもよく覚えている。毎日、片道2時間弱を通勤して開店から閉店まで勤務。
 今思えば、まだ本が売れている時代だった」

2015年のリブロ池袋の閉店の報に接した時、碧野さんは「お洒落な書店だと思っていたのにショッキングだった」とのこと。当時、マネージャーをされていた矢部さんは
 「閉店することはだいぶ前から決まっていたが、最終日はお祭り騒ぎのようになり、予定していなかった挨拶もした。
 後日、後継の書店を訪ねた時にリブロの常連客だったという男性に声を掛けてもらった時は、泣きそうになった」

碧野さん
 「『書店ガール』シリーズ1刊と最新刊(6)は、どちらも書店が閉店する話。1巻では店長達が頑張って業績回復を果たすものの会社の方針で閉店に。6巻では抗うこともしない。本が売れない時代になった」

書店には厳しい時代のようで、神戸や東京・代々木上原等では惜しまれながら閉店した有名書店もあるとのこと。

碧野さんは「書店は、オーナーや店員だけのものではなく、お客さんのものでもある。閉店のニュースを聞くたび、宙ぶらりんになったような気持ちになる」と語られました。

管理職の心得等について会場との質疑応答もあり、終了後はサイン会に。

私も行列に並びサインを頂きました。
 思えば私自身も、新刊の文芸書(文庫以外)を買ったのは久しぶりのことです(2日位で読んでしまいました。久々にページをめくるのが惜しいと感じた本です)。

スタッフ(書店員)の方たちの対応も心地よく、本、あるいは本屋さんの素晴らしさを改めて実感することができたイベントでした。